塔の付近にはカブトの仲間が立っていた。









「遅いぞ、カブト、」









 二人は別段困った様子もなく、カブトに言う。









「ごめん、いろいろあってね。」









 カブトはそつなく答えた。

 はじっと二人を見つめ、それからふいっと塔にいくつも備え付けられたドアに目を向けた。










「僕らはこっちから行くから。」 










 カブトは手を振って達に別れを告げる。










「カブトさん。ありがとうだってばよ。」









 ナルトが笑って礼を言ったが、サスケは何かに気づいたのか、カブトに警戒の目を向けた。

 ナルトが我先にと扉を開く。









「誰もいないってばよ・・・・・、」










 きょろきょろと周りを見渡す。



 中には誰もいない。

 はまだカブトのいた外を見ていた。










、」








 サスケがにも中にはいるように促す。



 それでもしばらくはカブトの入っていった扉をしつこく見ていたが、中に入った。

 中は天井が高く、吹き抜けで二階の手すりが下から見える作りになっている。

 目の前の壁には大きな文字の書かれた掛け軸のようなものが掛けられていた。








『“天”無くば智を識り機に備え “地”無くば野を駆け利を求めん

 天地双書を開かば 危道は正道に帰す 

 これ則ち “ ”の極意・・・・・導く者なり    

                               3代目』









 はぼんやりと大きな文字を読み、首を傾げる。










「3代目が書いたんだー」

「いや、意味を考えろよ。」










 サスケが思わずつっこみを入れる。










「それに何か文字が抜けている。」









 これ則ちの後の文字がかかれていない。



 いったい何なのだろう。

 は見当もつかず、ますます首を傾げる。









「多分・・・巻物のことよ。これって天地の巻物を開けってことだと思うんだけど・・・・・」











 サクラが巻物を持つナルトを見て、片方の天の書をもらい、開くべく手をかける。




 なにやら、書を開くのは勇気がいる。



 何が書いてあるのかどきどきしながら、二人はそれを開いた。

 開いてみると人と大きくかかれた周りに円形に文字が書かれている。












「なんだこりゃ・・・、」











 見覚えのない術式にナルトは目を細める。









「これ・・口寄せ・・・、」










 は見覚えがあったのか、目を見開いて不思議そうに術式を見る。








「ナルト!サクラ!その巻物をはなせ!!」








 の呟きを聞いてサスケが叫ぶ。




 ナルトとサクラが天と地の書をほり投げると、煙が辺りに立ちこめる、

 今度は何だと身構えたナルト達だったが、そこから現れた人物に驚くしかなかった。







「よっ!久しぶりだな。」








 力強い笑みでそこに立っているのは、かつてアカデミー時代に教壇にあったあの笑顔と同じ。

 アカデミーの担任だったイルカが、そこに立っていた。








「??」








 全員が意味がわからず、呆然とイルカを見つめる。









「苦労したみたいだな・・・おまえ達」

「え!!?なんでイルカ先生が口寄せで出てくんだってばよ?」











 ナルトは訳がわからず、逆に慌てている。


 イルカはぼろぼろのナルト達に近づく。









「この“第二の試験”の最後は俺たち中忍が受験生を迎えることになっててな・・・たまたまオレがおまえ達
への大切な伝令役を仰せつかったわけだ。」

「伝令?」

「時間ぎりぎりだな。」









 懐中時計を開いて、イルカは時間を確認し、安心したような顔をする。

 そして四人全員の顔を見回してから、力強い笑みを浮かべた。









「第二の試験、4人とも突破おめでとう。」








 言葉の意味が、瞬間よく理解できない。









「第二の試験無事合格を願って一楽のラーメンでも奢ってやりたいところではあるが・・・・」

「やったー!!」










 ナルトが一番先に理解してイルカに抱きつく。










「やった!やった!やった!やったってばよーー!!!」









 イルカに抱きつきながら、力強く叫ぶ。

 まだまだ元気なようだ。飛び跳ねてナルトは全身で喜びを表現する。








「まったく・・・騒がしい奴だ。」

「はぁ・・・・」









 サスケとサクラはその場に座り込む。

 疲労はもう限界で、気を張ってはいたがそれも第二試験合格を聞いてゆるんだ。




 だが、一番気を張っていたのは、だった。

 ふらっと小柄な身体が傾く。

 二つにくくった長い紺色の髪の毛と、ちょうちょ結びになっている赤い帯がひらりと同じように揺れる。









「危ない!!」 










 サクラが思わず叫んだが、地面に激突する前にの身体をサスケが支えた。




 の頬を軽く叩くが全く意識がない。



 恐がりでいつも怯えてばかりだったとしては、とても頑張った。

 気絶するのも仕方がない。









も、よくがんばったみたいだな。」









 の様子を確認して、イルカは困ったように笑う。










「ここ五日間、炎一族の者は可哀想になるくらいを心配していたからな。」









 は、炎一族でたった一人の宗主の娘で東宮だ。

 の母には兄もいるが、能力的にが強く東宮として祭り上げられているのは、ひとり。

 身体の弱い東宮を一族の者達はそれはもう溺愛した。

 そして、チャクラをイタチに肩代わりして貰い、アカデミーに通い、忍びになったを喜びつつも、影で心
配してる。




 一族の者にとっては次期宗主であり、例えようがない存在。



 炎一族の者は東宮の安否のわからないこの五日間を気が狂いそうな思いで待っていた。

 第二試験突破を聞けば、誰もが手を挙げて喜ぶ。










「大変だったんだぞー、炎一族出身の中忍の緋闇なんて木から落ちたらしい。」

「気にしすぎだろ。」









 サスケが冷たく言ったが、炎一族の者にとって宗主は神に等しい。



 次の宗主となるもそうだ。



 彼らはが合格することを願っているのではない。

 彼女が彼女らしく無事であることを願っているのだ。








「ひとまず、おめでとう・・・・、」









 あらためて、イルカは全員に笑いかける。

 3人は嬉しそうに何度も何度も頷いた。



 








( 徒を教え 導く者 道を指し示すもの )