素肌に触れる相手の肌がくすぐったい。だがくすぐったいという感覚は残っていても、疲れ切っていて指一本億劫で動かす気にはなれなかった。代わりに視線だけを上げる。

 子供っぽいのに精悍な、まだ少年と青年の間をさまよう顔立ちはそつなく整っていて、が起きたのがわかると、その大きな青い瞳にを映して薄い唇を上げた。少し痛む頭がまだうまく起動していなくて笑われたことが一瞬理解できなかったが、潔くわかって頬を染めて視線をそらす。



「あり、何恥ずかしがってんの?今更だろ?」

「そ、そうだけど、」



 最近忙しすぎて、落ち着いて起きたばかりの時間を満喫することなど出来なかったので、こういう感覚を忘れていた。



「あれ、でも今何時?」

「気にしなくて良いよ。休暇とった。有給たまってたし。」

「え、え、でも、」

は現実に追われすぎだよ。ゆっくりしよ。」



 首もとに回されていた腕が動いて、の髪を大きな手が規則的に撫でる。寄り添っている神威の体温は落ち着くし、何やら色々どうでも良くなってくる。



「頭は痛くない?」

「え?いや、痛くないけど。わたし結構飲んでた?」

「うん。もうちょっともうちょっとで一人で2本は軽く空けてた。」

「…ごめん。わたしやっぱり疲れてたのかも。」



 日頃であればお酒を飲んだとしても気をつけているので、記憶がなくなるほど酔うことはない。なのに、昨日は最後の方の記憶が曖昧だ。



「まぁ俺も疲れることさせたしね。」




 神威は満面の笑み、しかもつやつやした顔で目を細めている。それをはぼんやり眺めて、やっぱりハンサムな顔しているなと再確認したが、彼の言った意味を理解して眼を丸くして、視線をそらした。



「あ、え、うん。あ…」



 記憶は曖昧だが、全く覚えていないわけではない。昨晩抱かれたことはちゃんと理解しているし、断片的に自分の行動は覚えている。だからこそ、いたたまれない。早く神威から逃れて着物を着たいのだが、神威の腕が許さないし、躰が気怠くて動く気にもならない。

 一体どれくらいされたのか、記憶も曖昧だが、神威は元々このつもりだったのだろう。でなければ、一週間半も休みをとったりしていないはずだ。が警戒する必要がないように地球、しかも春雨傘下にある吉原を選んだのも、完全な確信犯だ。



「もう真昼だよね。」



 障子から入ってくる外の光は随分と明るい。吉原は昔は空をふさぐゲートがあったそうだが、それは今、昼になればあけられるようになっていた。そのため障子越しにまぶしいほどではないが、明るい光が入ってくる。

 どう考えても朝のまぶしさではない。



「よく寝てたね。」



 神威は笑って、するりとの尻を撫でる。



「ひっ、やだ、」



 感覚の鈍い、しびれた手でぐっと神威の胸板を押すが、そんなことで止まるような男ではない。神威は構いもせずの恥丘を撫でると、昨日の名残の残る中へとゆっくりと指を滑り込ませた。



「ふっ、う、っ、」



 身を捩って逃れようとするが、疲れでうまく動かない。ましてや神威に抵抗したところで、力でねじ伏せられて終わりだろう。足を無理矢理開かれ、神威がのしかかってくる。



「柔らかいね、昨日はあんなにしたからかな、」



 ぐちゃっと粘着質な水音がして、それを耳が捉えた途端、ぎゅうっと腹に力が入り、神威の指を思い切り締め付ける。痛みはないけれど、自分の中を行き来して撫でる指の気持ちよさと苦しさにあっという間に息が上がる。



「か、かむい、っ、」

「あはは、良いねぇ。」



 濡れた入り口を、ゆっくりと神威の勃ちあがったものが行き来する。固さを直に感じれば、また腹の奥の熱が疼いた。頭は痛くないが、まだ躰の動きは鈍く、頭ももやがかかっているようにいつもほど早く動かない。なのに、酒が残っているのか躰の感覚だけは敏感で、まだ昨日の行為を覚えているようだった。

 上を見ると、神威の明るい青色の瞳がある。目が合うと、その瞳は楽しそうに弧を描いた。神威のものがの陰核を撫でる。



「あっ、うぅ、」

「力抜いて、」




 神威は耳元でそう言って、ゆっくりと自分のものをの中に沈める。昨日の名残があるため、抵抗もなく僅かな音とともに入っていった。ただ刺激に耐えきれず、は背をのけぞらせて白い喉を晒す。




「いつもは嫌がるのに、まだ酒が抜けてないのかな。」



 神威は痛い程にのくびれを掴んで、を揺さぶる。



「だっ、ゆっく、り、っあ、」



 ぬるりとした液体の不快感と、それを遥かに凌駕する、神威から与えられる刺激には逃げたくて布団をひっかくが、指が震えてうまく握ることが出来ない。



「むりむりっ、俺にあわせて、」

「やっ、ぅ、あわせっ、られな、」



 体力的にどう考えても、あわせられるわけないのだが、神威はどうしてもが良いらしく、それを求めてくる。



「うぅ、」




 はせめてもの抵抗に精一杯彼を睨んだが、それにすら、神威は楽しそうに笑って返した。




相違を埋める