は緊張とともに目の前の女性たちを見つめる。
「えっとねぇ、右からサクラと、いのとは会ったんだっけ?その隣がヒナタで、あと、テンテンだよ。紅さんは昔、ヒナタの先生だったんだよ。」
はにっこりと柔らかく笑って、自分の友人たちを紹介する。
「い、です、よろしくお願いします。」
あまり女友達もいなかったは緊張で顔を引きつらせながら頭を下げた。
霧隠れの里ではいつも皆から遠巻きにされてばかりで、ずっと一人だったから、こうして自己紹介をする機会もなかった、自己紹介をするまでもなくを誰もが知っていたからだ。不作法なことをしていないかと気になったが、五人とも一瞬の顔を凝視すると、目じりを下げた。
「可哀想に、まさかナルトと婚約だなんて、」
サクラは心底同情するように、目じりを下げて息を吐いた。
「え?ナルトはそこそこ良い線だと思うけど?昔と違ってさ。」
いのは一応ナルトをフォローする。だが、女性関係のだらしなさをいつも聞いていたサクラは到底そうは思えない。それはヒナタも同じだったらしく、少し困った顔で小首を傾げて見せた。
「ナルト君は、格好良いと思うよ…、でも、ね。」
「ヒナタもはっきり言えばいいのに。微妙って」
テンテンは呆れた様子で言って、腰に手を当てる。
「確かにね。最近悪い噂しか聞かなかったものね。」
紅はすました顔でそう言って苦笑してから、に手をさしのべる。
「木の葉で何か困ったことがあったらなんでも言ってね。」
「え、あ、はい。」
はなんと答えて良いか分からないが、紅の手に自分を重ねた。彼女の手は予想外に硬くて、温かい。こわごわ握り返すと、彼女は力強く握り返してくれた。
「今のところは家でお手伝いをしてくれているんだ。時間もあると思うから、木の葉に知り合いもいないから、何かあったら誘ってあげてね。」
はいつも通りふわりと笑って、友人たちに言う。
「そういえばちゃん、五人目わかったんだって?おめでとう。」
「ありがとうヒナタ。」
「いやはや、本当にすごいわね。両親不妊だったって何かの冗談なんじゃないの?」
テンテンは半ばあきれ顔で首を振った。
の父が無精子症で、両親はが生まれた後も不妊治療を続けたが全く実らず、両一族が続けた近親婚による弊害として、が生まれたことすらも奇跡だと言われていた。ところが娘のは体が弱かったため妊娠期間はかなり苦しんだが、立て続けに4人の子供を産んだ。そしてこれで五人目の妊娠だ。
不妊のふの字もない。
炎一族は一粒種のが体が弱かったため、跡取りが出来るのかとかなり気をもんでいたらしいが、今となっては同級生の誰もが驚く子だくさん一家で、跡取り問題なんて言葉は露ほどもない。
夫婦で持っている三つの一族の血筋をそれぞれの家として続けられるほど子だくさんだった。
「うん。わたし、兄弟いなかったから、兄弟欲しかったんだけど、最近ちょっとうるさいかも。」
は一人っ子で寂しい思いをしたため子供に兄弟を作ってやりたかった訳だが、最近は少し作りすぎたかと首を傾げるときがある。のんびりしているですらも首を傾げる現状なのだから、真面目な義弟のサスケが頭を悩ませていることは間違いなかった。
「女の子ならうるさくないかなとか言ってたんだけど、阿加流と下の八幡の喧嘩が少し騒がしいかな。」
「、あれを騒がしいって表現するあんたもどうかと思うわよ。あれをうるさいって言うのよ。」
サクラがへきへきした様子で手をひらひらさせた。
親友の家であるためサクラもよくの屋敷を訪れるが、長女の阿加流と三男の八幡は年子で、この二人の喧嘩は玩具の取り合いから始まり、食事の大きさ、兄や祖父、父の膝の上の取り合いまで様々なくだらないものを張り合う。
しかも甲高い声で罵りあい、たたき合うのだからうるさいなんて物では無い。
