「神威を動物に例えると?…」
は書類を眺めながら、部下の赤鬼が訪ねて来た言葉を反芻した。
どうやら最近動物占いという奴が流行っているらしい。正直戦闘集団である第七師団の団員がそんなことをはなしているのは酷く不釣り合いなのだが、宇宙は娯楽も少ないので許すことにしている。
ソファーでは転がっている神威が不思議そうな顔でぱたぱたと足を上下させて会話を聞いている。その目の前には阿伏兎もいて、指示の元必死で書類をやっていた。
「トラじゃない?」
「なんでっすか?」
「一匹狼で滅茶苦茶強い。ほら、狼は群れる動物でしょ?虎は違うし、可愛いし。」
「あはは、確かに!」
赤鬼はいかにも鬼といった顔をくしゃくしゃに歪めて笑って見せる。
「聞いてりゃ酷い言い方だね、まぁ強い動物だから、良いことにするよ。」
神威はに近くにあった消しゴムを投げつけ、笑顔のまま言い捨てる。はそれを黙ったまま避けた。壁に消しゴムがめり込んだ。
「じゃあ俺はなんなんだよ。」
書類から顔を上げた阿伏兎が唐突に尋ねる。
「え?阿伏兎?ねずみ男?だってみすぼらしい感じ。」
「おいおいおい、流石にそりゃ酷くねぇか。ちゃんよぉ。」
「だって阿伏兎ってどっちかって言うとみすぼらしい感じなんだもん。ハイエナ、んー。」
「酷い言い方だよね。でも何となくイメージは分かるよ。」
神威もあっさりとに同意してから、にその青いくるっとした瞳を向けた。
「ところではなんなの。」
唐突に問われて、は漆黒の瞳を瞬く。
「なんだろうね。自分では分からないよ。」
「なんっすかね。賢い生き物。犬?」
「こんな誰にも尻尾ふらねぇ犬なんていねぇよ。」
「阿伏兎、次の書類はここにあるからよろしくね。」
「あははは、阿伏兎頑張りなよ。」
神威は気のない様子でから書類を受け取り、それを阿伏兎の処理すべき書類の山に積む。阿伏兎は嫌そうな顔をしたが、神威は至極楽しそうだ。
赤鬼は哀れみの目を向けたが、庇っても良いことがないので黙り込む。
「はクロヒョウだよ。」
神威はにっこりと笑う。
「なんで?」
「腹の中が真っ黒だから。」
「…聞き捨てならないんですけど」
は神威にその漆黒の瞳を向けて、不満そうに頬杖をつく。だが、何となく納得出来る動物で、阿伏兎と赤鬼は思わず頷いてしまった。
動物占い