とギルベルトがバイルシュミットの屋敷に帰れたのはもう夜中も過ぎた頃だった。
は薄いナイトドレスを着せられていた。風呂にも入れられたらしく、長い亜麻色の髪もとか
れていて、僅かに濡れている。はそれが邪魔なのか左側によせて肩をまたいで前に流して
いた。
ろうそくの明かりに照らされた顔はこちらから見ても分かるほど赤くて、緊張しているのが見て取
れた。薄いナイトドレスに透けて見える体は14歳という年齢相応に華奢だが、これから成長する余
地は十分にあるだろう。
ベッドの端に腰を下ろしているはギルベルトが部屋に入ってくると一瞬顔を上げたが、不
安そうにまた俯いた。ベッドの方に近づくと、はあからさまに震えて見せた。
「覚悟しとけって言ったのに、」
ギルベルトは小さく笑って、の隣に座る。
「ひとまず、お疲れ。」
がちがちに緊張していたのは知っているので、軽く背中を叩けば、は少し安堵の表情を見
せた。
「どうだった?」
ギルベルトはもう行為を想像して固まっているに、軽い調子で尋ね、座った体勢のままの状
態でそのまま天井を見上げるように仰向けに倒れる。柔らかいベッドの感触が背中を受け止める。
「え、あ、はい。なんだか、夢みたいでした。」
は現実味の無いような答えをした。
「夢?」
「だって、あんな、歓迎、されるなんて、」
信じられない。
今まで疎まれていたのにとの表情がそう言っていた。彼女はずっと疎まれ、不義の子とし
て後ろ指さされながら生きてきて、望まれることに戸惑いもあるし、慣れてもいないのだ。
「おめでとう、って、たくさん、言ってもらって、本当に、夢みたい、」
は泣きそうな表情で笑う。それは幸せそうな笑みで、幸せを恐れるような、まだ信じられ
ないような怯えを含んだ笑みでもあった。
「夢じゃねぇよ。」
ギルベルトは軽く身を起こして、の手を取る。そしてそっとの額の髪をかき分けて
口付ける。そのままゆっくりと鼻先へ、頬へと、口付ける場所をおろして、唇を舌で軽くなぞれば
は胸元でぎゅっとナイトドレスを自分の手で握りしめた。
「ぁ、あの、」
「ん?」
「脱いだ、ほうが、良いですか?」
心もとなそうに、涙目では見上げてきた。どうすれば良いのかわからないらしい。女官達
に一応何をするのか教えられたとはいえきっと核心的なところまで彼女たちとて心得た大人で口
が裂けても言わなかっただろう。ただ、裸になるとは教えたようだが。
「あぁ、そうだな…」
別に脱がしてやっても良いのだが、面白そうなのでに任せることにする。は本当に
恥ずかしそうに俯いて、震える手で自分のドレスの胸元の紐をといていく。だが、震えているせい
かうまくとけない。
「俺がやってやる。」
ギルベルトの方が待ちきれず、紐に手を掛けた。
「女の服ってほんとややこしいよな。」
「…そ、う、ですか?」
「あぁ。ちょっとこっち来い。こんな端っこでしたら、ベッドから落ちる。」
ギルベルトとはベッドの端に床に足をおろして座っていたわけだが、ギルベルトは
をベッドの真ん中に行くように促す。ベッドの上でお互い顔を合わせるような形になって、
の表情がろうそくの薄暗い灯でもはっきりと見えた。
「おまえ、本当に華奢だよな。」
ギルベルトはドレスの前をといてそのまま下に服をおろし、白いの肩をむき出しにする
胸が出てくる前に、は恥ずかしさか、おろすギルベルトの手を止めて服ごと胸元を手で覆
った。
白い肩を撫でればはくすぐったそうに目を細めた。
「そ、う、ですか?…」
「なんだ、不安そうだな。」
「だって、マリアンヌさん、とか、凄いから…」
王妃の女官のマリアンヌのことか。ギルベルトはの言葉に納得した。彼女は豊満な肉体を
お持ちで、確かに言われれば“凄い”。男なら一度は抱いてみたいと思う妖艶さがある。だが、それ
はもう30前の経験豊富な女が持つ艶やかさで、が持つには10年以上足りない。
「これからでかくなるだろ。」
まだ成長しきっていないのだから、だって今は華奢でも豊満になる余地がないわけではな
い。それに彼女は小食なのだ。もう少し食べても良いと思う。
ギルベルトは彼女の反応が落ち着くように肩を軽く撫でながら、そっと唇に自分のそれを合わせ
た。
「口、開け、」
そう言えば、は大人しく口を開いた。ギルベルトはそのまま深く口づけ、舌をの口
の中に滑り込ませる。
「ん、ぅ、」
くちゅ、と水音をさせて舌を絡める。はぎゅっと目をつぶって逃げようとするから、後頭
部に手をやって頭を押えた。僅かな優しさで、髪をくしゃりと撫でてやる。は強くギルベル
トのシャツを掴んだ。
「ほら、舌出せ、」
どうしても逃げたがるに鋭く言って、もう一度口を塞ぐ。唾液を絡め、送り込めば、細い
首がこくりとなってそれを呑み込んだ。視界の端にその様子を捉えて、ギルベルトはぞくりとした
高揚感を味わった。
「ぁ、はっ、」
は荒い息を吐いて、目に涙を溜める。指先でそれを拭ってから、ギルベルトは彼女が片手
で押えていた胸元のドレスをはぎ取った。
「きゃっ、」
キスだけでぼんやりしていたは我に返って悲鳴を上げる。手のひらで胸を押し上げる。
年齢には小さくも大きくもないだろう。突起を指の腹で擦ればは嫌がるように身を捩った。
ギルベルトはもう一度キスをしながら、の背中に手を回してゆっくりと彼女をベッドの上
に押し倒した。キスに気をとられているはベッドの上に頼りなく横たわった。
「ん、ふぅ、」
口を離せば、唾液の糸が2人の間をつなぎ、切れる。
「ぁ、だ、だめ、」
キスでよく動けないうちに、ギルベルトは彼女の足の間に自分の体を割り入れた。は足を
閉じようとするが、それを手で押える。
「やっ、これ、いや、」
どうせ裸で向かい合うくらいしか分からないは、ギルベルトの体が自分の足の間にあり、
足を開かねばならないのが心許ないらしい。本質的には何も分かっていないのにと、ギルベルト
は笑う。女とは不思議な生き物だ。ギルベルトの足の間に座ることは別にするのに、こういうとき
に男が自分の足の間にいると気になるらしい。
「大人しくしろよ、」
軽くの股の間を探るように手をやればはあからさまに狼狽えた。
「や、何をっ、」
「こういうモンだって、」
「いや、そ、そんな、」
ギルベルトはの下着の上から彼女の中心をなぞる。軽く感じやすい突起のあるところを探
れば、布越しでも感じるのだろう、体を跳ね上げた。
「い、いやっ、やめて、そこ、なんか、」
戸惑いと怖さからか、は涙目でギルベルトの手をどけようとするが、力は弱い。ギルベル
トは小さく呆れながらも笑って、一度の体を引き寄せて抱き込む。
「良いか、ちょっと我慢しろよ。」
安心させるように笑って、の頬に口付ける。は涙ながらに鼻をすすって、それから
頷いた。
日が沈み打ち上げられる夜を慈しむように