「おまえら仲が良いアベックだよな。本当に。」






 阿伏兎は自分の頭をがりがりと掻きながら、と神威に目を向けて言う。

 ひたすら書類を処理していると、の執務室のソファーで寝そべって遊んでいる神威は同時に「はぁ?」と阿伏兎を見た。




「ペアルック?どれが?」

「ペアルックじゃないよ。。ハドックだよ。」

「なにそれ?」

「ポ○モンだよ。」

「それってコダックじゃなかった?」

「そうだっけ?ってか、あれ?俺たちって仲が良いコダックなの?コダックって黄色いアヒル的なんじゃなかったっけ?」

「コダックってカモノハシ的な感じじゃないの?」

「あれ?カモノハシに似てるって、誉められてないよね。」

「うん。相変わらずむかつく阿伏兎だよね。」

「殺しちゃっても良いと思う?」

「人をカモノハシに例えるなんて失礼だよね。」






 殺して良いかと許可を求める神威に直接的に反対はしていないが、も協力的だ。







「ちげぇよ!!」




 全く話が別の方向に進んでいるのを見て、阿伏兎は思わず叫んだ。




「仲良いアベックだって言ったんだよ!」

「だから、アベックって何?」




 神威が顔を上げて、阿伏兎の言葉に首を傾げる。





「え?アベックってほら、あれだろ。ほら、」

「あれって、何?」

「アベックって、あぁ、神威。わたし思い出したよ。」





 全く理解できない神威に、が思い出したのかあっさりと言った。





「30年ぐらい前かな。カップルのことを、アベックって言ったらしいよ。」

「え?そんな言葉聞いたこと無いよ。」

「お父さんに聞いてみたら?知ってると思うよ。」

「何、要するにそれって死語って奴。じじさくいねぇ。」





 神威は納得したのか、阿伏兎を見ながら足をぱたぱたさせる。





「じじくさいっていうか、まぁ昔取った杵柄って奴じゃないの。」






 は興味もなさげに書類をぽんぽんとそろえて、近くに置き直していく。





「もう良いよ。俺が悪かった…」






 阿伏兎は項垂れて部屋を出るしか道はなかった。
死語