ナルトとはサクラやサスケと別れ、走り出す。









「音忍の班が二つになってる」

「えっ?」

「どっちもサクラたちの方にむかってる。」








 透先眼で様子を見ながら、は表情を歪める。

 どちらか一つを相手にしていれば、もう一つを見逃すことになる。










「やばいってばよ!サクラちゃんが!!」








 ナルトが戻ろうとするが、は彼を制した。










「駄目だよ。二班じゃわたし達に勝ち目はないよ。」

「じゃあどうすんだってばよ!!」









 サクラを見捨てるわけにはいかない。

 だが、今戻っても共倒れになるだけだ。









「サクラを信じよう。」

「でもっ、」

「サクラは優秀なくの一だよ。あんな奴らに負けない。」

「・・・・」

「適わなくても良いんだ。わたし達が戻るまで、持ちこたえてくれる。」











 は水色の透先眼で、サクラがいる方向を見つめる。

 彼女だって願っている。




 できれば早く、サクラを助けに行きたい。



 でも今助けに行けば、不利な状況のままサスケを庇って多勢と戦わなくてはならない。 
 
全く勝ち目がなくなってしまう。

 それならば、冷静に一つ班をつぶしてから、戻るしかない。

 はナルトと一緒にまず、地面に穴を掘った。

 大きな、人間が入るほどの穴だ。



 そして今度がある生物を捕まえてきた。




 死の森は危険生物や毒虫の宝庫である。


 その生物は死ぬまでに猶予はもたらされるし、日頃それほど危険ではないが、おぞましさを上げれば
トップクラスだろう。




 ナルトにも捕まえて来るように指示する。



 ナルトは嫌々ながら、群れる習性のあるそれを大量に捕まえてきた。

 最後に気にされないと思うが、一応それに覆いをかぶせ、上から土砂や草を植えてカモフラージュす
る。

 作業が終わるととナルトは大きな苔の生えた木に着地して、木の葉の陰から音忍の様子を窺う。

 ちょろちょろあちこちを見ながら移動していると言うことは、サスケ達の居場所を正確に把握できて
いないと言うことだ。

 変わった迷彩服のようなズボンをはいて、変な襟巻きをした音忍達の班は、ぼそぼそと仲間と何かを
喋りながら、走っている。




 はサクラに近づくもう一班の音忍が視えていたが、思考から追い出して目の前の男達に集中する。

 雫の肩にいた白い炎の蝶が、男達の前をひらひらと飛ぶ。








「なんだこの蝶。」

「やめろ!輝き方がおかしいぞ!!」 








 間抜けにもさわろうとした男に、もう一人の男が注意する。

 蝶がふわりと輝く鱗粉を散らしたのを確認して、は飛び出した。





 男達の前に出て、起爆符付きのクナイを投げつける。



 男達は避けようと足にチャクラを集中させたが飛べず、木下に転落する。

 の蝶は他人のチャクラを焼き、チャクラの動きを阻害するのだ。




 そこには先ほどナルトが掘った穴があった。

 何の必要もなく、彼らは綺麗にその穴にはまる。









「ちくしょ!!」








 男の一人が大声で叫んだが、もう遅すぎる。



 穴の中にいるのは、ナルトがさっき血を吸われかけた木の葉のトビヒル

 発汗や体温を関知するこの縞模様の気持ち悪いヒルに五分も吸血され続ければ、大人といえどあの世
行きだ。

 何百匹もいるから、一匹二匹殺しても全く意味がない。









「ぎゃあっっっっあああああああああああああああああああ!!」









 男達の悲鳴があちこちに響き渡る。

 とナルトは耳を塞ぎながら穴の中をのぞき込んだ。








「・・・・さすがにやばいってばよ。」

「う〜ん、ぬるぬるしてて気持ち悪そう。」








 二人は顔を見合わせて、顔をしかめる。


 日頃の二人ならばぼんやりするところだが、二人とも、すぐに道を戻るべく踵返した。

 は透先眼でサクラたちの様子を窺う。

 サクラは傷だらけで、何故か他の木の葉の忍び達が集まっている。






「ナルト、先行くね。」








 は足に莫大なチャクラを込めて、飛ぶ。

 鬱蒼と茂る木の幹に当たる危険性もあるスピードだが、そうも言っていられない。

 ナルトをおいて、恐ろしいスピードでかけていく。




 想像通り、傷だらけのサクラがいた。



 それだけではない、シカマルの班のいのも血を流し倒れているし、チョウジまでいる。 

 リーも血を流して地に倒れ伏していた。