イタチはに似たのんびりしてよく笑う女の子が欲しかったようだが、性格の問題だろう。阿加流は目鼻立ちが整った誰が見ても美しい顔立ちをしていたが、あまりすっきり笑わず、頭の回転も速く、ぶすっとしている。
黙っていれば美人なのにと皆言わぬ日はない。
「イタチも大変ね、うちなんて男の子一人でも大変なのに。」
紅は亡きアスマとの間に一人息子がいる。彼はの長男・稜智の2つ上で、今年中忍試験を受ける予定だ。稜智とも年が近いので仲が良い。
「まぁでも、イタチ忙しいから、サスケが面倒見てること多いよ。」
は思わず穏やかに言う。
「…ちょっとぐらい苦労しても良いと思うわよ。当然の報いでしょ。」
「サクラ、あんた根に持ってるのね。」
「うるさいわね。いの。」
サクラは辛辣にいのに言って、そっぽを向いた。
「姉、その、わたしも一緒に行っちゃって良いの?」
は不安になって、思わずの着物の袖を引っ張る。
今日、は子供たちをイタチとサスケに任せて女子会だと言っていた。少なくとも性別的にが女なのは間違いないが、親しい人ばかりの中に勝手に入っていっても良いのか。
気にするに手を振ったのは一番年長の紅だった。
「良いのよ。だってナルトと結婚すれば、木の葉の民になるんだし、それにすぐにはムリかも知れないけど、女友達みたいになってくれると嬉しいわ。」
「そうよ。細かいことは気にしないのが木の葉流よ、ね。」
テンテンも大きく頷いてに笑って見せる。
「、礼儀正しいもんね。ちゃんと規則も守るし。朝ナルトをわざわざ我が家から起こしに行ってるくらいだもの。」
は穏やかな笑みを浮かべて大きく頷いた。
「最近遅刻が減ったのはそういうわけなの?」
サクラは心底呆れたという風に目を細くして、腕を組んでみせる。
「ありえないわ。こんな年になって、朝起こして貰うなんて、」
いのは逆にに哀れみの目を向けてからため息をついた。
「良いことだよ。はルールに厳しいし、ナルトとつきあってくれて、本当に助かってるんだよ。」
「ちゃん、隊長として任務に出ることが多かったから、困ってたものね。」
の言葉に、ヒナタが少し目じりを下げて言う。
ナルトは遅刻の常習犯だったが、とつきあうようになり、どんなに朝早くてもが炎一族邸の近くにあるアパートまでたたき起こしに行くようになったのだ。おかげでナルトの遅刻は画期的に減った。いつも起こしに行っていたサスケも絶賛だ。
「子供たちもよく懐いてるし、サスケの負担は画期的に減って喜んでるし、メイ様はお寂しいだろうけれど、うちは良いことづくし。」
ははっきりと断言する。
子供たちの受けは良いし、サスケの苛々も軽減され、かつナルトの規則を守らないところも是正された。正直たちにとって悪いことは何もない。
「ただ、がそんなにうちにいてメリットがあるのかが一番心配…。」
「そ、そんなことないわよ。姉もイタチ兄も優しいし、子供も可愛しい!」
「そう?あの子たちが大丈夫なら、きっとは保母さんになれるわね。」
穏やかで有名なでも下の子供たちにはたまにイラッとすることがある。なのに、は随分と長い間面倒見ても気にならないらしい。その忍耐があれば保母としてやっていっても問題は全くないだろう。
「ナルトに気に入らないところがあったら言うのよ。私ががつんと言って上げるから、」
「サクラのがつんは怖いすぎるわよ…」
サクラの強気の発言に、いのが小さなため息をついたが、サクラはあえてスルーしたようでも別段そのことに言及しない。
「ゆっくり慣れていったら良いわよ。」
戸惑っているに、テンテンがフォローして言う。
それなりに暗黙の了解も不和もある。でもそれも徐々に慣れて、時間を過ごして知って行くものだろう。その間手助けをするのが自分たちの仕事だと、皆が知っていた。
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