「拾い食いはすんなって言ったよね。」
阿伏兎、とは呆れた様子で黄銅色の頭にのっかっている巨大な花を眺める。
毒々しい、反転のある大きく肉厚な花弁。それは軽く阿伏兎の頭のサイズを超えているし、すごい悪臭を放っている。
「姐さん、なんすかね、これ。どうしたらいいんっすか。」
第七師団の船医である業円は戸惑いがちにに尋ねる。
何故彼がに相談しているかというと、もまた医師免許を持っており、少なくともきちんとした教育を受けていない業円よりは、病名などもよくわかっているからだ。
宇宙海賊・春雨は、任務で様々な星に降り立つし、様々な星から団員も来ている。そのため病なども多種多様だ。対応は第七師団にいる医師二人で話し合うことが多かった。とはいえ、今回は突然、しかも阿伏兎だけにこの花が生えたため、何らかの食物によるだろうと考えられた。
「ってか、くさくない?殺して良い?」
医務室までついてきた神威は、心底不快そうに近くにあったマスクを取って言う。
「うーん。頭の花だけなら放っておいたら枯れるらしいんだけどね。この悪臭ってどうしたら良いのかな。」
も業円も困り果てている原因は、どちらかというと目立つ花よりその近寄りがたいほどの腐敗臭とよく似た悪臭だ。
調べたところどっかの星のラフレシアの一種だというそれは、宿主に寄生し、しばらくしたら枯れるらしいのだが、それまで花粉を運んでくれる蠅を集めるために恐ろしい悪臭を放つのだ。どちらかというとそちらの方が問題である。
「あのさぁ、なんでもするからどうにかしてくんね?」
阿伏兎は困ったように頭の花を揺らす。だがそれがまた悪臭をまき散らす結果となり、は眉をよせた。
「これって、阿伏兎を殺したら枯れる?」
「まぁ寄生花だから、枯れるよ。」
手っ取り早くこの花を枯らす方法は、もちろん寄生している人間を殺すというものだ。栄養が得られなくなれば、枯れる。
「おいいいいいいいいいいいいちゃん!そういうことは黙っててくれよ!俺がマジで団長に殺されんだろうが!!」
「種、拾い食いしたこと自体が人生の間違えだったんじゃない?」
「やりなおせってか!?人生やり直せってか?!」
人には優しく、部下からの信頼も厚いだが、生憎阿伏兎に対しては半端なく冷たい。
「ひとまず、頭の花刈り取ったら良いんじゃないかな。」
神威はバッドのように傘を構える。どうやら頭に生えたラフレシアを、ボールの要領で飛ばすつもりらしい。だが、彼の腕では阿伏兎の頭まで飛ばすかも知れないなとはわかっていながらも、生憎止める気がなかった。
ラフレシア