サクラは腰に手を当ててため息をつく。








、寝てたのね。」







 皆の緊張をいざ知らず、十問目の苦悩も夢の中。

 穏やかに寝息を立てている。

 彼女の周りにいた受験生は彼女をなんと思っただろう。








「早く来なさい!!」








 第二試験官みたらしアンコがサクラたちの班を急かす。

 サスケはいらだちも含めて、いささか乱暴にを起こした。




 だが、こういうときに限っては起きない。


 案外図太いのだ。

 多分緊張して気疲れしたのだろう。

 で、知り合いが多くて安心した、そんなところ。









「おんぶか。」









 仕方なく、サスケはを背中におぶったまま二次試験の会場に行く。

 サスケの肩を、の長い紺色の髪がさらりと滑った。



 試験官に連れられてやってきたのは第44演習場。



 別名、死の森である。

 高いフェンスが張り巡らされ、鬱蒼とした森が広がっている。








「怖そー、」








 サクラが青い顔でつぶやく。

 そのとき、がぴくりと動いた。








「んー、うぅ?」








 起きたらしい。

 サスケは彼女がこけないように気をつけながら、背中からおろす。

 ぼんやりとしたは辺りを見回して、首を傾げた。








「アンコだー、」






 ぼやけた声で言う。









「あっは!じゃない、」








 楽しそうにぎゅっとを抱きしめて、アンコは笑う。








「もー、今回は可愛い子が多くていいわぁ。」








 思いっきり抱きしめられ、苦しそうなをそのままに、を抱きしめながら、アンコは同意書を取り
出した。







「これにサインして貰うわよ?」

「何だ?」








 ナルトが不思議そうに尋ねる。

 それにアンコは底抜けに明るい笑顔で答えた。






「こっから先は死人も出るから、それについて同意をとっとかないとね!!私の責任になっちゃうから
さ〜〜」







 あまりのことに皆がひるむ。

 さすがのナルトも少しひいたようだった。






 第二試験はサバイバルだ。



 それぞれのゲートから入り、何でもありで巻物の争奪戦をする。

 天の書と地の書のどちらかをゲートからはいる前に渡し、もう片方をどこかの班から奪って中央の塔
まで班の全員で持ってくること。

 食事は自給自足。

 試験時間は五日間。

 班員を失うと失格。

 途中ギブアップは一切なし。

 また、巻物の中身は塔の中にたどり着くまで決してみないこと。








「最後にアドバイスを一言・・・・しぬな!」








 アンコははっきりそういって、の頭をなで回してから離れた。









「合格したら、イタチと一緒に団子奢ったげるからがんばんなさい。」








 念を押すようにに人差し指を突きつける。

 は大変単純である。








「本当!?」 








 喜んで頷いた。


 あまりの気楽さにあきれながら、サスケとサクラは同意書を受け取り、サインをする。

 とナルトもわいわい騒ぎながらサインした。









「えっと、わたしたちは天の書だー、」

、ぼさっとするな。おまえの目が俺たちの目になる。」

「はぁい。」









 サスケに注意されて、はうなだれ、目を開く。

 透先眼。

 水色の瞳で辺りを見回しながら、ゲートへと案内してくれる中忍についていく。




 ゲートは12番。

 はそれを確認して他の班の動きを見る。








「よっしゃあ!行くぞ!!」









 ナルトが大声で気合いを入れて、全員で中に入る。

 しばらくすると、誰かの悲鳴が聞こえた。









「今の人の悲鳴よね。」

「キバ君ところが、同じ木の葉のグループを捕まえた。」









 は透先眼でその様子を見ながら言って、くいっとサスケの袖を引っ張る。








「なんか・・・・緊張してきた・・・、」

「どってことねーってばよ・・・サクラちゃん!」








 サクラを励ますナルトの声も少し震えている。



 緊張せざるえない。

 夜だってまともに眠れるかわからないのだ。







「オレってば、ちょっとしょんべん・・・・・、」





 落ち着かないナルトが、その場でしゃがみ込もうとする。






「!!レディの前で何曝そうとしてんのよ!!草陰行きなさいよバカ!!」








 サクラが思わず叫んだ。



 元気が戻ってきたようだ。



 はサスケの服の袖をつかんだまま離さない。

 ナルトがごそごそと草陰に入っていく。






「あーすっげー出た、すっきりー!!」







 ナルトはすぐに戻ってくる。

 だが、とサスケは顔色を変えた。








「だから、レディの前でそういうの・・・・、」








 サクラが下品なことばかり言うナルトに注意しようと手を振り上げる。


 それより先に、サスケがナルトを蹴り飛ばした。

 サクラが呆然と目を見張る。







「なにすんだってばよ!!」

「本物のナルトはどこだ!!」








 サスケが後ろや草陰に目を移す。








「木の陰だ。」





 が答える。



 さすがにトイレの際まで見張る神経はにはない。

 それが裏目に出たのだ。

 敵が来ていることは、の先ほどの様子からわかっていた。








「ばれちゃ仕方ねーな!!」








 ナルトに変化していたのか、白い煙とともに男が現れる。



 もうひとり、草陰にも男がいた。

 男の一人がサスケに、もう一人がに襲いかかる。








!」

「こっちは大丈夫、サスケをお願い。」









 はまず後ろに飛んで、木の幹に着地する。




 男は、結構な長身で、大柄だった。

 と並べば、その差は歴然だろう。

 はサスケの戦闘の邪魔にならないよう、また男がサスケ達の戦闘にちゃちゃを入れないようにサス
ケ達から距離をとる。




 だいぶ離れたところで、はやっと止まった。



 離れてしまったが、は遠くを見通せる透先眼保持者だ。

 後で合流することは容易で、サスケもその通りに計らうだろう。

 だから、ひとまず目の前の敵に専念し、単独で動くことも考える。







「雨の人?」

「幼げだね、お嬢ちゃん。大人しくしんどいてくれるかい?」

「イヤ、わたしがんばるの。」








 決めた、自分で中忍試験を受けると、



 途中で諦めたりしない。



 だって、イタチが待っていてくれるから。

 は腰を低くして、いつでも動ける体勢をとる。

 それぞれの戦いが、始まった。









( 自分のこと 一番戦うべきもののこと )