武器を持った団員がを称賛したり、神威にたかる中、神威はさっさとの手を引っ張って自分の部屋に戻った。
「血って汚いし、生臭いし、あーやだ。」
は天人の血にまみれた着物が気持ち悪いらしく、部屋に戻るなりすぐに神威の手を離し、シャワー室の扉を開いた。着物も着たまま蛇口をひねったのは、べたつく血が着物の下まで染みこんでしまっていたからだろう。
いつもは天然パーマでひこひこはねている銀色の髪はぐっしょりと濡れてまっすぐになり、水が着物についていた緋色をゆっくりと落としていく。
僅かに乱れた襟元から覗く白い肌が水に濡れて滑らかに、鈍く光る。
「ドア、閉めるよ。」
はすっとシャワー室の扉に手を伸ばして、扉の前にいる神威に言う。
本格的にシャワーを浴びるには着物を脱がなければならない。神威とはそういう関係ではないし、それを神威は一度も見せたことがないから、彼女としては見られるのが嫌なのだろう。むしろなかなか去らない神威に、少し困った顔をしていた。
桃色の柔らかそうな唇に滴が伝って、落ちていく。
「…」
神威は僅かに色づいている、濡れた白い頬に手を伸ばし、その落ちてくる水滴を拭う。
「…神威?」
は不思議そうにその漆黒の瞳で神威を見上げていた。神威は彼女の濡れた唇に自分のそれをそっとあわせる。唇にあたる柔らかい感触を改めて認識した途端、離れたくなくて、強く押しつけ、彼女の腰に手を回す。
地球で彼女に助けられ、宇宙まで連れてきたが、神威は一度たりともにこういう行為を強いたことがなかった。
のことは、誰よりも気に入っている。
強い女は強い子どもを産む可能性があるから好きだ。神威は今までに以上に強くて賢い女を見たことがないし、を側に置くとたまに苛々するけれど、やはり心地よい。その漆黒の瞳があの刀のように輝くのを見るのも好きだ。料理もうまい。
そして何よりも彼女が自分から離れていくと思うと苛々する。
本当のことを言うと、地球にいるときはもちろん、宇宙に来てからも、に女としてむらむらすることは、何度もあった。触れてしまったら戻れない気がして、嫌われるかも知れないとか、いなくなるかもと思って、触れられなかった。
でも、それこそがそもそも、自分らしくない。
「もういいや、むらむらする。」
「はぁ!?」
あまりの率直すぎる神威の言い方に、は呆れて口をぽかんと開ける。
「嫌だなぁ、俺だって男だよ?」
「いや、他に言い方ってあるでしょ。第一女なんていくらでもいるでしょうが。」
「じゃないと駄目なんだよ。」
「なんで、」
「わかんない。」
神威はあっさりと言って、の濡れた体を壁に押しつける。シャワーから出ているのは完全に水で、神威にもそれが降りかかり、服についていた血をゆっくりと荒い流していく。少し冷たいが、すぐに気にならなくなるだろう。
「でも事実としてそうなんだから、それで良いだろ。」
神威には、恋愛感情なんてわからない。知りたくもない。
でも今、彼女を抱きたい。彼女が離れていくと考えると苛々する。無性に抱きたくて、むらむらするのも彼女だけだ。自分のものにしたいのも、他人がの噂をしていたり、が他人から相談を受けていると苛々するのも、だけだ。それだけ分かれば神威にとっては十分だ。
その行動を理性で阻むなんて、自分らしくない。
「俺だって健康的な青少年だからネ、何も思わないって思ってたの?」
「そ、そういうのは、女のわたしにはわからないよ。」
「そう?じゃあわかってよ。」
神威はの水に濡れて重たくなった着物を脱がしていく。だが水で張り付いていて重たい上に着物の紐の解き方など分からないから、破るようにはいでいく。初めて見る彼女の肌は白くて、触れば肌は酷く温かい。
「やっ、神威っ、」
は初めて狼狽えたような表情を見せ、神威の肩を片手で掴んでどけようとする。だが神威を阻んだり、拒否すると言うよりは、戸惑っているようで、水に濡れた手の力は弱くて、神威はその手に自分のそれを絡めた。
女を抱いたことはある。強姦のように押さえ込んでぼろぼろにしたことはあるが、手を繋ぎたいと思ったのは初めてだし、狼狽えたその表情が綺麗だと思ったのは初めてだ。
はだけた白い肌に、強く吸い付いて痕を残す。
いつもはすぐにならして突っ込んで、自分の精を吐き出し、性欲を満たすだけの行為だったが、今まで聞いたことも無いような戸惑ったの高い声が心地よくて、もっと泣かせてみたいと思った。水に濡れた銀色の髪をかき上げ、表情が見たくて額をコツンとつきあわせる。
