「なぁ、やっても良い?」
青峰が顔を間近に近づけてに言う。
まるでちょっと遊びに行こうとでも言う彼が恥ずかしくて、なんと答えて良いのかわからず、は目尻を下げて俯く。
今までは無理矢理、ということが多かったため拒否権がなかったし、唯々諾々従うしかなかったが、和解した今、彼はそういうことはもうするつもりはないらしい。お互いの気持ちを確認し合って、身体だけでも繋ぎ止める必要がなくなったからだろう。
「嫌なのかよ。」
少し不安そうな声につられるように彼を見ると、青みがかった黒の瞳が少し困惑したように揺れていた。
「・・・あ、えっと、」
「なぁ、」
膝の上で握りしめた手を、青峰の大きな手が握る。
だがそれを見た途端に、の身体は勝手にびくりと震えた。無理矢理押さえつけられ、抵抗も許されぬまま犯された記憶は奥深くに残っている。それを拒ますように自分の手にもう一方の手を重ねたが、震えが伝わったのだろう、
「わりぃ、焦った。」
青峰が不安そうに、それていて離れていくのに怯えるように、の身体を引き寄せ、強く抱きしめる。大きな手が背中を撫でる感触に最初は恐怖を覚えたが、何度か撫でられているうちに心に余裕が生まれ、身体の力を抜く。
「あ、青峰くんは、したい、です、よね。」
は恐怖を溶かすように彼の温もりに身をゆだねながら、確認するように尋ねる。
「当たり前じゃね?俺男だし、おまえのこと、好きだし。俺、セックス好きだし。」
性的なことに目覚めるのも比較的早かったが、を好きになってやっぱり彼女を想像することが多くなった。巨乳が好きなのも、どうしてもを無意識に想像するからかもしれない。幼い顔だちで胸が大きいモデルを好むのも、そこにあるのかもしれない。
「でもさ、無理はすんなよ。やりてぇけど、待つから。」
青峰はが躊躇うのも理解していた。
自分でも本能に忠実な方だと思っているし、彼女を手に入れてからは大切にしたかったから我慢していた。とはいえその虚勢を、彼女に別れを告げられた時に破ってしまった。大切にしていた、大切にしたかったのに、酷いやり方で奪ってしまった。
だから、重いが通じ合った今は、大切にしたい。
「ご、ごめんなさい。」
「ばぁか、謝るのは俺の方だろ。」
震えが止まるように、青峰はの背中を撫でる。少しだけ落ち着いたのか、彼女も自然な形で身をゆだねてきた。
「あー、やべっ。」
彼女の胸は大きい。小柄で顔立ちが幼いし、着やせする方のため小さく見せているが、実際にはGカップだ。抱きしめればそのふくよかな胸がダイレクトに当たる。
押し倒したい、でも我慢しなければならない。
彼女の手前待つなんて言ってみたが、これは本当に自分は待てるのだろうかと青峰は自問自答した。正直今でも張り詰めてきた自分が痛い。抱きたい。だがここで無理矢理押し倒しては、前と同じだ。はそれを望んでいないし、怖がっている。
冷静になれと頭で繰り返すが、腕の中にいるは柔らかい。触れたい。
「・・・わ、わたし、青峰くんのこと、好きです。」
は小さな手を青峰の背中に回して、背中の服をぎゅっと握り、震える声で言う。
「知ってる。」
「だ、だから、良いですよ。」
「は?」
青峰は一瞬彼女が言ったことがわからず、眼を丸くし、彼女を見る。恥ずかしいのか、彼女は丸い瞳を伏せて青峰の顔を見ることはなかったが、伏せられた睫が頬に影を作っている。
「だ、だから、し、しま、」
しましょう、と最後まで聞くことは出来なかった。噛みつくように彼女の唇に自分のそれを重ねる。
もうとっくに自分が張り詰めているのはわかるし、あんな可愛らしいことを言われて、我慢なんて出来なかった。
「あ、ぁお、み、」
「大輝って呼べ、」
口づけの合間に短く言って、彼女の身体を押し倒す。は突然のことにびっくりしたようだが、それでも拒みはしなかった。服を半ばはぐように脱がせていく。ブラジャーを外すと大きな胸があふれて、底に青峰は吸い付くように唇を寄せた。
「あ、あの、」
恥ずかしいのか、は胸を隠そうと自分の腕で胸を覆う。だが彼女の胸はそんなことで隠せるようなレベルではない。
「せっかく胸でけぇんだから、あんま隠すなよ。」
日頃は一つ小さいサイズのブラジャーをつけ、胸を押さえつけている。そのため表から見ると、彼女の胸はそれほど大きく見えない。
「だ、だって、なんか、牛みたい。」
「はぁ?しっかり張ってんじゃん。垂れ下がってないし、」
「昔、灰崎君が、」
は俯いて目尻を下げる。
―――――――――――――おまえ、結構でけぇよな。このまま行くと牛みたいになるんじゃね?
