幼馴染みの桃井さつきが、ため息をつきながら報告してきたのは、彼女がどこの高校に行ったかと言うことだった。





、やっぱりテツ君と同じ誠凛だったみたい。バスケ部から目撃情報ありだわ。」

「はぁ!?バスケ部!?」






 青峰はあまりに予想外の言葉に目を見張る。

 桐皇に来なかったことは百歩譲って許せた。だが兄の黒子テツヤと同じ高校だと言うだけでなく、またバスケ部にいるのだ。カウンセラーをしているのかマネージャーをしているのかなんてどちらでも良いが、自分に対する裏切りであることは間違いない。

 どうせバスケ部に所属するならば、桐皇でも同じだったはずだ。

 学力の問題で楽山に行くというならまだ納得も出来たが、黒子と同じ高校に行ってバスケ部に関わっているというのは、明確に彼女が自分を見限り、双子の兄を選んだ証拠でもあった。




「くそっ!あのブラコン!!」




 ぐっと拳を握りしめながらも、本当の理由はわかっていた。

 キセキの世代のカウンセリングをし、誰よりも傍にいながら、誰よりも自分たちの闇を知っていたは、全中まではひとまず勝つことに関しては、自分たちの気持ちを前に向けた。だが全中の後、全く彼女はバスケ部に顔を出さなくなった双子の兄の黒子テツヤとともに、全く来なくなった。

 桐皇に彼女が入学しなかったと判明した後、青峰は彼女を探した。誠凛に関しても疑いはあらかじめ持っていたので、一通り目を通したはずだったが、どうやら桃井ですらも見落としていたらしい。

 彼女は存外頭が切れるので、桃井がいそうな場所からは逃げていたのだろう。そのため桃井が聞いたのも又聞きで、本人からではなかったし、本人を見つけてもいなかった。





「青峰くんのせいだからね。」





 桃井は目尻の端をつり上げ、じとっと青峰を見る。





ちゃんは私の大好きな大好きな友達だったのに、青峰くんのせいでこうなったんだからね。」





 桃井とはマネージャーとカウンセラーという隔たりこそあったが、同じく帝光のバスケ部に貢献していた身だ。特には桃井の好きな黒子テツヤの双子の妹、がつきあっていた青峰は桃井の幼馴染みということもあり、四人で出かけることも多かった。

 正直、中学時代一番仲の良かった友人とも言える。

 だが彼女は最近メールや電話こそ返してくれるが、桃井に直接会うことは絶対にない。彼女は忙しいだとか、いろいろな理由をつけているが、それは桃井の幼馴染みでもあり、家が近い青峰がともに来ることを恐れているからだ。





「うるせぇ、ぐだぐだ首突っ込んでくるんじゃねぇ。」






 青峰は幼馴染みに冷たく言い捨てる。

 これは彼女と自分のことだ。例え仲の良い幼馴染みだとしても、口出しされることではない。だが桃井としても納得は出来なかったらしい。





「何よそれ!それに青峰くん絶対ちゃんに何かしたんでしょ!」



 彼女は元々人の感情の機微を見るのが誰よりもうまい。だからこそ、彼女は身体が弱くてもマネージャーとしての役割を果たすことが出来ないのに、ベンチに入ることが出来たのだ。

 そしてだからこそ、青峰が何を望んでいるのか、何に一番傷つくのか、どうしてそうしたのか、わかっているはずだ。それでも彼女が逃げるのは、きっと青峰を思いやれない、自分の心を整理できない何かを青峰が作り出したからだ。



「うるせぇ、黙ってろ。」





 青峰はさっきだった目で桃井を睨む。それに桃井は怯んだ。

 彼女はなんだかんだ言っても幼馴染みである青峰のどこに踏み込んで良く、どこに踏み込んではいけないのか、それはよく理解している。だからこそ、黙るしかない。





は、誠凛にいるんだな?」




 青峰は確認のように桃井に問う。それで桃井は彼に自分がまずい情報を漏らしたことを確信した。彼女がバスケ部にいながらほとんど試合に出てこなかったのは、多分青峰に会わないためだ。それを迂闊に彼に漏らしたことを、桃井は後悔する。





「青峰くん、まさかっ。」

「おまえには関係ねえよ。」






 鋭い言葉とともに、桃井は自分の失敗を知り、どう手を打てば良いのか必死で頭の中で探しながら、携帯電話を握りしめた。

月の発見