恥ずかしいとか、そんなものではなかった。天井を見上げて熱い、荒い息を吐き出す。苦しい、
でも声が漏れてしまって、涙が目尻から伝い落ちた。






「ぁ、あ、ひぃや、や、」






 ぎゅっとシーツを握りしめて、何とか感覚に耐える。足を開いて、誰にも見せたことの無い場所
を他人に晒していることすら信じられないのに、真ん中から上がってくる熱が体を支配しているせ
いか、羞恥が頭の片隅に追いやられている。意志と反して足が勝手にびくびくと反応する。足の
間の上の方を押されると、体が跳ね上がって訳の分からない感覚が下腹を支配した。





「もういけるか。」






 ギルベルトは余裕そうないつもと変わらぬ様子での股の間から顔を上げ、ぺろりと自分の
唇を舌でなぞる。その仕草が扇情的で、は腰に熱が走るのを感じた。






「力、抜けよ―。」






 かけ声と共に何かが自分の体のどこかに入ってくるのを感じた。それがギルベルトの指だと分
かるまでに、時間がかかった。ぬるりとした感触と共に滑り込んできた指はこしょばすように浅く
入り口を探るがそれだけでどうにかなってしまいそうな感覚を煽られる。ぐっとその指が奥まで入
ってきたとき、は頭が真っ白になるのを感じた。熱が全てを押し出す。何かが溢れて、止ま
らなくなる。息が止まる。





「あ、ひっ、やだ、ら、ぁあ、ああ!」






 体が痙攣して、がくがくと足が揺れる。頭を振って、目をきつくつぶる。勝手に涙がぼろぼろと溢
れて、止まらなかった。震えがおさまると、酷い疲れに見舞われた。脱力感にシーツを握っていた
手にすら力が入らない。





「ぁ、」






 掠れた声を漏らして細く目を開けば、ギルベルトが笑っているのが見えた。





「イったか?」

「ぇ、あ、」






 先ほどから何度かこういう感覚はあったけれど、さっきのは大きすぎた。ギルベルトを見上げれ
ば、彼も服を脱いでいて、逞しい体躯が見える。軍人と言うだけあって華奢そうに見えても非常に
しっかりした体をしていて、腹筋だって割れていて、自分とは全然違う。他の人を見たことがある
わけではないが、自分とあまりに違いすぎて、驚いた。


 ぐったりとしたの足を、ギルベルトが先ほどより大きく開く。やっと意識がはっきりしてき
ていたは、恥ずかしさのあまり顔をまっ赤にして制止した。





「や、ぎ、ぎる、」





 やめてと言うが、それが許されないことであることも、何となく分かっていた。






「え、」






 男性と女性が違うことは何となく分かっていたが、はギルベルトの雄を見て、目を丸くす
る。まさに何あれ、だ。親しい男性があまりいなかったこともあってはそう言う事に疎い。
硬直していると、ギルベルトが困ったように笑った。自分がそれを凝視していたのが恥ずかしい
ことだと知り、顔を背ける。


 限界まで足を開かれ、ギルベルトの雄が、先ほど指がまさぐっていた場所の入り口を探る。そし
てぐっと力が入れられた。






「ぁ、いっ、」






 かふっと喉の奥で声が弾けて、空気が漏れる。痛みにどうして良いかわからず、シーツをこれ以
上ないほど握りしめた。





「はっ、駄目か、」






 ギルベルトも荒い息を吐いて、の体に入り込むのを諦め、軽く入り口を擦る。






「仕方ねぇな。一度出すか、」

「ん、ぅ、」






 ギルベルトの言っている意味はさっぱり分からなかったが、入り口を探られて得られるその感覚
は先ほど指でまさぐられたのと同じように、に初めての快楽をもたらす。痛くもない。すりつ
けられる速度が速まれば、は熱の波が押し寄せるのを感じて身を捩った。軽くイけば、びく
びくと体が反応する。







