サスケは名門うちは一族の次男として生まれた。

 木の葉一の天才、イタチを兄に持ち、あまり両親から期待されず、大きな寂しさの元に育った。

 いつもいつも期待され、望まれた兄。 



 だが彼は父との喧嘩の末、あっさりとうちはを捨てて、担当上忍だったの父、蒼斎の元に駆け込んだ。

 その上長男のくせに家を継がずと結婚してともに、炎一族の宗主となるとまで言い出した。

 うちはは、サスケが継げばいい。

 はっきりと父にそういった兄をサスケは知っている。



 どうして、と思った。





 あれ程に求められ、望まれ、なぜ他家を継ぐなどと言い出す。


 まだうちはの誰もがサスケでも良いと思いながらも、イタチを求めている。

 サスケではなくイタチを。




 今でも変わらず求めている。

 それなのに、どうして。








「サスケ?」







 がくいっとサスケの袖を引っ張る。






「どうしたの?」









 いつもはサスケを無垢な瞳で見上げる。



 サスケの劣等感も何も知らない。

 病弱で、一族の一人娘で、本当の愛情を惜しみなく注ぐ両親と、宗主の一粒種を敬愛する一族のものに大切に慈
しみ、育てられた。



 何の苦労も知らない。



 なのにサスケが負の感情に飲み込まれると必ず決まってそれを感じ取り、現実に連れ戻す。

 独特の感性を持つ。 

 変に鈍いくせに、時に驚くほどの洞察力を見せるのだ。








「あ・・・あぁ。」







 意味のわからない返事をし、サスケは大きく息を吐き出した。

 任務中にぼんやりするなど問題だ。









「あれ?・・・・兄貴は?」








 いつの間にかイタチもいない。









「偵察って言ってたよ。聞いてなかったの?」








 がきょとんと大きな瞳をサスケに向ける。

 全く聞いていなかった。






「サスケ聞いてないの珍しいね。」







 責めるでもなくは本当に驚いているようだ。






「悪かったな。」

「・・・?」







 不機嫌そのままに返すと、はよくわからなかったらしく、首をかしげた。

 木々がサスケとを隠す。


 あまりに二人の距離が近い気がして、サスケは居心地の悪さに少し離れようとした。

 だが、がまたサスケの服をつかむ。









「だめ、」

「は?」

「イタチがここから動いちゃだめって、」









 は必死で言う

 ここにはイタチがはっていった結界がある、

 多少の声や臭いも見つからない。





 けれど外は違うのだ。 




 は自分の実力を正しく理解している。

 下忍の自分たちではすぐに見つかってしまう。








「またイタチか、」









 の手を振り払ってサスケはをにらむ。


 誰もがイタチイタチと自分をないもののように言う。

 一歩踏み出したサスケの足が結界の外に出る。





 瞬間、空気が変わった。



 森の木々が音を立ててざわつく。

 何かが来る。

 遠くから落ち葉を踏む音が聞こえ、サスケは自分がした失態にやっと気づいた。









「白紅、」









 は白い炎の蝶を呼ぶ。

 そして間合いを計るために透先眼を開き、タイミングを計る。








「4・・3・・・・2・・1・・・・・・撃て!」









 の声に蝶の鱗粉があっという間に人の頭ほどに膨張、収縮してビームのような閃光を撃ち出す。


 その先には茂みから出てきた二匹の忍犬。

 それは綺麗に忍犬の足だけを打ち抜き、忍犬が無様に落ち葉の散らばる地面に転がる。






「サスケ!」






 がサスケに手を伸ばす。

 できるだけここを離れてイタチを合流しなくてはならない。







「ちっ、」







 舌打ちをし、サスケはの手を引っ張って木の上に上がる。


 忍達が下に集い始める。

 自分の腕の中で震えるを、サスケはやりきれない思いで見つめた。








( 価値がほかに比べて引けをとっている または低い状態にある )