黒子とテツヤの双子兄妹は目の前に座っている火神、青峰、そして黄瀬のやった模擬問題を見て、目をぱちくりさせる。





「何が悲しくてこいつらと勉強しなきゃなんねぇんだよ!」

「そうっスよ!しばらく顔見たくないのに!」






 火神と黄瀬がそろって青峰を指さし、に訴える。





「はぁ?負け犬が吠え面かいてんじゃねぇ。」





 青峰は嘲ってから、机の上にその長い足を乗せた。だが黒子は目尻を下げ、三人に哀れみの視線を遠慮なく向ける。




「おいおい、物言いたげだなぁ。テツ。」

「いえ、勉強という点では完全に負け犬ですよね。全員。」





 黒子は歯に衣着せぬ物言いではっきりと言い切った。

 バスケならともかく、勉強という観点で言うなら今の勝者は完全にである。黒子はじっと青峰が解いた数学の問題を見て、ふっとため息をつく。

 青峰だけではなく、全員が数学はほぼゼロだ。





「正直酷い成績です。目も当てられないくらい。」

「真剣に言われなくてもわかってらぁ!」





 青峰はばんっと机を叩いて、黒子に反論する。

 スポーツ推薦で入っているので勉強は期待されていないだろうが、それにしても進級できないのはいただけない。それに赤点をとると基本的に補講の方に絶対参加で部活停止にされてしまうので、試合日に重なればレギュラーの問題ではない。

 勝つ、勝たない以前の問題だ。





「なんて言うか、すごいですね。もう少し当たらないものですか?」





 黒子は、その感情が表にあまり出ない瞳を瞬いて、軽く首を傾げる。

 一応一度自分の高校でやった小テストをさせても、3人とも一桁だ。せめて選択問題だけでももう少し当たらないものかと思うが、本当に面白いくらいにあたらない。





「仕方ないですよ。選択問題も仮に3問、選択肢が3個だったとしても、確立は9分の4。半分もないですから。」





 が数学的な解説を加える。兄は目を何度か瞬いてから、首を傾げた。





「それって、要するに一問もわかる可能性は入っていない気がするんですけど。」

「この成績で、わかっていると思うんですか?」

「すいません。思えません。」





 全員がドングリの背比べ。100点満点一桁のすばらしい成績を収めているのだ。目標も低く、100番以内とか、成績を上げるとかではなく、欠点を免れることが課題だ。普通なら考えられないレベルの話である。

 それも三人とも全員だ。





「なんか黒子っちとっちが賢く見えるっす」






 会話の意味がよくわからなかったのか、黄瀬は目をこすりながら首を傾げる。





「少なくとも俺らよりは賢いんじゃねぇか?」






 火神は特にと黒子の成績を明確に知っているため、少なくとも成績で敵わないことはよくわかっている。ましてやに関しては成績優秀で表彰されているところまで見た。




「今回は前回と同じく、笠松さん、今吉さん、そして続きまして日向先輩にひよこで買収されましたので、善処します。」

「またかよ!」





 青峰がの宣言に突っ込みを入れる。





「貴方、いつか部屋がひよこで埋め尽くされますよ。一体今何匹いるんですか?」

「33匹です。」

「増えてんじゃん!」





 青峰は突っ込みを入れる。

 この間聞いた時は25匹。中間テスト後、今吉と笠松からもらった分を入れて27匹になっていたはずだ。だが、大幅に増えている。それは彼女が相談に乗った結果でもあるのだろうが、それにしても一ヶ月ほどでそんなに増えるのはどうなのだろうか。




「ひとまず、わたしが山を張ったこのプリントを全部解けるようにしてもらいます。覚えても良いですから。」







 主要教科のだいたいでそうなところはすでに各学校山を張ってある。後は記憶するか、山をとけるようにするだけ。ちなみにこの間会った時に桃井にも渡してきた。前回の実力テストにおいて、これで桃井は平均90という高得点をたたき出したらしい。

 彼女は言われた範囲はすべて覚えるくらいの気合いはあるので、山があったとしても本人のやる気にもよるのだが。




「えええええ、一教科4枚くらいあるっすよ〜そんなの無理無理−。」




 黄瀬が渡されたプリンをと見て悲鳴を上げる。




「こ、こんな数学出来ねぇよ!もっと簡単なのねぇのか?!」




 火神は数学の内容を確認して、悲鳴のように言った。だがこれでも彼ら向けに問題は絞ってある簡単なのものなのにそれば本末転倒だ。彼にあわせた簡単な問題期末テストに出てこない。





「くっそ、おい、これ1枚じゃ駄目なのかよ。」




 青峰も嫌なのか、の服の袖を引っ張る。




「みなさん、来年も一年生が良いんですね。」




 がにっこりと笑えば、三人とも黙り込むことしか出来なかった。







月が遠い