 は一番にサクラに駆け寄り、背中に庇うように前に立って音忍を睨みつける。









「やんのかい?姫宮様。」 







 大蛇丸から話を聞いていた音忍達はにやりと笑う。

 頭に血が上ったは、チャクラを揺らす。







「一瞬で焼き殺してあげる。」








 はにこりと笑って白い蝶を膨張させる。



 今度は自分の意志でやっているから、大丈夫だ。

 その肩を誰かがつかんで止める。







「やめろ。。」








 低い声。

 はあまりにイタチを似た声にびくりとして振り向く。







「サスケ君。」








 サクラも突然目覚めたサスケに、驚き目を見張る。









「サクラ、誰だおまえをそんなにした奴は・・・・・どいつだ。」







 あまりに質の違うチャクラに、は怯えたようにサスケから一歩後ずさる。

 神の系譜であるは呪いなどに敏感に反応する。



 サスケの呪印に、恐怖を感じた。










「オレらだよ。」







 音忍が楽しそうに答える。


 だめ、とが口の中だけでつぶやいた。

 呪印がサスケの身体を埋め尽くす。



 チャクラが、大きすぎる。



 突然チャクラが大きすぎれば身体が劣化することをは身をもって知っている。

 止めに入る前に、死とかかれた服を着た男が、攻撃を繰り出した。










「斬空極波!!」










 あまりの爆風に誰もが手でガードする。





 しかしサスケはあっさりととサクラを抱えて男の隣まで移動した。

 声もなく、男を殴りつける。

 そして、その次の瞬間、男を後ろ向けに捕らえた。









「クク・・・・おまえはこの両腕が自慢なのか?」







 両手を後ろ向けに引っ張って、背中を足で押す。




 そんなことをすれば、肩が外れてしまうだろう。

 残忍な行為に誰もが竦む。

 サクラは目の前で起こることの異常さに動けないでいる。

 はすっかり怯えてしまい、後ろからきたナルトに支えられる状態になっている。




 止めに入るものは誰もいない。



 誰もが見守るしかできない中、骨の外れるおぞましくも嫌な音が響いた。

 どさりと男が倒れる。








「ひっ・・・、」





 が引きつった声を上げる。

 それが変なほど場に響いた。







「残るはおまえだけだな・・・おまえはもっと楽しませてくれよ。」








 サスケが唇の端をつり上げて冷酷な笑みを見せる。

 その目がさっきの大蛇丸と重なる。









「やめて!!」







 サクラが今度こそ、止めに入る。










「おねがい、やめて・・・、」







 後ろから抱きしめて、止めようとする。




 呪印が、徐々にサスケの身体からひいていく。

 するとサスケは崩れるように膝をついた。



 助かった音忍は竦み、胸元から一つの書をおく。

 地の書である。








「これは手打ち料・・・・ここはひかせてください。」 








 彼は二人の班員を抱えて木陰に消える。











「おい!大丈夫かよおまえら!!」








 シカマルがサスケとサクラに駆け寄る。









「しっかりしろってばよ。」








 ナルトに支えられていたも促されて我に返り、サクラたちに駆け寄る。


 いのがリーを助け起こす。








「オレは一体・・・・」








 意味がわからないとでも言うようにサスケは首を傾げている。

 先ほどの強さの記憶はないのだろうか。

 は一瞬サスケに怯えたが、普通のサスケだと言うことに安心して駆け寄る。



 いつのまにか、サクラの髪の毛は短くなっていた。




 敵に掴まれるかして、自分で切ってしまったのかも知れない。

 それでも木の葉の仲間達のおかげでどうにか乗り切ることができた。









「みんなありがとう。」








 はにっこりと笑う



 彼らがいなければ、サスケもサクラも確実に殺されていた。

 今は感謝しかできないけれど、後で食事くらい奢ろう。












「当然じゃない。友達でしょ。」









 いのが偉そうに胸を反らしてにやりと笑う。

 シカマルやチョウジも苦笑いをしながらも頷く。

 木の葉が、風に舞い落ちた。

















( 信頼できる 心から頼りにすることができる 人々 )