猫を探す任務をカカシを抜いた四人でさせられることになった七班だったが、があっさりと透先眼で猫を見つけたため、早く終わった。




「おまえ、猫を放すなよ。」




 猫を抱いているに、サスケが注意する。

 ちなみに以外は猫に近づかない。猫は何故かが好きで、が呼ぶと素直に出てくるのだが、ナルトやサスケ、サクラが近づくとすぐに逃げるのだ。どうやらかなりこちらに警戒しているらしい。なのでサスケも注意しながらの隣を歩かないようにしていた。




「ってか、あっさりだったよな。」




 ナルトは手を自分の頭の後ろで組んで、に言う。





「うん。最近透先眼の使い方が上手になってきて、もの探しは得意になったの。」




 は笑いながら、目を水色に変えてみせる。

 が透先眼を開くと、猫を見つけるのは非常にたやすかった。捕獲には時間がかかったが、それでもおそらく他の班よりは早いだろう。

 透先眼は後発の血継限界ではなく、生まれた時から開眼していると言う。なので小さい頃から使い方を学ぶらしいのだが、は病弱で学べなかったため、元気になったここ数年、特に任務をこなすようになった今、やっと使いこなせるという手応えを感じてきたらしい。




「ふん、おまえは火影の弟子だからな。」




 サスケは冷たく言い捨てた。はそれに対して僅かに俯く。

 今日の小隊長は一応と言うことになっていた。それはやはり師である綱手の決定で、やはりサスケが認められる事実ではないらしい。




「おい、サスケ・・・」




 ナルトが怒りにも似た表情でサスケに反論しようと口を開くが、それに重ねるようにしてサクラがを心配そうに尋ねた。




「そういえば綱手様との修行はどうなの?」




 綱手の弟子に正式に迎えられてから、の傷は明らかに増えた。




「結構きついかなー。綱手先生、容赦ないし。殴られたら、もの凄く痛いし。」





 チャクラが多すぎてコントロールが出来ないは、チャクラコントロールに定評のある綱手についている。チャクラコントロールによって効果的に一点集中させてチャクラを使える綱手の攻撃は、非常に重い。

 そのため掠っただけでも痣になった。




「ナルトはどうなの?」




 自来也の弟子かどうかは聞いていないが、術を教わっていると聞いている。が尋ねると、ナルトはひらひらと手を振った。




「全然駄目だってばよ。口寄せとかさ。ちっまいおたまじゃくしとかしかでてこねぇの。」

「おたまじゃくし、そんなにちっちゃいの?」

「エロ仙人もおまえ才能ないのぉ…ってさ。」

「ありゃりゃ。」




 は肩を竦める。一向に進んでいないのはナルトも同じらしい。





「サクラは?」

「え、私、何もしてないけど。」





 サクラは休みの間は完全に休みを満喫していた。そのまま、三人は黙り込む。

 サスケは?と聞きたいところだが、ここ数週間チャクラまで封じられていたサスケにそれを聞くのは酷だ。




「そういえば、みんな、今日暇?」





 は思い出したように言う。




「予定はねぇけど?」

「うん。ないわね。」

「…」




 ナルトとサクラが顔を見合わせ、サスケが無言の中、は猫を抱きしめる。




「父上様が、ご飯一緒に食べよ―って言ってたの。どうせ、綱手様の所に行くでしょ?それから、暗部の本部に行って、父上様を連れてご飯。しない?」

「え、良いの?お邪魔しちゃって。」

「うん。ついでにお泊まりしても良いよって、突然だけど。」

「じゃあ行こうかな。」

「やったーーー!んち、面白いもんな。」




 サクラとナルトは頷いていこうとする。




「サスケは、どうする?」




 気遣わしげにを尋ねると、サスケは少し考えるそぶりを見せた。





「嫌なら来るなってばよ。」




 ナルトがいつもの調子で吹き出すように意地悪く笑う。





「ナルト!!」

「うぎゃ!!」

「そういう風に突っかかっての努力を無駄にするんじゃないわよ。」




 叫ぶナルトの耳元で、サクラはこそっと言った。

 それはとサスケ、そしてイタチとの喧嘩をサクラも綱手から聞かされたからである。がサスケに気を遣っていることが、サクラにも透けて見えていた。




「危ないよサクラ。」




 は苦笑しながら、困ったような顔をする。





、斎さん、何か言ってたか?」





 サスケがを振り向いて、静かに問う。





「なんか、イタチみたいなことを言うのね。サスケ。」





 は少し訝しんだ。つい先日、イタチも似たようなことを言っていたのだ。

 父は何か知らないことを随分知っているのだろうかと不思議に思いながら言うと、サスケは酷く不快そうな顔をして、眉を寄せた。





「いつまでたってもおまえはイタチイタチだな。」




 の発言は頗るサスケの機嫌を損ねたらしい。




「そういう言い方ってないだろ。サスケ。」




 ナルトがサクラの肘に殴られた腹を押さえながら、サスケを睨む。




「事実を言ったまでだろ。」

「イタチ兄ちゃんはの婚約者だから、おかしくねぇだろ?」




 とイタチは許嫁同士だ。それならば、話が出てもおかしくはない。

 だが前から、サスケはがイタチのことを話すと酷く嫌な顔をした。それは最近とみに酷いのだ。ナルトがを庇うと、ますますサスケの機嫌は悪化した。




「それがどうした。いちいち細かいことにまで口出してくんじゃねぇよ。」




 サスケがぎろりとナルトを睨む。




「そっくりその言葉を返すってばよ。に細かいことまでぐちぐち当たって、いい加減にしろよ。」





 ナルトも負けじと言い返した。




「サスケ、おまえなんで、最近に突っかかるんだってばよ。」




 ナルトは青い瞳でサスケをまっすぐ見据える。

 ともめ事があってからサスケはに頻繁に冷たい言葉をかけるようになった。ナルトに対しては確かに頻繁にあったし、前も確かにサスケは不用意な言葉を他人にかけることはあったが、故意的ではなかったし、に対しては照れ隠しのような部分が見え隠れしていた。

 だが、最近は完全に違う。




「鬱陶しいんだよ。おまえも、も!」




 苛立っていたのか、サスケが叫んで手を振った。

 それは里から優遇されるように師を与えられたやナルトへの嫉妬でもあった。二人は同期で、サスケにとってはライバルだった。彼らは優秀な師を与えられ、修行を積んでいる現状で、本来のサスケの師であるカカシは任務に忙しく、サスケに手をかけていられない。

 イタチに負け、打ちのめされているサスケにとって、それは酷く酷な状況だった。




「こんなところで、やめてよ。」





 サクラがにらみ合う二人に縋るように言う。




「ここは町中よ?」




 また処分を食らうと、暗にサクラはほのめかす。本気でにらみ合うサスケとナルトはサクラなど眼中に入っていない。




「別に修行場だったらいいわけだろ?」




 人を巻き込む可能性がある場所での私闘は禁じられている。だが、下忍同士ぐらいのお互い同意の上の決闘は基本的に明るみに出ないため、場所さえ選べば出来ないことはない。

 は二人を交互に見て、ぎゅっと腕の中の猫を抱きしめる。


 なにが、だめなのかな、


 そう思う心は、まだ消えない。猫だけがにゃあと、を慰めるように泣いていた。


( さいなむ )