は相変わらず眠ったままで、大蛇丸につけられた傷が痛むサスケではなく、今度はナルトが背中に背負っ
ていた。





 に目立った外傷はない。

 にもかかわらず、疲労のせいか眠っている。

 第二試験で人が残りすぎたため本戦の予選をすることになったのに、は相変わらず寝たまま。









「どうするってばよ・・・、」










 ナルトはそっと隣に立っているサスケに尋ねる。



 棄権する奴は先に棄権しろと次の審判の月光ハヤテが言っている。

 棄権させたい気もするのだが、は眠ったままで、ナルトはどうすればいいかわからなかった。










「ほっておけ。は多分強いんだろう。」









 サスケは素っ気なく答える。



 そこにはに対するいらだちも含まれていた。





 第二試験で、と自分には大きな実力の差がある気がした。

 は、自信なさげで、いつも俯いているが、第二試験ではずっと透先眼を使い続け、場合によっては戦いに
出た。

 彼女は恐がりだが、弱いのではない。

 恐がりが彼女を弱く見せているのだ。

 確かにここで棄権させるのものためだろうが、それよりもサスケは、ナルトとだけでなく、とも戦いた
かった。




 兄のイタチはとナルトを随分評価していることは知っている。




 彼らを倒すことで、兄に認められたい。

 また兄にいつか勝ちたい。

 気持ちだけがはやる。











「予選はルールは一切なしです。どちらが一方が死ぬか倒れるかあるいは負けを認めるまで戦って貰い
ます。えー、死にたくなければすぐ負けを認めてくださいね。」









 なんだか体調の悪そうな月光ハヤテはごほごほと咳をしながら、順番にルールを述べていく。








「ただし、勝負がはっきりついたと私が判断した場合。むやみに死体を増やしたくないので、止めに入ったり
なんかします。」









 最後にまた咳をして、電光掲示板を示す。









「そこに一回戦ごとに対戦者の名前2名ずつ表示します。」









 電光掲示板が嫌な光を映す。



 第一回戦はサスケ対、さっきカブトのチームメイトだったヨロイと言う男だった。

 ナルトやサクラなどの観客は二階の席に上がる。

 ナルトはを背中に負ぶって上がった。



 は相変わらず夢の中だ。


 サスケはやはり首の傷が痛むのか勝ちはしたが、すぐにカカシが傷の治療のために連れて行った。

 サクラは心配そうだったが、ダブルで心配が来た。











「次の試合を始めます。蒼、イブカ、前へ・・・・」










 咳混じりの声で、ハヤテが言う。




 ざわりと来ていた上忍や中忍から声が上がった。

 イブカは草の下忍だが草の国でも有名な一族の出だ。

 だが、それを言えばとて同じだ。









「ちょっ・・寝てるじゃない!」








 サクラが慌ててを起こしにかかる。

 日頃からなかなか起きないも、さすがにサクラのせっぱ詰まった空気を感じたのか目を覚ました。








「サクラ?」

「あんた、試合よ、試合。」

「え?」









 は何も話を聞いていなかったため、よくわからず首を傾げる。

 サクラに背中を押され下に降りたが、状況を飲み込めていない。








「ん?」









 相変わらず、ハヤテや他の上忍の顔を窺ってはきょろきょろしている。








ー!ぶっとばせーー!!」

「顔面エルボーよ!!」









 木の葉の新人達はこぞってを応援する。

 小柄で性格の優しいはアカデミーでは有名だった。



 誰もが知っている。









「斎さんの娘だね。」

「病弱だったんだって、いけるかね?」










 上忍達も気になるようで、腕組みをしながらざわめく。




 そのとき、二人の男が客席である二階に現れる。

 ひとりはの父親の斎、もうひとりは許嫁のイタチだ。









「サスケ・・・勝ったのか・・・」








 イタチは喜んでいるのか、残念がっているのかよくわからない間のある台詞を漏らす。








「間に合ってる!?」








 斎は近くにいたアスマと紅に詰め寄った。









「いや、間に合ってますよ。」

「よかった・・・・、」









 ほっとしたように大きな息を吐く。

 斎の容貌はのように大きな子供がいるとは思えないほどあとげない。



 噂には聞いていたが、初めて見た斎に紅は目を丸くした。



 斎は天才うちはイタチを育てた人物として定評がある。

 火影以上の実力があるという話も誰かがしていたので、もっと強くて、狡猾なイメージを勝手に持
っていたが、本心から素直で穏やかそうな人だ。

 とよく似ている。









ー、がんばれー!」








 無邪気に下にいる娘に手を振る。









「うんー。がんばるー。」









 もそっくりの顔で笑って父親に手を振った。



 何とも和やかな光景にイタチはついて行けないというように、視線をそらす。

 その気持ちがなんとなく紅とアスマにもわかり、初めて天才と名高いうちはイタチに同情した。

 訳がわからないなりに、相手をぶっ飛ばせばいいことがわかったはイタチが見に来たことで少しだけやる
気が出たようで、ぎゅっと拳を握りしめる。



 イタチの前で無様な姿は見せられない。



 人を傷つけるのも嫌いだが、やるしかないと覚悟を決める。

 対戦相手のイブカはそれほど背は高くないが、髪の毛が長く一つにくくっている。

 男としては三白眼だがそれなりに綺麗な顔立ちだ








「炎一族の東宮、か。知ってますよ?」








 にこにこと笑っているが、なんだか感じが悪い。

 どうして笑っているのに感じが悪いのだろうとは不思議に思って一生懸命考える。









「あっそうか!口の端がつり上がりすぎてると感じが悪く見えるんだ。」









 画期的なことを発見したように手のひらを拳で叩く。



 不思議なところに目をつける子だ。



 見ている忍をはじめ、火影までもが吹き出す。

 対戦相手はひくりと笑顔を引きつらせた。








「炎一族の東宮を倒せば僕の名前も上がるってもんです。」

「名前は名前だよ。上がらないよ。」








 病弱で外に出なかったはいまいち語彙量が少ない。

 イブカの言うことがよくわからなかったらしく、言い返した。








「やる気は十分みたいですね。」








 咳き込んでいたハヤテが手を挙げる。










「はじめ、」









 手がまっすぐ下ろされると、二人は動き出した。













( 腕がどれだけ重いものを持ち上げられるかどうか 時に人がおぼれる暴力 )