弱音を吐くのが苦手な彼女は、あまり痛くても、苦しくても、何も言わない。
「っ、ひっ、」
あまり慣らさず入れると、引き連れた悲鳴を上げて一瞬足をびくりと震わせた。
自分をおちつけるように軽く躰を揺らしてから、自分の躰の下で痛みにこらえる彼女を見て、眉間の皺に口づけてやる。こちらも我慢できなくて彼女を襲っているので、遠慮もなく細い腰を掴んで無理矢理揺らすと、ぐっと唇をかみしめた。
いつも一つに束ねている銀色癖毛に指を入れて髪紐を解き、血が出るほど噛まれた唇に自分の指を突っ込む。
「あっ、か、かむっ」
驚いたように見開かれた、涙に濡れた漆黒の瞳に欲情する。指を噛まれたが、そんなことは気にならない。
「ちょ、まっ、待って、」
「待てない、」
の足を無理矢理開かせ、折り曲げるようにして自分を深く銜え込ませる。太ももに軽く口づけると、嫌がるようには身を捩って、神威を止めるように両手を突き出した。だが、そんなことで止まれはしない。
彼女を労っている暇もなく、自分の快楽を求めるために性急に彼女の躰を揺さぶり、無理矢理押さえ込む。悲鳴を無視して、遠慮なく抱き込んで、二度欲をはき出して我に返る頃には、はぐしゃぐしゃの顔をしていた。
「…しね、っうぅ、」
死ね、といつもなら口にしないようなことを、弱々しい声で口にする。
「ごめんごめん、今抜くから、」
「やっ、い、ま、」
躰が敏感になっているのか、もしくはイったばかりだからか、は抜くことにすら感じるらしく、泣きじゃくって止める。強く、いつもけろっとした顔をしている彼女が行為の最中でも泣きじゃくるほど狼狽えるのは珍しい。
白い頬を真っ赤に染めて、漆黒の瞳は涙でいっぱいだ。人を殺している時、まるで刃のように鋭いのに、今は目尻を下げて不安そうで、怯えてすらいるようだった。改めてそれを見下ろして、頬を撫でてやると、彼女の熱さをじかで感じ、ぞくりとした疼きが下半身を支配する。
ギャップって、そそるという話なのかも知れない。だが、自覚した時にはもう遅い。
彼女とともにいるようになって、自己処理をするなんてばからしくなって、むらむらする時は素直に彼女で解消することにしているし、彼女は結構そそる。我慢なんて元々出来る方ではないし、彼女といるようになってなおさらなくなった。
「やっ、あ、」
「やばっ、」
神威ははーっとため息をついたが、一度勃ち上がってしまったものがこの状況で萎えるわけもない。無意識に彼女の中もびくっと反応して、神威のものを強く締め付けた。
「、起きれる?」
の腰の後ろに手を入れて、背中を抱く。彼女はもう手に力が入らないのか、腕をつこうにもがくがくしていて、肘でもうまく躰を支えられていない。腕を引っ張り、彼女の躰を自分の上に抱き上げ、自分も座る。
「あっ、かむっ、い、」
は神威を深く銜え込むこの体勢があまり好きではない。だが、不安そうなので、何となく彼女を強く抱きしめたかった。
こめかみから手を入れて、彼女の銀色の長い癖毛をかきあげ、躰を自分に沿わせるように支えてやる。
「、どうした?」
「っ、ぅ、」
「どうしたの。」
の頬を手で包んで、こつんと額を合わせる。
すこしぼんやりとしていて、不安げな珍しく頼りない瞳は、水の膜でゆらゆら揺れていて、躰にもあまりに力が入っていない。
「こわい?」
「っ、ぅ、こわ、いぃ、」
ぽろりと頬を涙が滑り落ちる。それは神威の手を滑り落ちて汗とともに肌に溶けていった。
は神威が殺意を向けようが、他人に殺されかけようが、何にも怯えない。のらりくらりと交わしてくる。大方のことに関して弱音を吐くこともない。だからきっと、こんなことを言って縋り付いてくるのは、今だけだ。
多分正気に戻ったら、真っ青な顔をして、そして真っ赤になって、知らないふりをするのだろう。それをおちょくるのも楽しいけれど、今はそんなことはどうでも良い。
「おいで、怖くないよ、」
神威はよしよしとあやすように優しく彼女の背中を撫でてやる。苦しそうに肩で息をする彼女は、神威に自分のみを委ねるように、神威の肩に自分の頬を預けた。
珍しいけれど、たまには良い。
背中に回った彼女の手が、ぎゅっと神威に縋り付く。刀を持つ、彼女の手は酷く小さくて、少しくすぐったい。
「さて、もう一発よろしく頼むよ、」
神威がふざけたように言うと、小さな手がぺちっと神威の背中を叩く。そんなことして、後で後悔するのは彼女なのになぁと、神威は思った。
ご愛敬