「痛い、痛っ、やめてっ、やっ!」

「手間をかけさせるなよ。」



 の手が服から離れた途端に、赤司の手が服にかかる。彼の手の爪にはの血がついていて、真っ赤だった。首筋も酷く痛んで、服をはいでいく男が誰なのかもうわからない。

 ただの心に浮かぶのはいっぱいの恐怖だ。



「脱げ、」



 冷たい目で赤司が命じる。従いたくても恐怖に震えるの手は何も掴むことが出来ず、足は震えて下着を脱ぐようなことは出来ない。

 赤司がの首筋に顔を埋め、傷口をぺろりとなめる。ただそれだけだが、酷くしみて痛い。なのに、彼はそこにまだ舌を押し込むようにする。早くしないともっと痛くされるとわかっていても、の手はちっとも動かない。



「痛い、ふっ、征く、やっ、やだ、怖い、こわっ、」

「言うことを聞けば、痛くも怖くもしない。嫌なら僕の言うことを聞くんだ。」



 諭すように、耳元で赤司の低い声が無情に響く。彼は彼の命令に従って、が自主的に服を脱ぐことを望んでいるのだろう。

 だが、どうしても手が動かない。の中にあった、大切なものが壊れていく。



「やだぁあ・・・、ひっ、もぅ、やだっ、」




 はぼろぼろと涙を手で拭う。だが、拭っても拭ってもあふれてくる。声を上げて泣きたくて、どうしたらよいのかわからなくて、彼を留める方法も知らず、ただ泣くことしか出来ない。だが、彼は容赦なくの首にまた歯を立てた。



「痛っっ、痛い、痛いよ!ひぅっ、」

「痛いのが嫌なら従え、服を脱げと言っているんだ。」

「うぅ、いったっ、痛っ、えぅ、」



 はかたかたと震えながら、ボタンのちぎれてしまった服に手をかける。だが震えているため、うまく脱げない。ただぽたぽたと涙がこぼれ落ちていく。

 いつまでたっても進まないの動きにじれたのか、赤司は遠慮なくの足を開かせる。座ったままの体勢だったは自分でも見える場所をまさぐられることに怖くて赤司の肩を押したが、途端に彼の舌が首筋の傷跡をなぞり、また噛まれるのかと怖くて、かたかたと震える手を彼の肩に乗せることしかできなかった。 

 無遠慮に彼の手がの秘部にふれ、半ば無理矢理膣の中へとその指を滑り込ませる。まだ濡れてすらもいなかったはひきつる感覚に身体が硬直するのを感じた。



「きついな。誰にも触れさせなかったらしい。」



 赤司は何故か安堵したようにのそこから指を抜いて、陰核をぐっと指で押した。あまり直接的な刺激になれていないの身体は大きく跳ね上がる。

 初めて抱かれてから、彼は優しかった。

 慣れていないが怖がらないようにゆっくり事を進めてくれたし、いつも十分に濡らしてから指を入れてくれたから、初めから数回の時を除いてあまり痛みを感じたことはなかった。いつも与えられる熱でおかしくなりそうな、それでいて無理に押し上げられる感覚が、は嫌いじゃなかった。

 なのに今は、無理矢理に身体を開かれて、濡らされることなく指を入れられ、無理矢理ぐりぐりといじられて、痛みしか感じない。

 は渾身の力を振り絞って、拒絶するように赤司の肩を思いっきり押した。




「痛い、痛い、もうやっ、やだっ!もうやだ!こ、こんなのやだ!征くん、怖い!」



 今までやり方で身体を求められたことはない。こんな風に暴力を受けたことはない。は自分の身体を守るように自分の手で抱いて、小さく身体を丸める。

 赤司は少し驚いた顔をしたが、すぐに冷たい、それでいて今度は泣きそうな悲しい瞳でを睥睨する。



が悪いんだ。僕から離れようとするから。」

「ち、違う!わた、しは、」



 ちゃんと戻ってきた、いろいろな所を見て、やっぱり彼の傍が良いと戻ってきたのだ。だから話を聞いて欲しくて、は彼の方を見上げる。だが、どこまでも彼の目は冷たく、ベッドの端にいるの手を無理矢理掴むと、中央へと引っ張り出した。



