は丸三日爆睡した後、やっと目を覚ました。





 昼ご飯を食べて、だらだらしたあと伝書鳩が来る。







 夕方、木の葉の下忍が大方焼き肉屋に集められた。




 落ちたもの、受かったもの、いろいろいるが、ひとまず頑張りましたと、次の本戦に残った奴らの応援会と
言うことで、みんなで焼き肉を食べることになったのだ。

 集められたのはシカマル、いの、チョウジ、キバ、シノ、サクラ、サスケ、ナルト、、他それぞれの担当
上忍であるアスマ、紅、カカシが来た。









「まぁ、みんなお疲れ様でした。本戦に行く奴らは頑張ってね。」










 やる気のないカカシの乾杯とともに、みんな飲み物を飲み始める。

 怪我をした者達も来たことにほっとして、はカシスオレンジジュースをちびちびと飲んだ。









「おっしゃー、ひとまず頑張るぜ!!」









 ナルトはやる気満々で叫ぶ。



 相変わらず元気で、自信にあふれていて、は気が重くなった。

 サクラといのはサスケの隣を争っている。

 チョウジはひとまず食べるのに必死だ。





 なんだか楽しそうな周りに、は一人取り残されるような感覚を味わった。





 本戦までの一ヶ月、周りは皆修行をするといっているが、にはやらなければいけないことが、全く見つか
らなかった。

 これ以上あるかというほど長い息を吐いて、は飲み物をまた一口飲み込む。

 ただの水が、酷い鉛のようにお腹にたまる気がした。










、ぜんぜん食べてないな。」










 あまりのサクラといののうるささを避けてきたサスケが、焼けた肉を網からとりながら言う、



 チョウジほどでないにしろ、サスケも育ち盛りの男の子でよく食べる。

 は取り込んでいる肉の量に驚きながら、力なく笑った。









「うん。食欲無いの、」











 あっけらかんとわざと答える。


 嘘ではない。



 は好き嫌いはないが、小食であまり食べない。

 その上食欲がないとなれば、食べる量は微々たるものだった。

 ちみちみと肉をとって食べる。なんだか生焼けの気もしたが、構わず一個だけとって食べた。











「でもサスケとシノは予想してたけど、まっさかシカマルやナルト、も本戦に残るとなんて意外すぎるぜ」









 キバががつがつと肉を食べながら肩をすくめる。




 シカマルはやる気がないし、はいつでも逃げ腰。ナルトはアカデミーどべの落ちこぼれ、

 確かにこの3人は意外な組み合わせだ。










「オレは担当上忍として、鼻が高いよ。」









 カカシが穏やかに笑っての頭を撫でる。










「四人チームで3人までもが本戦に残った。」








 確かに、サクラ以外カカシの班はみんな残った。

 サクラが横からに抱きつく。









「女の子の希望の星だから、がんばってよ!」

「そうよ!」









 いのも賛同するが、は笑いながらも視線を横に流した。

 外堀が埋められていく感じがする。



 誰にも気づかれないように、は小さくため息をついた。








「ところで・・・、」








 突然サクラといのが真剣な顔をする。










「一度聞いてみたかったのよね。」

「そうそう。」








 少し二人の空気が変わったので、は首を傾げて戸惑う。










「「イタチさんとはどこまでいってるの!?」」










 声をそろえてサクラといのに尋ねられて、はきょとんとした。



 シカマルが可哀想にと言う目をにおくる。

 アスマとカカシが大きな息を吐き、紅が楽しそうにに近づいた。

 面白そうだと思ったのだろう。









「えっ?どこまでって?」









 はまだ話しについていけていない。








「だって、イタチさんもう17歳でしょ?」

「わたしもあのイタチがあんたの前でどんななのかすごく聞きたいわ。」










 紅が興味津々でに詰め寄る。





 イタチは、暗部だけでなく上忍の間でも有名な天才だ。顔も良い、家柄も当然良い。

 名門うちはの出身で家出こそしたが、上忍の中にも随分とファンがいる。

 彼本人は恋愛ごとだけでなく他人にはほとんど関わらず、親しいのは元担当上忍の斎だけ。





 なのに、五歳も年下の許嫁を大切にしているという。

