フガクは息子夫婦とその子供たちに、呆然とする。





「じーじ聞いてんの?」




 むっとした顔で二番目の孫である6歳の因幡が、頬を膨らませてみせる。




「あ、あぁ、聞いている。」




 フガクは目の前の状況が考えられず、目をぱちくりさせて何も言えなかった。




「いーや!これはあかるの!!」

「これはやはたの!!」




 3番目の孫にして唯一の女の子である3歳の阿加流と、4番目の子供である八幡は出されたおはぎを争って喧嘩をしている。




「本当に、子供だよな。」




 子供らしからぬ悟ったように言うのは一人目の孫の稜智である。彼はもう12歳、うるさい弟妹たちの成果、随分と大人びており、いろいろ悟っているのか、止めようとはしない。ただ傍観に徹している。





「でさぁ、アカデミーで、」




 強烈な弟妹の喧嘩をものともせず、フガクに向かって話し続ける因幡に驚きながらも、あまりに想像もしたことのない家族の風景にフガクの方がたじたじだった。




「・・・本当におまえらうるさいな。」




 耐えられなくなってきたのか、フガクの息子、イタチは眉間に皺を寄せて渋い顔で子供たちを見やる。




「えー、うるさいのは八幡と阿加流だけだよー。なんでこっち見ながらいうのさぁ。」

「おまえは口数が多すぎる。」

「そんなことないよ。それにー父さんだってぼくが黙ってたらびっくりするでしょ?」

「たまには黙ってくれ。お願いだから、」

「無理無理。ぼく話してないと落ち着かないもん。」




 イタチが諫めても、さらりと因幡は言って、またフガクに話を続ける。




「・・・父上、駄目だって。こいつはしゃべってないと死ぬマグロみたいな奴だから。」





 稜智はすでに弟を止めるのを諦めているのか、逆にイタチを慰めるような言葉を口にする。イタチは額を押さえたが、言葉が見つからなかったのか、かわりに今度は下の息子と娘に向けて口を開く。





「おまえらもいい加減にしろ。おはぎは母上が十分に作ってくれてる。」



 並んでいるのはミコトが作ったおはぎだが、子供たちが食べても十分な量がある。一つを争って喧嘩をするのはまさにナンセンスだ。おかわり分も十分にある。




「だって、そっちのほうがおおきい!!」

「おおきい!!」




 阿加流に続けて八幡も強く主張する。




「・・・大きいの?」




 フガクの息子の妻となったが、のんびりした口調で言って、おはぎを見やる。イタチも改めて娘たちが争っているおはぎを見るが、それが大きいようには見えない。というかそんなに大きさが変わらないし、二つ目を食べれば一緒だ。しかし彼らにとっては重要なのだろう。またおはぎを前に喧嘩を始める。




「子供は元気だってばよ。」





 何故か家族と化し、一緒に来ているナルトがのんびりと子供たちを見守る。の方も首を傾げていたが、あまりに無益なこの喧嘩に関して別に何も感じていないのか、おはぎを嬉しそうに食べるだけだった。




「おまえら!がたがたうるさい!!」





 キレてうるさい阿加流と八幡を怒鳴りつけたのは、フガクの次男であるサスケだった。甥と姪の首根っこをひっつかみ、無理矢理引き離す。





「さすにーうるさい!」

「うるさいのはおまえらだ!!いい加減にしろ!!」





 サスケが一喝して、子供たちを止める。だがそんな簡単に納得する子供たちではなく、まだおはぎのそちらが大きいだのなんだの、もめていた。






ちゃん、5人目は順調なの?」





 ミコトがうるささを遮るように少し大きな声で尋ねる。

 は今、五人目を妊娠中だ。これ以上増えると思うと頭痛が増すが、それでもやはり孫が増えるというのは嬉しい。精一杯義理の娘を支えるつもりでいた。




「うん。今のところは大丈夫だよ。羽宮と月宮はよく手伝ってくれるしね。」





 は稜智と因幡を見て笑う。稜智は小さく頷くだけだったが、怒濤のごとくフガクに話していた因幡ははたっと会話を止め、の方へと歩み寄って抱きついた。




「当たり前じゃん。だって母さんぼさっとしてるしさ!こけたら困るし−。」

「おいおい、因幡。サスケより強い母ちゃんだってばよ。」

「そうだねーナルトも負けたもんね。」

「・・・それは言うなってばよ。」





 ナルトは目尻を下げて因幡に言う。彼はケラケラと笑って、母親に抱きつく力を強めた。




「本当に仲が良いな。」





 フガクはそう言うしかなかった。

 反逆など様々な事があり、反目し合い、フガクは息子たちとどうしてもなじむことはなかった。厳しくうちは一族であることを求めるばかり、彼ら個人を忘れていたようにすら思う。そのため今でも、息子たちがフガクに直接話しかけることはほとんどない。

 だが、炎一族の婿となった息子は、そしてその妻であるは、驚くほどにうるさいけれど温かい家族を築いている。彼女はフガクとイタチの関係にも上手に気を配りながら、いつも孫を連れてやってくる。

 大きな一族に産まれながら両親の愛情いっぱいに育てられた彼女は今、温かい家庭をイタチに与えた。





「ふええええ!さすにーにがいじめる!!」

「さすにーにこわい!!」





 に抱きつく因幡に割り込むように、阿加流と八幡もに抱きつく。




「喧嘩ばかりするからだよ。」





 のんびりとした口調では息子たちを抱き留める。それを見守るフガクの息子たちの目は、酷く優しかった。


うちはのじーじと家族