「そうですか。お二人とも相変わらずなんですね。成績。」






 による青峰と黄瀬の赤点回避補講を見に来たのは、彼女の双子の兄であり、かつてのチームメイトの黒子テツヤだった。





「うるせぇ、テツ。てめぇ何しにきたんだよ。」

「笑いに来たんです。」





 青峰に実に素直に黒子はかえす。





「てめぇだってそんなに良い成績じゃねぇだろ!」

「でも悪い成績ではありません。」





 間違いなく黒子の成績は平均で、悪くはない。その普通の頭に大抵の場合のはる“山”が入れば、成績はだいたい上位3分の1になる。バスケの才能さえなければ、つくづく彼は平均的な男だと青峰は思う。

 それでも彼の才能に関しては、認めているのだが。




「黒子っちぃ、そりゃないっすよ。それに青峰っち程悪い成績じゃないっす。」





 黄瀬が頬を膨らませて文句を言う。




「知っていますか。それをドングリの背比べって言うんですよ。」




 黒子は幸い国語がきわめて良い方だ。澄ましたいつもの無表情で言って、よく似た顔をしていながら背は随分と小さいの頭を撫でる。

 青峰と黄瀬では確かに黄瀬の方が成績は良い。だがそれはあくまで、欠点の数が一つ二つ青峰の方が多いというレベルの話で、成績がさほど悪くない黒子からしてみれば、欠点をとっている時点で二人の成績は似たようなものだった。

 中学時代、仲良くつきあっていた頃、青峰はよくをブラコンだと罵った。元々彼女がバスケ部に出入りし、カウンセラー化したのは、兄にくっついて試合を見に来たり、弁当をもってきたりしていたからだ。

 双子と言うだけあり、兄妹仲良しで、幼い頃から何をするにも一緒だったという。結果的に高校も同じ所に行っているのだから、今でも変わらず仲が良いのだ。

 それに嫉妬を覚えたことは一度や二度ではない。






「あまり夜遅くなるようでしたら、電話してくださいね。迎えに行きますから。」

「俺が送ってく、」







 青峰は黒子の心配に素っ気ないながらもそう返す。一瞬の表情が凍って、慌てた様子で彼女は口を開いた





「え、でも、良いですよ。悪いですし。」

「だめっすよ。っち、突然倒れる時もあるんっすから。」




 中学時代、何度か彼女が喘息の発作を起こして倒れるのを見ている。黒子もそれを承知のため、彼女が一人で動いて何かあると困るのでいつも一緒にいるという部分も大きかった。





「じゃあ青峰くん、お願いしますね。変なことしたら通報しますよ。」

「まるで俺を犯罪者みたいに言うんじゃねぇ!」

「僕、これだけもらってきますね。」




 の書いた、誠凛高校の“山”を張った問題表を黒子は手に取る。




「全部覚えるんですよー」

「わかっていますよ。」





 が黒子に手を振るのを見ながら、兄妹ってうまく出来てるんだなと青峰はため息をついた。





双月