鬼兵隊の頭である晋助とのお話し合いに出てきたはすこぶる眠たそうだった。



「おいおい、ちゃんよぉ、大丈夫か?」



 阿伏兎は完全に船をこいでいるを肘でつつき、起きるように言う。



「寝かせておいてやりなよ。疲れてるんだ。」



 神威はを自分にもたれさせるように引き寄せる。もともと体が華奢なは引っ張られればそのまま彼の肩に自分の頭を預けた。どうやら同席して座る以上の気力は全くないらしく、もう眠っているのか起きているのかわからない。

 というか、瞼を閉じたのでもう眠る気なのかも知れない。



「疲れてるって、またかよ…、いい加減こういう時には手加減してやれや。しかも昨日は肉体労働だったんだからよぉ。」



 阿伏兎は額を押さえてため息をつく。



「引き続き肉体労働だったんだよ。俺若いからさ、たまってたんだ。そもそもが元老の所に行くから悪いんだよ。」



 神威はあっさりとした口調で言って、機嫌良く鼻歌まで奏でている。どうやら色々すっきり片付いて清々しいらしい。は一応起きているのか、僅かに眉を寄せて神威の発言を止めるように神威の袖を引っ張ったが、それ以上なにかをするだけの根性はないらしく、大人しかった。



「いや、こういう時やっぱ地球人とさ、夜兎の大砲の大きさは違うわけだよ。いや、エネルギーの差もあるけどね。」

「大丈夫さ。は地球産だけど、丈夫だし、だいたいいつも生きてるよ。さぞかし立派な大砲を見てきたんだろうさ。」

「いやいやいや、毎回ちゃん疲れて寝てんじゃねぇか、ちょっとおじさん同情しちまうだろ?ってか俺の仕事が増えんじゃねぇか。そういうことばっかするから!」

に仕事押しつけるからそういうことになるんだよ。たまにはね。もゆっくりしないと。」

「肉体労働でゆっくりどころかぐったりしてるって言ってんだろうが、」

「肉体労働も立派な仕事だよ。っていうかさ、団員たちはを雇いたがるけど、俺は別にを団員にしたいわけじゃないし、一緒に肉体労働してくれれば良いよ。」

「おまえもうに戦闘狂故の強さ求めてんのか、絶倫の相手求めてんのかもうわからねぇよ!」

「どっちもに決まってるじゃないか。男なんてそんなもんだろ。」



 神威は迷いもなく、そして臆面もなく断言する。



「なんではこんなデリカシーのない奴が良いんだ。」



 阿伏兎はまた冒頭と同じ、手で額を押さえてため息をついた。



「そりゃ、に聞いてヨ。の男の趣味はじゃないとわかんないし。そうだね。シンスケと俺の顔でも見比べて、共通点でも探すと良いよ。」



 神威は向かい側に座っている晋助を一瞥してから、自分の肩に頭を預けて目を閉じているを見下ろす。彼女は本当に眠り始めてしまったのか、サクラ色の唇からは寝息が漏れていた。



「で、元妻の枕事情まで聞かされる俺はなんてコメントすりゃぁ良いんだ?」



 心底不快そうに言って、晋助は煙草の煙をゆっくり吐き出す。





「俺にはろくでなしってこと以外、共通点がまったくわかんねぇわ。」



 阿伏兎はげんなりした表情でため息をつくと、偉そうに背もたれに自分の背中を預けて、天井を見上げた。だがその天井が一瞬にして近づき、頭が天井を突き破る。




「誰がなんだって?」




 拳を握りしめて、神威がにっこりと笑う。晋助はばらばらと天井から破片が振ってくるのを見ながら、むかつく場所は一緒かも知れないなと内心で毒づいた。








男同士の最悪な会話