うちは一族の反乱の知らせのせいか、朝方3時過ぎにもかかわらず、木の葉は酷く明るかった。
松明がゆらゆらと揺れ、沢山の忍が外に出ている。
火影の所に行けと父に言われ、は大通りを走っていた。父の斎はと言うと、暗部の本部に向かうと言っていた。
明け方とは思えないほど、通りは騒がしい。
イタチは直接うちは一族の反乱を鎮圧しに行ったそうだから無事か心配だと言うのもあるが、何よりもサスケが心配だった。サスケはどうしているのだろうと透先眼を開いて探す。彼はうちは一族の計画を知っていたのだろうか。知っていれば彼も何かいわれを受けることになるだろう。
「!!」
道を走っていると、突然横道から声をかけられた。
「へ?」
がそちらに顔を向けると、そこにはサクラがいた。サクラも走ってきたのか、はぁはぁと息を切らしている。
「、あんたは大丈夫?」
「え?」
「うちは一族の一部が里の東側を襲ったらしいのよ。まぁ、予想はしてたから暗部とか、他の人が配備されていたらしいんだけど。」
里には高い城壁があり、うちは一族は東側の奥に住まっている。近くには森もある。事前にうちは一族の反乱は漏れていたのだろう。今頃現行犯で忍びに押さえられているはずだが、一応警戒しないわけにはいかないし、何人か怪我人が出ていた。
対しての一族である炎一族はそもそも壁の外にある森に住んでいるので、場所が違うためなんの報告もなかったし、影響もなかった。
「え?でも暗部がうちは一族自体の鎮圧に当たってるはずじゃ・・・」
「うん。でも、二手に分かれてしまって逃げた一派がいたんだって。」
サクラはの様子を確認してひとまず安堵したのだろう、息を吐いて言った。
「そんな、サスケは?」
「・・・、里を出たって、噂、よ。」
「え?」
「音の里の忍びもこの襲撃に荷担してるって言うの。」
「そんな。」
うちは一族は里で主導権を持つために、先代の火影を殺した音の里とすら、手を結んだとでも言うのだろうか。
は呆然として、言葉を失う。
「うん。信じられないのは分かる。でも、本当だって。」
里の忍び達には動員令が出ているらしく、人が駆けていく。その中でふたりはただ信じられない思いで呆然と立ち尽くしていた。
うちは一族の反乱。
内部での反乱自体が驚きだが、それが自分の友人に関わることとなれば、なおさらに人ごととは思えない。そして子供の自分たちにはどうしたら良いのか、到底分からなかった。
「、なら、サスケ君を探せるよね。」
サクラがの手を握りしめて、縋るように言う。
「サスケ君、きっと困ってると思うの、だから。」
泣きそうな彼女は何かを知っているのだろうか。
「うん。そうだね。そうだよね。」
は慌てて頷いて、透先眼で里の中を確認する。だが、サスケは里の中にはいないようだった。
「・・・里に、いない?」
うちは一族が反乱を起こしたのに、一族であるサスケが里を出ている。それが不思議でが首を傾げると、サクラがの手を握る手に力を込めた。
「サスケ君、音の里に行くって。」
「え?」
「夜中に、私サスケ君に、会ったの。わたしも意味が分からなかったんだけど、この反乱のことを聞いたから、もしかしたら、」
反乱のことを知ったのかも知れないし、知っていたのかも知れない。そして、
「あのねサクラ・・・父上様が、イタチが密告したって。」
「え?イタチさんが?!」
「うん。イタチが、密告したって。」
イタチが、自分の一族の反乱を暗部に報告して、鎮圧に当たった。だからこそおそらく里側の犠牲者は少ないだろうし、準備も万端だっただろう。
確かに騒がしいが、既に暗部が配置済みだから、避難などの指示は全く出ていない。
「それって・・・」
うちは一族を裏切った、と流石に言うことは出来ず、サクラはただ言葉を濁した。
サスケは、知っているのだろうか。イタチが裏切ったことを。そしてうちは一族が反乱を起こそうとしていたこと、起こしたことを。
「・・・追う、よ。」
は透先眼で里の外を見つめる。
「綱手先生の所に行く予定だったんだけど、行けないって、言っておいて。」
火影の所に行けと言われたからには、理由があるのだろう。父は基本的に怒らないが、流石に言づてもせずに行くわけには行かない。
サクラに言って、里の外を透先眼で探す。すると音へと向かうサスケの姿を視認することが出来た。距離を測り、は深呼吸をする。
「つ、綱手様?」
「うん。わたし、サスケを連れ戻しに行ってくる。」
最後に会った時の彼の様子も酷く気になっていた。
何を自分に向けて言いたかったのだろう。
だから、それを聞きたいという思いもあった。
だが、サスケは走るのが速いし、サクラが彼に会ったのは数時間前だと言うから、が走って追いつくのは難しいだろう。
は自分の手を噛む。それはが初めて使う口寄せの術式だ。苦手なのは苦手だが、最近はうまくいくようになった。
現れたのはよりも体高の高い、3メートルはあろうかと言う白い狼だった。
「?」
「うん。こっちなら多分、サスケに追いつけるから。」
この犬神は蒼一族にずっと仕える犬神で、走るのが速い。掴まっておくには少しこつがいるが、全力疾走すればサスケに何とか追いつけるだろう。
白い汚れのない毛並みを撫でると大きく遠吠えをあたりにとどろかせた。
「手伝ってね。」
はその白い毛並みに抱きつく。
自分で彼を呼び出すのは初めてだ。幼い頃、父に呼び出された犬神と遊んでいたことはあったが、これからは自分の力で彼の力を借りる。
「、サスケ君を連れ戻して。」
サクラは縋るような瞳をに向けてくる。どうだろうか、と心の中では思いながらも、サクラを慮って笑った。
「うん。行ってくる。また後でね。」
は少し苦労しながら犬神の背中に上がろうとする。だが体高が高くて、犬神はしゃがんでくれたが、いまいちうまくいかなかった。
「あ、う、わわ、」
あたふたしていると、業を煮やしたのか犬神が鼻先での体をぐいっと持ち上げて背中に滑らせた。鈍くさいに呆れたらしく、これでやっと出発できると犬神はふんと鼻を鳴らした。犬神は随分しっかりしているらしい。
「・・・気をつけて、」
サクラはもう一度を心配そうに見上げた。
「うん。サクラもね。」
は笑顔でサクラに笑った。
まだうちは一族の残党がいないとも限らない。同じようにそう答えると、サクラは泣きそうな顔をしていた。
は透先眼で外を見回す。
行くかとが思う前に、犬神が先に走り出してしまい、慌てて犬神の大きな毛皮にしがみついた。
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( 原点へと歩むこと )