「あぁ、やっぱおまえ本当に才能ねぇなぁ。」
ジュダルは自分の魔法の杖を回しながら思わずため息をつく。
マギと同じで大量の魔力を周囲から取り入れることは出来るが、金属器に魔力を供給するにも歌を媒介としない限り発動できない。魔法の杖として翡翠とプラチナで出来た細身で彼女の背丈ぐらいの杖を与えたが、それに魔力を収束させること自体が苦手らしい。
金属器使いとしても、魔導士としても才能はないと言って間違いなかった。
杖は彼女が問題なく握れるくらい細く軽い。上部にプラチナの雪のような繊細な文様の中央に翡翠が埋め込まれている。それを振り回したところで、彼女が出来るのは親指の先ほどの小さな風や水を出現させる程度だった。
「こんだけ魔力を持ってて、できないもんかぁ?」
防御魔法だけ言うなら、かなりの硬度だ。勝手に防御するため身を守るには問題ない。魔力を収束させることは一応出来るため、魔力の打ち合いは一応出来るが、これも飛ばし方がきわめてへたくそで、自分の思ったところに飛ばない。
翡翠の金属器を使って他人の体を治癒したり、魔力を回復させることは可能だが、本当にそれ以外は何も出来ないといって間違いなかった。足が悪いので浮遊魔法の方を覚えれば便利だろうと教えておいたが、こちらも数センチうけるだけ、しかも持続力は皆無だ。
「・・・負傷兵の助けるのとかに回してもらえれば、役に立てるかな。」
「なんで俺らがただの人間助けんのにそんなことしなくちゃなんねぇの?」
ばからしいと、ジュダルは一蹴した。
行軍への参加が決まってから、ジュダルはに身を守るすべを与えるために、に魔法を教えるようになった。とはいえ人に物を教えたことのないジュダルが物を教えるのは結構大変で、しかも生徒はやる気のない、飽き性のだ。
ここ数日で何度彼女の頭を叩き、髪の毛を引っ張ったのかわからない。彼女は全くといって良いほど面白くないと思うと人の話を聞かないのだ。そして聞いていたとしても出来るかどうかは話が別だった。
人に物を教えて初めて学習したのは“諦め”と“期待しないこと”だ。どれだけ教えても出来ない時は出来ない。生徒の気持ち次第でこちらの努力に比例しないのだ。
「退屈すぎんぜったく。」
ジュダルはごろりと寝台の上に横たわる。はまだじっと杖を抱えてにらめっこをしていたが、正直に言って何の意味もないだろう。
「来い、」
ジュダルはに命じる。
手を伸ばせば、はおずおずとだが手を取って、こちらへと膝立ちでよってきた。足の悪い彼女にとっては膝立ちまでが限界らしい。薄い寝間着は肌の色すらも透けて見える。太ももの裏にある金属器を撫でると、はいやがるように身をよじった。
あまり金属器を触られるのが好きではないらしい。
元々享楽的なジュダルはセックスも好きだが、の方はそうでもないらしい。初めての時も随分いやがったし、今もあまり積極的ではない。おそらく、年齢としてはジュダルとはそう変わらないか、の方がいくつか年下だろう。
まだ膨らみも少ないが柔らかい体をあまり抱きしめたことはない。口づけたこともない。あくまで彼女は性欲を満たすための対象であり、愛情を示す必要性はないからだ。
絨毯の上に引きずり倒す。それには抵抗しなかった。抵抗すればもっと酷い目に遭うと経験上理解しているからだ。あまり逃げられるのは面倒だから、酷く嫌がった時は手酷くやるようにしている。
薄い寝間着の帯を解けば、簡単にその滑らかな肌に触れることが出来る。絨毯の上に押し倒せば、彼女の長い髪が絨毯に広がった。翡翠の瞳はじっと丸くジュダルを映している。すましたその瞳が嫌で、ジュダルは彼女の首に歯を立てた。
「いっ!」
びくんと体がはねて、桃色の唇から悲鳴が上がる。ジュダルは血がにじんでいる首に舌を這わせた。
「おまえ、本当に退屈しのぎにぴったりだよな。」
馬鹿なせいでジュダルが思いもしないようなことをやってくれるし、こうして快楽を追うことだって出来る。
「咥えろ、」
ぐいっとの頭を引き寄せて言う。は許しを請うようにこちらを見上げてきたが、戸惑う彼女をあざ笑ってやった。
は珍しく眉間に皺を寄せ、翡翠の瞳を潤ませてから口をへの字にしておそるおそる手を伸ばしてくる。最初させた時はさんざん嫌がり、軽く噛まれるという嫌な思いもしたが、その時手酷くやっておいたおかげで、今は拒まない。
躊躇いがちながらおずおずと舌を這わせる。あまり積極的ではないが、悪くはない。ただ、それはジュダルの望む程の快楽は与えなかった。
「咥えろって言ったろ。」
半ば無理矢理の口を開かせ、自分のそれを押し入れる。はむせたのか、一度口を離したが、何とかジュダルのそれをくわえ込む。
苦しそうに寄せられる眉や、潤む翡翠の瞳はいつもジュダルに高揚感をもたらす。
他人を虐げて喜びたくなるその感情はよくわかる。この穢れのない、何も知らない存在を汚す喜びは、白いキャンバスを黒く塗るようで楽しくてたまらない。多少彼女が嫌がったところで、その歪んだ心地よさは、そがれることがないのだ。
「ほんっとに、」
の長い髪を撫でながら、その苦しそうな表情を眺めれば、自然と唇の端が上がる。
「体こっちに向けろ。」
だんだん座っているのも面倒になってきて、寝転がる。に命じると、彼女の顔色が変わって、怯えるように目尻を下げて顔を上げた。足が悪いと言ってもそれは膝から下だけで、膝立ちは出来る。仰向けに横たわるジュダルの顔をまたぐくらいのことは出来るはずだ。
「早くしろよ。」
問答無用でせかせば、諦めたのか、それとも嫌がった時に酷くされることを恐れてか、はおずおずと従った。
ジュダルは目の前にあるの秘部をさらりと撫でて、太ももに手を這わせる。間近で見れば太ももの内側に埋め込まれている翡翠とそれを囲む白金の欠片は彼女の白い肌に歪に埋まっていた。このことを知っているのは、の両親と、ジュダルのみだという。
「やめんじゃねぇぞ。」
ジュダルは念のために釘を刺して、彼女の太ももに軽く吸い付く。ぴくりとの太ももが反応して、彼女は短い悲鳴を上げたが、ジュダルのそれを咥えているため悲鳴はくぐもっていた。
秘部を撫でて、軽く上にある突起をつつけば、うつぶせになっている体は反応を示す。
「あはは、おまえ本当にどうしようもねぇなぁ。濡れてんぜ。」
秘部を割り開けば、そこにはあふれんばかりの蜜があり、濡れている。慣れていない彼女は濡れにくいが、それでも最近は慣れてきたのか、前より反応も良くなり、濡れるようになってきた。そうすれば、ジュダルの前戯という手間も省ける。
「ぁあっ、えぅ、」
触れて指を滑り込ませれば、耐えきれなくなってきたのか、情けないうわずった声で啼く。歌がうまいだけあって、その声は高いが澄んでいて、男ならぞくりとするものがある。
「噛むんじゃねぇぞ。」
一度軽く噛まれた前科があるため、に注意する。彼女はジュダルの方を泣きそうな潤んだ瞳で懇願するように振り返った。
あぁ、だからやめられない。
それがどんな名前をつけるべき感情かジュダルは何もわからないまま、の細い腕を引いて、自分の快楽をむさぼることにした。
行軍と白銀