神威が通信販売をしていつの間にか物が部屋に溢れていた。
「…何これ。」
は目の前にある大量の食品を見て目をぱちくりさせる。勤務中に阿伏兎に呼び出されて神威と自分の部屋を見に行ってみれば、この惨状だ。
「団長が通信販売しやがったんだよ!あのスットコドッコイが!!」
阿伏兎は怒り心頭といった様子だが、は首を傾げる。
「まま、おいしそう。」
東は通信販売物品(食品)に押されて部屋にいる事が出来ず、ドアの前で座っていたらしい。の部下の赤鬼の所に保護されていたそうだ。
「美味しそうって言ってもね、この量だよ。しかも普通に食べられるもの少ないし。」
は軽く小首を傾げて息を吐く。
目の前に積み上がっているのはカニやら魚、果物だ。果物はそのまま食べられるから神威が簡単に消費できるが、魚やカニは少なくとも調理しなければならない。神威が調理など出来ないので、調理するのは間違いなくだ。
「こりゃ大変だなぁ。しばらく仕事休もうかな。」
「いや、まずあのスットコドッコイに怒れよ!」
「だって神威のお金でやってることだし、」
は阿伏兎の抗議に見当違いな答えを返す。
今やと神威の給料は莫大で、と東、神威が食べて行くには神威があまりに莫大な食費が必要とは言え、全然問題無い。今では莫大な貯蓄まであるくらいで、生命保険も入っている。
「いや、そういう問題じゃねぇだろ。旦那が通信販売で大量に物買ったら、怒るもんじゃねぇの?ちゃんよぉ。」
「普通専業主婦が退屈片手に通信販売するんじゃないの?別に怒らないよ。お互い稼ぐだけの甲斐性あるんだし、別に怒らないよ。」
「おまえさん、男前すぎて俺涙でそう。」
阿伏兎は理解できないとでも言うように首を横に振る。
「あーーーー来てる!」
神威が廊下の向こうから走ってきて、扉から溢れんばかりの食材を見て声を弾ませる。
「おいコラ!部屋から溢れてんだろうが!どうすんだよこんな大量の食材!」
「美味しそうでしょ?テレビで見たんだ。」
阿伏兎は神威を怒鳴るが、そんなのどこ吹く風だ。
「神威、まずこれをそのまま食べられるものと料理しなくちゃいけない物に分けてよ。そのまま食べられるものは廊下に出して、くれないと、キッチンどころか部屋も使えないよ。」
は冷静そのもので、あっさりと神威に仕分けの指示を出す。もう完全にこの大量の食材を処理するつもりだ。
その適応力の高さに、阿伏兎の方がついて行けなかった。
通信販売