砂漠に不時着したのは、動力の不具合だったらしい。
「みんな水だけはちゃんと飲んで、夜兎の人は影から出ちゃ駄目だよ。」
はメガホン片手に団員全員に言う。
船の動力は既に止まっているため、冷房すらも動かない。そのため全員が外に出てきていたが、外は日差しが強く、第七師団に多くいる夜兎は日差しにぐったりだった。
幸い水はふんだんにあるため、使っても問題はない。
は全員に注意を促してから、動力を司っている部分を開いて、修理をしている団員たちと共にコードをいじくる。
「修理、できそうっすか?」
心配顔で青鬼がやってくる。
彼は夜兎ではない、鬼の顔をした天人だが、それでも体が大きいので暑さには随分とやられているようだ。
「んー、まぁ数時間で直せると思うよ。」
は答えてから、影でじっとしている神威と阿伏兎を見やる。
ふたりとも夜兎であるため強い日差しにぐったりだ。逆に子どもとはいえ地球人の東の方が元気で、心配そうに二人にホースで水を振りかけている。
「大丈夫?神威。」
は修理を他の団員に任せて、水浸しになりながらも三画座りをしている神威に尋ねる。
「うーん。日差しが強すぎてくらくらするよ。目も痛いし。」
神威はいつになく元気がなさそうで、目の色も薄いため光の中ではまぶしすぎてものが見えにくいらしい。見づらそうに目を細める。
「熱い?」
「いや、水は結構冷たいから大丈夫だよ。ってか、アズマは大丈夫?」
「じょぶー」
神威に振りかけている水のホースをぶんぶんと不利ながら、東は神威に返事をした。
「ちゃんよぉ。こりゃいつ出発できるんだ?」
「最高で2時間ってところかな。動力が戻ればすぐ出発できるよ。阿伏兎も頑張って。」
珍しくは優しい言葉を阿伏兎にかけて、東の頭を撫でる。
「まぁでも、夜兎がみんな大人しいからこれ以上破壊される可能性が無いのはありがたいよね。」
夜兎の面々が怪力のコントロールに失敗して宇宙船を壊すことは珍しいことではない。もうそれにも慣れっこだが、その処理が大変なのは事実だ。
大人しいならたまにはこういう砂漠の惑星に落ちるのもそれ程悪くはないのかも知れない。
そう思っては清々しい顔で大人しい夜兎たちを見守っていたが、神威はむっとした顔でを見ていた。
墜落