 女性なら気になる話題だ。










「別に何もないよ?優しいし。」

「優しい、あのイタチが優しいの。」









 告白されて女が抱きついてきたらさわやかに避けたという噂の男が優しいのか。

 人間わからないものだと、紅は思う。




 は少し恥ずかしそうに俯く。







、可愛いなぁ」









 いのがに抱きつく。

 サクラも反対側からに抱きついた。




 サスケは忌々しそうに舌打ちをする。

 サスケの様子に、紅やアスマは苦笑した。









「随分複雑そうじゃないか。」











 紅はカカシを肘でつつく。




 カカシはイタチとサスケ兄弟のを挟んだ複雑な三角関係をよく知っている。

 サスケはが好きだ。それと同時に憎んでいるともめながらも、イタチも慕っている。

 自分では気づいていないだろうが、の傍にいるイタチに嫉妬しているその反面、イタチの傍にいつもいら
れるにも嫉妬している。




 だからとっさにに冷たく当たったりする。



 サスケにとってイタチは慕わしいからこそ、自分を残して家出した憎らしい存在で、兄に一番その強さを認
められたいのだ。






 の父親である斎は、元々自分が面倒を見ていた下忍であったイタチをの許嫁として押した。






 それはおそらく、うちは一族で意見が合わずに孤立し始めたイタチを、表立って反一族派に向けないために
距離をとらせる狙いもあっただろうとカカシは思う。

 斎は他人をよく観察し、将来的に何が必要かを的確に見抜く才能がある。

 彼は、イタチをあまりうちはの中におくことが、将来うちはにとってもイタチ自身にとってもプラスになら
ないことを既に悟っているのだ。




 イタチは聡い。変なところで大人の汚い部分を賢いが故に見つけてしまい、真面目な故に目をつぶることが
できない。

 里での興隆を第一義とし、多少の汚いところには目を瞑るうちは一族の姿勢とは相容れない。

 日向もその点は同じだろう。









 対して、斎と女宗主・蒼雪が率いている炎一族は全く違う。





 炎一族は里での興隆など何とも思っていない。




 炎一族にとって重要なのは宗主とその直系達であり、里が彼らを守る器になってくれているから里に帰属し
ているだけだ。

 婿の斎は里の中でも上層部と通じ、重要な位置を占めているが、たまたま婿にとった人物が上層部と懇意だ
った程度のことで、それを利用しようなどという考えはない。

 宗主が穏やかに頂点に君臨していてくれさえすれば、彼らは満足なのである。





 だからが身体が弱かろうと、中忍試験に出ようと、大切なのは彼女の無事、一つなのだ。



 うちはを幼い頃から見てきたイタチにとって、炎一族の体制は潔く、好ましく映っただろう。

 斎はすべて知っていて、イタチとうちは一族にこれ以上の確執ができる前に、許嫁という正当な理由でイタ
チを一族から引き離した。







 けれど完全に縁を切ることになるかというと、そうではない。




 うちはと炎一族は仲が良いし、それなりに顔を合わせることになる。

 残してきたサスケが心配だし、絶対的な信頼を寄せる斎が困った立場に立たされると嫌だから、反目しあっ
ているとはいえイタチもうちはに酷くは当たらない。

 うちは一族としても、炎一族の面目がある手前、東宮の許嫁であるイタチを酷く罵ることはない。

 炎一族では婿とはいえど、宗主と同じ立場におかれる。

 宗主を第一に考える炎一族のいる場で、例え同族であれ次期宗主の許嫁を罵るなど、許されない。




 お互いに、牽制しあうことができる。



 斎は繋がったまま、うまく距離を置かせ、お互いに歩み寄りを求めたかったのだ。

 よく両者を観察していると思う。







 だが、残されてきたサスケの気持ちは複雑だ。




 未だに兄を望むうちは一族に残され、兄の元担当上忍で炎一族の宗主の婿である斎に素直に頼ることも微妙
に遠い立場であるが故にしにくい。

 本当は心中で兄を慕っているため兄のすべてを憎みきることもできず、一族に幼いために認められることも
なく、立ちすくんでいる状態だ。









「フン・・・・、」










 イタチのことが話題に出たため、サスケは面白くなさそうに顔を背ける。



 一番苦しい立場にあるのが誰なのか、

 そっと何気ないふりを装ってカカシはサスケの頭を撫でた。












( 定められた運命 またはそれに属する 希望 絶望 )