決勝リーグで桐皇に負けたのは、皆がショックだっただろうと思う。それでも回復には時間はかかったが、悔しさをバネにする姿を見て、は心からほっとした。そして同時に、彼らのその強さを誇らしく思った。
はバスケットボールを持って、ぽんぽんとつく。それをのびをするように打ち出す。
「あ、外れました。」
ごんごんっと枠に音を立てて当たって、ころころと転がる。
最近火神に教えてもらっていたため、だいぶ入るようになってはいたのだが、どうやら今日は自分も動揺しているらしい。
「見りゃわかんだろ。」
呆れたような声が後ろから振りかかって、振り向くと青峰がそこにいた。彼に呼び出され、彼の高校の授業が終わるのを待っていたのだ。
決勝リーグ誠凛が桐皇に負けてから、久しぶりに会う。
「どうだったよ?見たんだろ。誠凛と桐皇の試合。」
「テツと火神くんの、完敗でしたね。でも良い刺激になったと思います。」
火神も兄の黒子も時間はかかったが、またバスケに向き合い、努力をしている。負けたことは諦めとはまた別の話だ。諦めない限り、ゲームというのはチャンスがある。そういう風に、は思うことにしていた。
だからもまた諦めずに信じていようと思った。
「わたしは火神くんとテツのバスケが好きですから。」
火神を選んだ兄の目に間違いはないと思う。彼はタフだ。すぐに気持ちを前に持って行こうとしたと同時に、兄のことを心配しながらも、自分が出来る事をしようとした。兄もそれに引きずられるように前を向き、自分と向き合い、戦うことを選んだ。
今度は自分自身で。
兄が頼ろうとしていた光。兄は自分を影だと思っていた。でも兄もまた光になろうとしている。今度こそ、ひとりでキセキの世代に負けないように。
「黄瀬くんも楽しそうで、嬉しいです。」
一度誠凛に負けたせいか、黄瀬もまた練習に打ち込むようになった。帝光時代とは打って変わって仲間を大切にし、仲間とともに他のキセキの世代を打ち倒そうとしている。そんな彼もまたバスケをするのが楽しくてたまらなくなったようだった。
よく携帯でお互いの近況を報告し合うが、彼は魅力的な選手だと心から思う。
「黄瀬におまえ、言ってたよな。」
青峰が鋭い目でを見て、思いをはせるように言う。
『っちってさぁ。本当は俺らのことどう思ってたんっすか?』
勉強を教えてもらっていた時、黄瀬はに尋ねた。
カウンセリングというのは基本的に否定はしないという。だからこそ、キセキの世代それぞれについて、また彼らのバスケについて何か思っていても、言わない。
『聞くなら、二度とわたしにカウンセリングしてもらおうと思わないでくださいね』
黄瀬には困ったような顔でそう返していた。
「なぁ、勝った褒美に聞かせろよ。おまえ、俺らのこと、どう思ってたんだよ。もう良いからさ。」
には女を求めているが、すでにカウンセラーとしての役割を、青峰は求めるつもりはない。同じ高校のバスケ部でもないので、なおさらだ。だからこそ、彼女の本当の心に近づきたくて、自分が傷つくとわかっていながら、青峰は問う。
はボールを持ったまま少し悲しそうに目尻を下げて、大きな息を吐いた。
本心が知りたい