予選で残った木の葉の人間は最初に勝ったサスケ、次に、シノ、ネジ、ナルト、そしてシカマルだった。




 木の葉で残った女は一人だった。






 後は砂と音、

 特に砂の我愛羅の能力が驚きだったわけだが、誰もが驚いた者がいた。

 音の君麻呂である。









「なんて・・・酷いことを。」









 相手を一瞬にして滅多刺しにして命を奪ったのだ。

 相手の忍びが彼の背中に飛びついた瞬間だったため、止める暇もなかった。

 何故彼の背中から人の身体を突き刺すような突起物が出てきたのかはわからない。




 けれど誰もが死体に絶句した。

 合格者は、1階に集められる。










「ひとまず、砂の奴とはあたりたくねぇな。んで、あとはあの音の奴と。」









 シカマルがぶつぶつとつぶやく。










「そうだねぇ、でもネジ君とも当たりたくないな。」

「あいつは反則だかんな。」








 の答えにシカマルはすかさず同意する。









「シノもごめんだな。」

「そんなこと言ってたら、あたっていい人はいなくっちゃうよ。」









 真面目にが言う。



 勝ち残ったのは十一人。

 そのうち我愛羅が駄目で、ネジとシノもイヤで君麻呂もさけたいならだいぶ範囲は狭められる。




 1回戦をを勝ち進めば必ず誰かと当たる計算だ。

 さけたい気持ちはわかるが、こればかりはどうしようもない。

 火影自ら、本戦のルールを説明する。

 本戦は各国の代表選手として出場することとなる。





 また、本戦は一ヶ月後。一ヶ月は準備期間とする。理由は敵を知り己を知るため。



 予選ではライバル達の前ですべてを明かしてしまった者、相対的な強者と出会い傷つきすぎた者もいる。公
正公平を期すために一ヶ月の精進期間ともうける。

 トーナメントに勝ち上がらなくとも中忍試験合格の場合もあり得る。

 火影はにこやかに笑っていたが、ら受験者はあまり笑える状況ではなかった。

 最後にくじ引きをひかされ、トーナメントが決められる。


















「オレ、一回戦おおいじゃん。」









 シカマルが文句を言いたげにつぶやいた。

 はシカマル以上に眉を寄せる。









「わたしは一回戦多い上に、イヤだって言ってた音の君麻呂とだよ。」










 セッカノヒメミヤと書かれた場所からてっぺんまでが妙に遠い。









「棄権するか?」

「考える・・・」









 は本気でそう答えた。



 シカマルも今にも棄権したそうだが、もうここまで来てしまえばどうしようもない。

 やる気無い者同士二人で試合数が多いというのも運命の皮肉だ。

 だが、最後にシカマルは本気でに忠告した。








「音のあいつ、やばいぞ。」

「まぁ、身体からなんか白い突起物出てくるし?」

「・・・それもやばいけどな。おまえ本気で棄権かギブアップ、考えた方が良いぞ。」

「やっぱりそうかなぁ・・・、」








 も頷いてしまう。




 君麻呂は、何も自分の力を見せていない。

 身体から出てきて相手を突き刺したあの白い突起物は一体何なのかも。

 でもとて、チャクラさえ戻れば誰も太刀打ちできない化け物である。









「がんばるよ・・・・、」









 気は乗らないが、はひとまずそう答えて肩を落とした。




 彼さえ倒せばしばらくはトーナメントの順番で行くと決勝までネジやナルト、サスケ、我愛羅とは当たらな
くて済む。

 一回戦を頑張りさえすれば。










「・・・・・・、」









 酷く遠く思えた。

 ひとまずこれで一ヶ月は休養できる。








「まぁ今日は祝って、明日はみんなの見舞いだな。」

「そうだね・・・・・、」









 この予選でヒナタは死にかけ、キバは倒れ、サスケも病院、チョウジはダウン、リーも敗北と、サスケは負
けていないが、負けた奴らの結末はなかなか悲惨だった。

 彼らの見舞いに行く時間も考えなくてはいけない。








「おっしゃー!がんばるってばよーー!!」








 やる気満々でナルトが叫ぶ。

 とシカマルはいまいちそれについて行けない。








「めんどくせー、」









 シカマルは肩をもみながら、帰ろうと担当上忍のアスマを振り返る。

 も帰ろうと思ったが、カカシはサスケとどこかへ行って一度帰ってきたが、またサスケの所に行ってしま
っていて、いなかった。






 その代わり、父親の斎と、イタチがいる。



 は表情を変えて目元を和ませた。

 試験中五日間も離れていたのだ。









「父上様、イタチ。」






 は二階から階段で下りてきた二人に駆け寄ろうとして、膝が崩れるのを感じた。








「え、」











 疲労が限界だったのか、既に痛覚も麻痺していた足。

 今や感覚もなく、立ちあがろうにも何もできない。


 戸惑うをイタチは難なく抱き上げる。










「きゃっ!!」

「大人しくしておけ、もう立てないだろ。」









 少し素っ気ない口調で、イタチは言う。



 怒っていると言うより、すねているようだ。

 どうしてだろうとはイタチの肩に手を置きながら、思う。



 隣で斎が笑みを咬み殺していた。

 それをイタチはめざとく見つける。








「何か文句がありますか?」

「ないよ。ない。あはは、ないない。」









 笑いがこらえ切れなくなった斎が、本格的に笑い出す。

 イタチは自分の無力さにイライラしている。

 そして、の傍にいられるサスケに嫉妬していたのだ。




 知っているから、斎は笑わずにはいられない。



 日頃淡白で、何事にも関心を示さないイタチなのに、に関してはとても執着する。

 イタチをよく知る斎にとっては面白くて、楽しくて仕方がないのだ。









「祝いは、明日だな。」









 シカマルが半ば強制的に連れて行かれるを見て、いのとともに視線を交わす。

 みんな疲れているし、今日は休憩だ。




 祝いは明日。




 ひとまず帰って風呂に入って、たくさん普通のご飯を食べて、たくさん寝よう。

 シカマルは大きく伸びをした。













( あいだ ものともの こととことのあいだ )