試験官が入ってくると、さすがに意気込んでいた奴らも静かになる。

 第一次試験官は森乃イビキだった。




 も知っている、




 強面で大柄だが朗らかに笑う人でイタチと同じで暗部にいる。

 の父も元々暗部だったから、たまに怖い話をしに身体が弱くて外に出られないの所に来てくれる
優しい人だ。









「いいか、試験官の許可なく対戦や争いはあり得ない。また、許可が出たとしても相手を死に至らしめ
るような行為は許されん。オレ達に逆らうような豚どもは即失格だ。わかったな。」









 ぎろりといつもとは違い、殺気むき出して受験者達を睨みつける。



 はいつものイビキを知っているから別に怖がらなかったが、それぞれ受験者達はひるむ様子を見せ
た。

 からすれば、この試験の試験官は皆知り合いであり、知り合いにすごまれたところでたかがしれて
いる。

 だが、皆は初対面で、試験官達は酷く恐ろしく感じるはずだ。










「では、これから中忍選抜第一の試験を始める。座席番号を受け取りその席に着け、その後に筆記試験
の用紙を配る。」









 ぱらりと一人の試験官が試験用紙を取り出す。









「ペッ・・・ペーパーテストォオオオオオオオオ!!」








 ナルトが絶望的な雄叫びを上げた。



 それもそのはず、ナルトはアカデミーで万年どべの強者である。

 イビキが黒板にルールを書いていく。





 試験は十問各一点。減点方式で行われる。



 受験申し込みで受け付けた班の合計点数で合否が判定する。

 もしも班が四人だった場合は、30点として計算し、小数点は繰り上げ。

 合計点三十点をどれだけ減らさず試験を終われるかをチーム単位できそう。

 カンニングは一回につき持ち点から二点減点。

 試験終了時までに持ち点をすべて失ったもの、及び正解数ゼロだったものの所属する班は班員共々道
連れで不合格。









「ん?ってことは?」









 かかれた条件を見て、は首を傾げる。



 正直、ナルトの点数がいくら悪くてもチーム戦ならば補えると思ったが、どうやら違うらしい。

 ナルトが零点だったら問題外な訳だ。

 サスケとサクラの殺気がナルトに向く。









「試験時間は一時間だ。」







 イビキが受験者達を一瞥し、受験者達が息をのむ。









「よし・・・・始めろ。」








 かけ声に、も問題用紙を見る。



 一問目は暗号文だ。

 はじっと見ながら困った。








「これ、教本で見たことがない。」








 の才能は大方、記憶力である。

 アカデミーで良い成績がとれていたのも、すべて教本を一ページずつ記憶できるという特技からだ。


 だが、この問題は応用で、よくわからない。




 は応用問題になるとさっぱりわからなくなる。

 幸い二問目は、昔イタチが見せてくれた『すべてできれば貴方は科学者!』という本のP.53にか
かれていた問題と同じだった。




 ここにいる多くの人間が、こんな問題わからないだろう。

 おまけに十問目は試験開始後45分経過してから出題されると書いてある。

 謎だらけだ。

 ひとまず一通り書き終わって、三問わからない。





 は大きく息を吐き、そこで気づいた。



 なんで、カンニングで減点二点なんだろう。

 カンニングが駄目なら、減点二点なんて生ぬるいやり方をせずに、即退場にしてしまえばいい。

 なのに、減点はたった二点なのだ。



 情報収集戦としての技量を見るためだとするならば、説明がつく。



 一般の任務で失敗を重ねれば、必ず任務を遂行できない。

 中忍試験だから、一度や二度の失敗は許してやる。

 その失敗の間に学習しろ、ということだ。








「要するに・・・、」








 カンニングはあり、見つからなければ。



 そういうのは、が一番得意だ。

 目にチャクラを集中させる。

 の瞳が紺色から、薄い水色に色を変えた。




 血継限界透先眼。





 この目には、白眼や写輪眼のようにチャクラを見る力はない。

 過去、現実、未来。

 その三つを視ることに特化された目は過去視、千里眼、予知を能力とする。

 千里眼があれば、教室の誰の答案でも映せる。



 筆記試験にはうってつけの能力である。



 全部写し終わって、は一つ伸びをする。

 全問正解だろう。2,3人の答えを視たが、全部同じだった。

 ほっとすると眠くなる。








「確か、10問目って1点だよね。」









 まぁいっか。



 受験生は皆緊張しているが、は知り合いばかりの中で、逆にアカデミーにいたとき以上に安心して
いる。

 は机の上に突っ伏す。

 人の熱気で生ぬるい教室がの眠気を誘う。








「・・・・あれ、斎さんの娘だよな。」

「肝が据わってんなぁ、」

「さっすが、」








 を知るカンニングを監視している中忍達が、感心したように言う。

 サスケはそれを聞きながら、ため息をついた。



 の肝は小さい。



 ただ、自分の睡眠欲に忠実なだけだった。










( 風がやんで波がなくなること 静かになること )