「ぐっ、う、」





 ギルベルトも眉を寄せて、熱をの腹にはき出した。はぼんやりした目でそれを眺め
て、自分の腹にある液体を手でこすった。粘りけと言うほど粘るわけでもなく、かといってとろみ
と言うにも複雑だ。先ほどの余韻では自分のお腹にあった手で、じんじんするそこに爪を立
てる。






「手、掴まれよ。」






 息を整えたギルベルトがの右手に自分のそれを重ねて、もう一度の中心に自分を据
えた。






「今度は痛むぜ。我慢しろよ。」





 を思いやるように髪を撫でて、相変わらず荒い息を吐いているの呼吸が整うのを待
つ。は大きく息を吸って、吐いてから、ギルベルトの手を握りかえした。目をきつく閉じて痛
みに耐えようと思ったが、すぐに痛みに目を見開いた。






「ぃっ、ひぐ、う、ぁああ!ぁ、あ!」





 歯を食いしばることすら出来ず、悲鳴が口から溢れる。押し進められる度に痛みが増して、こじ
開けられる体がどうにかなりそうだった。無意識のうちにギルベルトの手に爪を立てる。






「はい、った、な。」






 ギルベルトが大きく息を吐いて、を見下ろす。は痛みと圧迫感にどうにかなってし
まいそうだった。気絶してしまいたいけれど、痛みがそれを許してくれない。涙が視界を塞いで痛く
て、また涙が次から次へと零れた。






「ごめん、痛いな。」






 ギルベルトはと額をあわせて、間近でそう言った。は彼の顔を見上げる。眉間に皺
を寄せていて、彼もまた苦しそうだ。それでも、いつも通り緋色の瞳は生き生きしていた。






「ぁ、いた、い?」

「否、ちょっと苦しいけど、気持ちいい。」





 うまく声を発することが出来なかったが、ギルベルトは理解してくれたようで答えが返ってくる。
シーツを掴んでいた左手をゆっくり離して、震える手を伸ばして彼の汗で張り付いた銀色の前髪を
払ってやる。すると緋色の瞳は柔らかく細められた。






「無茶、すんなよ。痛いんだろ、」






 労るようにの髪が撫でられる。

 確かに痛みは酷くて恐ろしい程だが、それすらもどんどん熱で頭がやられているせいか薄れてき
ている。日頃のなら、足を広げられてこんな恰好を晒している時点でもういてもたってもいら
れなくなるだろうが、熱が頭を支配している今は思考が非常に鈍い。






「夢じゃ、ねぇだろ?」







 ギルベルトはの頬に口付ける。は状況も忘れて小さく笑んでしまった。

 肉体的な痛みを感じるこの行為は夢ではない。だから今までのことだって夢ではない。そのため
に、この痛みがあるようだ。


 ギルベルトはの首や、肩に吸い付いて痕をつけていく。

 彼が動かないおかげか、徐々に痛みが僅かではあるが薄れていく。このままどうすればいいのだ
ろうか。ずっとこのままなのかと困っていると、ギルベルトがを見た。






「大丈夫そうか?」

「あ、え、は、はい、」

「じゃあ、わりぃが後一回頑張ってくれ。二度目は結構長いんだ。」






 何の話だろうか。訳が分からなかったが頷くと、彼は本当に嬉しそうに笑った。


 ぐっと伺うように彼の雄がの奥を押す。それに伴う痛みには奥歯をかみしめて耐え
たが、次はそんなに甘い物ではなかった。







「ぁああ、いっ、」






 雄が遠慮もなく一気に引きずり出される。






「早く、終わら、す、から。」







 耳元で掠れた声が聞こえ、ギルベルトが上体を起こして、の細い腰をぐっとその大きな手
で掴んだ。水音と言うにはあまりに粘着質な音が部屋に響く。痛みのあまりの声はもう出ず
、吐息だけがただ、部屋を支配する。

 体の奥が熱くなると同時に、は自分の意識すらも手放した。









 
抱きしめた 温度