川でとったマスを丁寧に香草で包んでから棒に刺し、火で焼く。


 香草で包むという画期的な案を提唱したのは、意外なことに名門炎一族出身で口が肥えているのに
全く家事をしないため、料理も何一つできないはずのだった。


 どうやら初日に持っていた乾パン以外のものが食べたいと言うことで川魚を捕ったのだが、川魚の臭
みがどうしても気に入らなかったらしい。



 それで香草に包んで匂いを付け、臭みを隠す方法に気づいたわけだ。

 おかげで食事は乾パン以外でも、それなりにおいしく食べられている。

 焼けた魚からぺりぺりと香草を外してから食べる。

 普通に焼くよりも身がふっくらするし、さわやかな匂いが食欲をそそる。

 、サクラ、サスケ、ナルトは食事をとりながら、大きく息を吐いた。




 食事が一番ほっとする時間である。

 だが、考えなければいけないことは山積みだ。


 もう試験は四日目にさしかかり、後丸一日程度しか時間がない。



 既に何チームかがゴールしていることを考えれば、地の書ひとつしかてにいれられていないのチー
ムはかなり難しい状況にいることになる。

 はぼんやりとずっと透先眼で空を視ている。

 サスケはを見ながら大きく息を吐いた。





 のチャクラは底なしだ。

 血継限界とはいえ、チャクラは使う。


 は怪我をしているサスケやサクラ、ナルトの治癒のためにひとりで昼夜問わず、透先眼で辺りを見
張ってくれている。

 昨晩はサスケもだいぶ回復し、交代したが、昨晩以外は一睡もしていなかった。




 なのにチャクラはつきていないらしく、今でもしっかりと透先眼で周りを見渡しているのだ。

 は、炎一族の東宮として中忍や上忍には有名な存在で、よく抱きしめられたり笑いかけられたりし
ているのを見たことがある。 



 知らないものが、いないほどだ。


 潜在する能力は、誰よりも高いのだろう。

 ただ、自信がないだけで。








「・・・・移動しよう。」







 が突然顔を上げて、言う。









「煙が随分遠くまで届いているみたい。他の班の人たちが反応し始めてる。」

「あぁ、」








 サスケは立ちあがって、荷物を持つ。

 ナルトやサクラも同じように立ちあがる。








「はぁー、まだ天の書を持ってる人っているのかしら?」








 サクラはため息とともに大きな疑問を口に出す。

 それはナルトもサスケも考えた疑問だ。










「いるよ。」











 はまっすぐ立って、相変わらずサスケ達とは全く違う方向を見ている。








「いるよ。わたし達は、大丈夫。」







 呪文のように、言霊がそこにあるように、は言う。



 どこを見ているのかわからない瞳。

 サスケは顔をしかめた。

 は静かに草陰に目を向ける。









「わたしは本気で殺す気でいるよ。貴方はだれ?」

「気づいて、たのかい?」






 がさりと、草陰から一人の男が出てくる。

 それは中忍試験の最初に、騒ぐサスケ達を注意した男だった。

 名は確か、








「カブトさん。」








 ナルトが珍しく覚えていたのか、目を見張った。



 同じ木の葉の忍びであるカブトの出現にサスケが構える。

 この場で同じ里の人間と言うことは関係ない。

 里の人間でも、巻物を奪うという試験の条件の上では敵だ。










「あなた、巻物を持ってる。」

「よくわかるね。」

「見えているから、仲間とはぐれたの?」








 は淡々と尋ねる。


 肩に止まる蝶がせわしなく羽をばたつかせた。

 鱗粉が辺りに飛び散る。








「違うのね。あなた・・・・今はいいや。」

「・・・・・、はぐれた仲間と・・塔で落ち合うことになっている。」







 カブトは少し眉を寄せて、をじっと見ていたが静かな声で言った。








「嘘つき。」







 は首を横に振る。








「でもいいや、貴方は貴方の任務のためにわたし達と一緒にいるでしょう?どうすれば簡単に巻物をと
れるの?」

「取引ってわけかい?」








 カブトがめがね越しに鋭い瞳でを射抜く。






「いや?」







 がぼんやりした声で聞いた。



 ぱたぱたとの肩の白い炎の蝶が鱗粉をまき散らして騒ぎ出す。

 しばらく沈黙が続く。







「本戦まで君の怖い婚約者と父上に黙っていてくれるなら。」







 カブトが大きなため息をついて肩をすくめる。









「仕方ないから、いいよ。」







 はとんとんと自分の肩を叩いて、透先眼を普通に紺色の瞳に戻した。

 カブトはの様子を確認しながら、塔の見える場所に立つ。








「一つ聞いて言いかい?」

「答えられることなら。」

「どうして君は見抜けた。」







 カブトの質問に、は自分の目をこすりながら答える。

 久しぶりに透先眼を閉じたから、とても疲れた。







「見えた・・・から・・・・、」








 世界のすべてが、見えたから。



 は目眩に耐えて、足を踏ん張る。

 いろいろなものを見過ぎて、とても疲れた。

 その身体をサスケが背負う。も抵抗はしなかった。







「どうする気なんだ?」








 サスケはカブトに尋ねる。








「取引だからね。仕方ない・・・・後で彼女に感謝しておくんだね。・・でも移動しながら話そう。た
き火の煙に焼き魚の匂いがかなり遠距離まで届いていた。このままじゃ敵にマークされる。」









 カブトが先頭になって走り出す。



 鬱蒼とした木々、昼なのに、光があまり入らない。 

 走りながら、カブトは話し出す。








「いいかい?全員共通のゴールは塔なんだ。ラスト一日になった時点でもっとも巻物が集めやすいのは
どこだい?」

「・・・・・なるほど、待ち伏せ。」







 サクラが閃いたように笑う。







「でもそう考えるのも君たちだけじゃないと言うことさ。塔の付近にはもう既に同じことを考えた奴ら
が罠を張っているだろう。」

「どのみち、むずかしいってことか。」







 を背に負ったままのサスケの表情が険しくなる。









「なるほどな、あんたも怖いんだろ。」

「そうだよ。」









 サスケの問いに、カブトはあっさり頷く。

 はサスケの背中からカブトの薄ら笑いを睨みつけた。
















( 全部 あるいはかんぜんでないこと だいたい おおよそ )