漆黒の瞳をのぞき込むと、戸惑うように揺れた。
「わ、わたし、子持ちのおばさんだよ。」
「何言ってるの。俺と年齢なんてそんなに変わらないだろ。それにそんなことはとっくに知ってる。」
に出会った時から子供がいることも、過去に結婚していたことも全部承知だ。承知で彼女を気に入っているし、宇宙に連れてきた。
そんな些細な事が障壁になるくらいなら、彼女を宇宙に連れてきたりしなかったし、本能が欲しいと言っているのを、もう止めることなんて出来ない。
「ひとまずさ、が俺に勝手に相談受けてるのも、攫われるのも、嫌だよ。おまえは俺のものなんだから、」
「…心狭くね?」
「の方が酷い言い方だよね。」
「そう?」
「そ、は俺のだよ。」
神威は彼女の瞳に自分が映っているのが心地良くて、彼女の頬に軽く口づける。はいたたまれないのか、唇をぐっと引き結んでみせたが、頬が赤く染まっていた。
「何それ。」
視線をそらし、泣きそうに目じりを下げて、素っ気なく言って見せたが、神威の手をぎゅっと握りかえしてきた。どうしてそんな顔をするのか、分からない。でも、そういう狼狽えた顔の彼女も嫌いではなかった。
襦袢の下から出てきた胸は予想していたとおり、それほど大きくはなかったが、触れば滑らかで柔らかい。神威に負けないくらいに白い肌にはところどころ傷跡が残っていたが、そんなものは全く気にならない。
「やばっ、」
酷く興奮する。舌を滑り込ませて歯列をなぞり、体に触れていると、足が震えていたのか、の膝が崩れた。神威はそれを難なく支える。
「神威っ、やっ、」
「何?嫌なの?でも俺はしたいんだよ。」
今、彼女を抱きたいし、自分のものにしてしまいたい。温かくて柔らかい白い肌は心地が良いし、もっと深いところに触ってみたい。
「だ、だってっ、」
「まだ旦那が好きなの?」
「ち、ちが、」
「だったら良いじゃない。それに俺は今が欲しい。」
神威は力のいまいち入っていないの足に自分の体を入れ、下着を破りとる。の丸い瞳をのぞき込むと、見たことがないほど潤んで、ゆらゆらと神威を映していた。
「あぁ、やっぱ興奮する…」
今までにないくらいの熱を感じて、神威は唇の端をつり上げ、それを彼女に押しつける。ダイレクトに下腹に押しつけられた熱に、は俯き、びくっと体を震わせた。降り注いでいるシャワーは冷たいのに、体が酷く熱い。
「んっ、ぁ、神威っ、」
は目じりを下げて、怯えるように、でもちゃんと細い手で神威に縋り付いてくる。いつも着物の袖が邪魔をして見えないけれど、やっぱりの腕はずっと華奢で、頼りない。表情が窺えなくなるのは嫌だったが、ひとまず今はの中に入りたくてたまらないから、の太ももに目を向け、なぞっていく。
彼女の中に指を入れ、自分が入れるように中を撫で、上部の突起を性急に暴いていくと、が高い声を上げる。
「う、んっ、ん」
「ほら、声、押さえないでよ。面白くないでしょ。」
神威は恥ずかしがって声を抑えようとするの手を取って、僅かな抵抗を見せるを押さえ込む。
彼女の同意なんてどうだって良い。神威は彼女を抱きたい。彼女を自分のものとして囲っておきたいのだ。決して彼女のためではない。神威は自分のために、彼女を今こうして、抱こうとしている。我慢なんて、もともと嫌いだし、故郷から出た時、本能を押さえる術は忘れた。
それが神威そのものだ。
「入れるよ、」
軽く耳たぶに歯を立てて言うと、彼女の体がびくんとはねて、神威の指をぐっと強く締め付ける。
「あはっ、素直、」
神威は笑って指を彼女の中から引き抜き、まだびくつき、濡れる中へと自分を滑り込ませる。彼女は子どもが出来てからおそらく男がいた経験はないから、僅かに引っかかったし、かなりきつかったが、先が入ればすべて簡単に収まった。
想像していたよりもずっと熱くて気持ち良くて、思わず口角が上がる。
「ぁっ、うぅ、あ、っ、」
奥をなぞるように動かすと、それを拒むように必死で身を捩った。
「…良いの?」
神威はその反応が楽しくてたまらず、自分の快楽を追うために集中する。
が何を考えているかなんてどうだって良い。恋愛感情なのかなんて関係ない。ただを気に入り、抱きたいと思った。気に入って、彼女を閉じ込めたい。束縛したい。いつも傍にいて欲しい。
だから自分のものにする。神威の結論は、それだけだった。
俺のもの、俺だけのもの