生まれつき未熟児で生まれたため、気づいた時には身体が弱く、普通の子供のように遊ぶことすらもままならなかった。激しい運動は禁止されていて、いつも病院の中から皆が運動をしているのに、羨望の眼差しを向けることしか出来なかった。

 多分彼らに惹かれたのは、太陽のように輝いてバスケをしている姿がうらやましくて、愛しかったから支えたいと思った。自分に出来ることは一緒にバスケをすることではなかったから、気持ちを聞いて、前を向かせてあげる。勝たせてあげるメンタルを作ることで、助けてあげられれば嬉しかった。

 青峰は最初怖い人だと思ったし、意地悪くて逃げていたけれど、バスケをする彼はすごく楽しそうで、まさに何よりもが憧れたものだった。いつしかその憧れは、彼個人への興味に変わっていた。

 好きだった。




「ごめんなさい。ついていけない。別れましょう。」




 もう、も限界だった。彼らと、それをとりまく相手の心の闇がどんどんを蝕み、耐えられなくなる。自分の心が摩耗し、彼らも何の成長にならず、小手先だけのケアで前を向かせ、勝利だけを掴ませる。

 それによって他の人間たちが限界を知り、新たな新芽まで摘んでいく。

 泣きそうな顔して、大好きだったバスケの練習すらもほとんどやらなくなって、そんな彼の背中を押し続けなければならない。

 そのなれの果てがあんなチームだというなら、そんな馬鹿なことはなかった。

 そのなれの果てが、愛しい人の退屈で、暴力と苛立ちだというなら、何も見たくはなかった。

 再起不能なほど傷ついたのはきっと双子の兄だけじゃなくて、自分も同じだった。全中を見て思ったのは、他人の夢を踏みにじるために、自分は心を削り、あんなチームを支え続けていたのだろうかという脱力と、それに追随し、人の心を踏みにじる行為に荷担した自分の恋人への失望だった。

 再三者として他人なら多分、許すことが出来たけれど、しかし相手が恋人であり、その背中を自分が押していたと思うとなおさら耐えられなかった。

 彼の傍にいるのが辛くてたまらなかった。





「ふ、ふざけたこと言うんじゃねぇよ。」




 呆然とした面持ちで、震える声で青峰はに言った。

 彼が酷く狼狽しているのがわかった。少なくとも練習に来なくなっても、彼は自分を大切にしてくれていた。それは異常なほどで、きっと彼はが離れていくかもしれないとうすうす感じ、ずっと怯えていたのかもしれない。でももうバスケに関わる彼を見ているのが辛くて、の方の心がすり減っていた。

 このまま、彼のバスケに荷担するのも絶対に嫌だった。





「おまえまで、おまえまで離れるって言うのかよ!」





 ぐっと強く痛みを感じるほどに腕を掴まれた。彼の青みがかった綺麗な色の瞳には悲しみと、隣にいる存在への切望が含まれていた。

 の双子の兄である黒子テツヤのパスを必要としなくなってから、彼はそれまで以上ににこだわるようになっていた。本当は、きっと兄に傍にいて欲しかったのだろう。でも彼がともに立つことはなくなった。

 これで自分がいなくなれば、彼はすべてを失うことになる。それを知っていたけれど、も限界だった。

 そしてまだ心のどこかで、彼が力で自分をねじ伏せるはずはないと、信じていたのかもしれない。
月が転がり