「目つきの悪い君、ちょっと待ってくれ、」






 階段を下りたところで、突然さっきロック・リーと名乗った少年がサスケを呼び止める。






「げっ!!」








 サクラが嫌そうな顔をする。






「何だ?」

「今ここでボクと勝負しませんか?」







 短くかえしたサスケに、リーが言う。

 そうして階段からではなく、その場から飛び降りてサスケらがいる場所までやってきた。






「今ここで勝負だと・・・?」







 サスケは不機嫌そうに言ったが、さっきけりを止められたのが気に障っていたのだろう。







「いいだろう。」







 サスケはにやりと笑って受け入れた。




























 そのやりとりをぼんやりと階段の上から見つめ、二人はそれぞれ微妙な顔をする。






「どう思う?イタチ。」







 微笑んだ青年は紺色の髪。

 すらりと背は高いが体つきは華奢で、笑顔が酷く幼く、一人の少女を思い出させる。







「サスケは負けると思いますね。」






 黒い瞳で眼下の弟を睨んでいたイタチは、自分の担当上忍であった斎に鼻で笑っていった。




 強い人間には天才型と努力型がいる。


 天才型は生まれたときから血継限界、チャクラの量などであらかた見分けがつく。

 それに対して、努力型に才能はいらない、気力一つあれば良い。

 あの濃い顔のおかっぱ頭はそれだけの努力をしてきた。

 だから、あれ程の自信を持ってうちはに挑んでくる。

 アカデミーを首席で卒業したとはいえ、アカデミーでのスキルと、下忍、中忍として必要とされる力
は全く異なる。



 サスケももうそろそろ知るべきだ。



 確かに“うちは”の名は他国にもとどろいている。

 しかし、サスケ自身はまだ井の中の蛙でしかない。

 彼より強いものが外にはうろうろしている。







「思い知るんじゃないですか?」

「中忍試験を一位通過したイタチが言うんだ。」

「サスケそんな実力はないですよ。」






 イタチはリーに負けるサスケを見ながら興味もなさそうに言う。



 まだまだサスケはうちはの名を名乗っているだけで、その意味をわかっていない。

 そして出る杭は打たれる。

 中忍試験で理解するだろう。








「どっこまで行くかねー」

「さぁ、案外サスケもも・・・ナルト君も本戦に残ったりして。」

「イタチはナルト君を随分評価してるね。」

「サスケよりも、評価してますよ。」






 ナルトは、多くのものが口には出さないが、躯の中に九尾を封印されている。



 イタチが肩代わりする前ののチャクラと同等か、それ以上の莫大なチャクラを持っている。

 使いこなせれば、容易に本戦に残れるだろう。

 使いこなせていれば、だが。







「ところで、うちの可愛い姫宮様は、あまり怖がってないね。」






 斎は自分の娘を見ながら首を傾げる。



 もとから恐がりで育ちの良いだ。



 もっと最初から怯えているかと思っていたが、随分と明るい。

 サスケが負けたのに驚くことなく、出てきたガイに笑いを堪えられなくなって腹を抱えている。

 珍しい。








「知り合いばかりで嬉しくて仕方がないんでしょう。」





 イタチも楽しそうな姿を見て心を和ませる。

 にとって試験官や大人達は知り合いばかりだろう。

 嬉しくてたまらないのだ。






「嬉しい気分がいつまで続くか・・・・、」






 斎は苦笑いをして、眼下の少年少女達を見つめる。

 中忍試験で命を落とすものは後を絶たない。

 信じられるのは友情と、自分の力。

 彼らの未来も命も、自分たちの手にかかっている。
































 リーと一悶着の後、301教室の前に行くと、カカシが待っていた。

 四人全員が来たのを確認しカカシはにっこりと笑う。







「おまえらは自分の意志でここに来た、オレの自慢のチームだ、さあ行ってこい!」 







 わざわざ励ましに来てくれたのだ。

 サスケ、サクラ、ナルト、はそれぞれ顔を見合わせる。






「よし!!行くってばよ!!!」







 ナルトが大声を上げて301教室に入る。

 それに続いて中にはいると、たくさんの人が中にいた。








「す・・すげー・・・・、」

「・・・・、」

「な・・何よ・・・これ・・・・、」

「人ばっかり。」







 教室中人だらけで後ろの方が見えない。







「おー、おまえらも来たのか、」






 アカデミーで同期だったシカマルが、めんどくさそうに肩を叩きながらこちらに来る。

 それと同時にいのがサスケに抱きついた。







「サッスケ君!!」






 ハートがあちこちに飛びそうな調子だ。

 いのとサクラはどちらもサスケにぞっこんで、アカデミー時代からずっと争ってきた。

 二人とも髪の毛が長いのは、サスケが昔髪の長い女の子が好きだと答えたかららしい。




 はいつもサスケのために一生懸命の二人を陰ながら尊敬している。



 ちなみにの髪が長いのは、イタチが『長い方が好きだ。切るな』といったただ一言に由来する。

 あまり動機にふたりと変わるところがないのだが、は気づいていない。








「サスケ君から離れなさい!!」

「うるさいわね。デコリーン。も相変わらず可愛いったら。」







 ぎゅっと今度はサスケから離れて、に抱きつく。




 小柄なはいのの腕にすっぽり入った。

 その横で、チョウジはばりばりとポテトチップスを食べている。







「離れろー!!」






 鬼の形相でサクラが近づいてくるから、の方がびっくりした。







「今年の下忍10名、全員受験ってわけかー。どこまで行けますかね。俺たち。」







 今度は犬を連れた少年がやってくる。



 犬塚キバの班だ。



 日向一族のヒナタと虫使いのシノが一緒だ。

 キバはちなみに犬をいつもつれている。






「キバかよ。」






 ナルトが嫌そうに言う。






「ひっさしぶりだな!おい。元気にしてたか?相変わらずはちっさいな。」

「背が伸びないの。」

「小さくても良いと思うぞ。」







 キバに困ったように言うを見て、シノがフォローする。

 ヒナタはナルトを見ながらうじうじしている。



 ヒナタはナルトのことが好きなのだ。






「ヒナター、」






 はヒナタにきゅっと抱きつく。


 ヒナタもと同じで小柄だから、抱きつきやすい。






ちゃん!」

「えへへ。」






 顔を赤くしてヒナタは叫んだが、結局の身体を抱きかえした。

 久しぶりにあって皆騒ぎ出す。

 だが、後ろにいた青年に注意された。








「静かにした方が良いよ。可愛い顔して騒いで、辺りを見てごらん。」










 銀髪の青年に促されて辺りを見てみると、明らかにたくさんの人がこちらを睨んでいる。










「僕はカブト・・君の後ろの奴らは雨隠れの奴で気が短い。試験前でみんなぴりぴりしてる。どつかれ
る前に注意しとこうと思ってね。」

「うっ・・・、」







 さすがに全員が黙り込む。



 よくよく見てみると全員が全員、自分たちよりも強く見える。

 アカデミーを卒業したばかりの新人である自分たちはすごく弱そうだ。

 十人全員が黙り込むしかなかった。








( 力が人より優れていること 形がなくて 曖昧なもの )