夜中に突然甲高い声を上げての連れ子である東が泣き出したので、神威は飛び起きた。

 電気を消した真っ暗な部屋の中で何とか東を見つけ出し、抱き上げる。彼を抱いたまま電気をつけてよく確認してみると、どうやら寝ぼけ眼にトイレに行こうとしてベッドから落ちたらしい。



「男だろ。泣くなよ。」



 神威は言いながらぽんぽんと腕の中にいる東の背中を叩く。

 どんなに男だとは言え、まぁまだ2歳の東にそんなことをいっても無駄だ。揺すり、あやしながらふと自分たちが寝ていたベッドを見やると、は東の泣き声にも全く気づかなかったのか、ぐっすりと眠っている。



「…」



 あの甲高い声に起きないなど、図太いにも程がある。

 眠たい上に痛かった東はまだ神威の腕の中でぐずっている。というのに実母のは爆睡だ。全く起きない。



「本当に、俺が来る前どうやって子育てしてたんだろうね。」



 神威は一人ぼやく。

 神威とが会った頃、東は既に一歳になっていた。彼女は確かに食事もきちんと作るし、一応東に目を配っているが、それは最低限のことで、面倒になるとテレビにお守りをさせたりする。挙げ句の果てに夜に東がごねようが、体調が悪くて揺すろうが全く起きない。

 寝付きも良ければ、全く起きないのだ。

 東は夜泣きはあまりないし、前もなかったとは主張しているが、彼女が気づかなかっただけだろうと最近神威は思っている。

 今となっては書類仕事に忙しいため、任務以外はなにもしない神威が東の面倒を見ていることの方が多い。特にはあまり躾をしないタイプで、ごねられるとまぁよいかと我が儘を聞いたりする。こだわりがないので神威が注意すれば、そうかとやめるのだが、本当に教育方針は全くないらしい。

 元々自身両親を知らず、義父に何か躾めいたことを言われたことはないので、よく分からないというのが実際の所なのだろう。

 ただ親なのだから、しっかり言っても良いと思う。



「ままおきない。」

「うん、本当にむかつくくらい起きないね。」

「むいー。」



 東はぎゅっと神威の首に抱きつく。

 最近母親に構ってもらえないことを理解してか、東も神威にべったりだ。そういう年頃だからと言うのもあるが、血が繋がっていなくても東には関係ないのだろう。



「まぁ良いか。」



 神威は東を抱えなおして、ベッドに戻る。

 が起きなくても結局の所神威が起きるのだから、結果は一緒だと神威は単純に考えて、眠りに戻るとことにした。

駄目嫁