軽薄に笑いながら、灰崎は昔そう言っていたが、あれからの胸は大きくなるばかりだった。中学一年の時に言われたそれは、にとってそれなりにショックで、人と比べてみるとやはり自分の胸は大きかったので、結果的に大きな胸は一番のコンプレックスになった。
「はぁ?良いじゃん。でけぇ胸。俺、好みだぜ。」
青峰はにいっと笑って、の胸をもむ。気持ちよいとかはないが、他人にもまれるのは変な感じがして、は少し眉を寄せた。
「そんなつまんねぇこと気にすんなよ。」
青峰はの首筋に噛みつくように口づけてから、太ももへと手を這わせる。足を開かせるとが少し身体を震わせたため、宥めるようにこめかみに口づける。
「あー、おまえ抱く時本当に余裕ねぇわ。」
正直格好良く、嫌ならやめてやると言いたいところが、張り詰めてしまっている自分は、どう感じても止められそうにないし、彼女が目の前にいるのに、何もしないなんてことは、触れてしまった今は出来そうになかった。
元々我慢出来る性格でもない。
「んっ、うぅ、そこは、あんまり、」
足を大きく開かせ、彼女の太ももをたどり、秘部へと触れると、彼女は泣きそうな顔で首を横に振った。自分でも見たことのないであろうその場所を、他人に晒すのはやはり恥ずかしいらしい。耳まで真っ赤にしている彼女を見るのは初めてで、何やら新鮮だった。
今まで抱かれている時は青峰も彼女の抵抗を抑え込むのにやっとで、何の余裕もなかったし、抱かれながらもいつも彼女は悲しそうな顔をしていて、こんな風に彼女の感じているところや、感情を聞くことなどなかったし、なかなか彼女の表情を窺うこともしなかった。
ただ自分が余裕なく彼女の身体に溺れていただけ。
「ここ解さなきゃ、入らねぇって」
「うぅ、」
直接言うと、は顔を青峰からそらした。
「なんだよ、恥ずかしいのか?」
「だ、だって、そりゃ、」
顔を見るのも恥ずかしいのか、右手で顔を隠してしまう。青峰は赤く染まった頬に手を当てて、こつんと彼女の額に自分のそれを合わせ、間近で彼女の瞳を見る。丸い、ドングリみたいな形をした目は、少し戸惑うように青峰を見上げた。
その瞳は少し潤んでいる。
「あー、やっべぇ、また我慢できねぇかも。腰に来るわぁ。」
「え?」
心底わかりませんと言った、純粋な丸い瞳に、自分が映っている。
はだけた格好をしていても彼女はこんなに綺麗だというのに、自分はすでに欲にまみれた顔をしていて、本能に我ながら忠実だなと笑ってしまう。
でも彼女に好きと言ってもらえるなら、何だって良い。
「俺の愛は重いぜ、覚悟しとけよ。」
きっと抱いても抱いても足らなくなるだろう。愛しくてたまらないのだ。
それでも今はもう、彼女が心の底から自分を拒むことはないと知っているから、青峰は安心して彼女を抱くことが出来た。
ちゃんと向き合って