「違わない。従わない奴には、お仕置きが必要だろう。」



 を仰向けに倒し、赤司はの足の間に自分の身体を滑り込ませ、無理矢理大きく足を開かせる。部屋には電気がついているし、足の間の大事なところを見られることが恥ずかしくて、は身を起こして逃れようとするが、それを赤司は首筋の傷に爪を食い込ませることで防いだ。



「痛い、いっ、」

「ちゃんと足を開け、そしたら痛くはしない。ちゃんと気持ちよくしてやる。」



 赤司はにできる限り優しく声をかけたが、には地獄への入り口のようにしか見えなかったのだろう、酷く怯えきった表情で赤司を見上げていた。

 は赤司の舌が自分のあそこを這うのを感じて、びくびくと身体を震わせ、同時にぴくんと膣の入り口を震わせた。



「やめてっ、征く、やめて、うぅ、うっ、」



 は身を起こして抵抗することも出来ず、ただ自分の顔を覆うように手で涙を拭きながら、声を抑えようと指を噛んだ。

 熱い舌が自分の陰核をいじるために、背筋を快楽が通っていく。無理矢理されているのにこんな風に身体が反応するのが恥ずかしくて、痛みも酷くて、ただは泣いていることしか出来ない。何故こんなことになったんだろう。

 ちゃんと気持ちを伝えて、一緒にいようと思ったはずなのに、言葉すらもすべて痛みに奪われていく。



「うぅ、あ、あ、っ、ぅう、」



 断続的に声を上げるが、その声は徐々に空虚になっていく。

 この身体に触れているのは、一体誰なのだろうか、あまりにいつもと違う激しい動きに、はついて行けず、ただ徐々に下腹部にとろけるような熱とそれに伴う痛みが集まっていく。ずるりと指が入ってきた時、すでに中まで濡れていて痛くなかった。

 いつもとは全く違う感覚、痛み、激しさに頭がどんどん混乱して、ちゃんと考えることが出来ない。壊れていく。



、自分で入れろ、」



 赤司が身をお越し、ベッドの上に足を投げ出して座る。冷たい命令にはのろのろと顔を上げたが、手が震えてうまく身体を起こすことが出来ない。



「早くしろ。萎えるだろう。」



 ぐいっと赤司の大きな手がを無理矢理赤司の方へと引っ張った。自分の体重のせいで肩が外れそうなほど痛かったが、はのろのろと彼の身体をまたぐ。

 彼の手に支えられている彼のものは凶悪な程の自己主張をしていて、こんなことをさせられたのは初めてで、彼の肩に手を乗せても、なかなかどうすれば良いかわからなかった。だが彼の片手がの腰を掴み、標準を合わせていく。



「腰を下ろせ、」




 ひたりと彼の物が膣の入り口に当たった途端、彼は言った。間近にある赤と黄色の瞳は拒否を許しはしない。膝が震えて、腰を沈めるのが怖くてたまらない。入れてもらったことはあるが、自分で入れるのは初めてだった。

 彼はの反応を窺うようにしていたが、向き合っているので目の前にあったの胸をぐっと掴み、突起に思い切り噛みついた。




「いっ、痛っ、いたい、いたい、」

「痛いのが嫌なら、早くしろ、」

「うぅ、」





 は唸って、それでもあまりの引っ張られる胸の痛みに耐えかねて、ゆっくりと彼の物を自分に沈めようとする。だが、身体が固まっているせいかうまく入らず、入り口に食い込みすらもしない。無理に進めようとすると痛みが走って、ますます入り口は小さくなる。

 どうしたらよいかわからず、胸や首の痛みばかりが主張して、ますます身体がきゅっと締まる。



、」



 諭すように優しい声が、名前を呼ぶ。それがいつもの彼のようで、一瞬身体が緩んだ。それを予想していたように、彼の手が奥へと自分を無理矢理ねじ込んだ。



「っ、あぁああ!」



 お腹から突き上げられる、いつもと違う感覚に背中を反らせる。



「っ、は、悪い子だな。」



 小さな笑みを含んだ声音で、彼はに囁く。

 だがもう何もかもが限界で、はもう何も見たくなくて、涙でふさがれていく視界を閉じながら、自分に入り込んだ、誰かのものが自分をえぐる感覚に涙をこぼした。





Keine Grenze 境界がない