予算の透明化と言うことで年に一回、第七師団は昨年度の支出内約を発表することになり、それを見た団員全員が呆然とした。




「…え、半分以上食費じゃね?」





 誰かがぽつりと呟く。

 第七師団は元々宇宙海賊きっての戦闘部隊で、ばりばりの男所帯、体育会系だ。しかもかなりの人数の夜兎族を抱えており、食事の量は通常でも一般人の3,4倍。夜兎族にもなれば軽く10倍だ。それが人数分なのだから、誰もが驚く食費になっていた。




「絶対夜兎の奴らのせいだぜ。」

「確かに、あいつら化けもんだもんな。別に食費でも徴収して欲しいぜ。」




 団員は口々に愚痴りながら歩いて行く。






「エンゲル指数が70%だとよ。こりゃこりゃ俺らへの風当たりがきつくなりそうだね。困ったもんだよ。」






 阿伏兎はぶつぶつと言って、提示された昨年度の支出を眺めた。

 船の整備代や医療費、大砲や武器代などよりも遙かにエンゲル指数が高い。が第七師団の会計を担うようになってからはできる限り安い食材を大量に買い占めるように気をつけてはいるが、それでも追いつかないほどよく食べる。

 そのため、他の団員からは平均以上の食事をする団員からは追加料金を貰うべきだとの意見まであった。




「俺は関係ないよ。」





 神威はにこにこと笑う。





「なんでなよ。おまえだって食いまくってる夜兎じゃねぇか。」

「俺は朝と夕は基本的に部屋でに作って貰ってるから、第七師団のエンゲル指数には貢献してないよ。」





 確かに神威も夜兎族で、他の人間よりも遙かに食べるが、神威が第七師団の食堂でするのは昼食だけだ。それ以外は自分の部屋でに作って貰って食べている。当然朝食、夕食の金はと神威の給金からまかなわれている。

 だから、エンゲル指数には貢献していないはずだ。

 昼ご飯を大量に食べたところで、朝夕食は食べていないのだからそれで折半。プラマイゼロどころか、マイナスになる。追加料金を払う必要はないだろう。





「羨ましいねぇ。の奴、料理までうまいらしいじゃねぇか。」






 は腕っ節も強いが料理もうまいと言う噂はまことしやかに広がっている。と言うのも、一度が団員にカレーライスを作ったことがあったのだが、これがもの凄く美味しくて評判だったのだ。





「うん。美味しいよ。」






 神威は臆面もなくあっさりと言う。

 は書類仕事などで忙しくしているが、少なくとも神威の朝食と夕食を欠かすことはなく、いつも美味しいご飯を作ってくれている。






「特にがつける漬け物が絶品なんだ。」

「なんだよ。そのばばくせぇ趣味。」

「良いんだよ。のぬか漬けと沢庵は美味しいから。」





 白ご飯大好きの神威にとって、漬け物を美味しく作ってくれるは、誰よりも良い女だった。



エンゲル指数