狭苦しい部屋のセミダブルのベッドにとサクラ。
その下に無理矢理敷かれた二つの布団にナルトとイタチが寝ると言うことで、一応落ち着いて、就寝することとなった。
「なんかお泊まり会みたいだね。」
は楽しそうに笑って、ベッドの一段下あたりにいるイタチとナルトに言う。
「そうだな。」
イタチは笑いながら答えた。
食事が終われば風呂に入り、適当に就寝。明日は一日暇なので、みんなで修行して2年半の成果を比べ合おうと言うことになっているので、夜更かししても大丈夫だ。
「でもナルト、自来也様について、どこに行ってたの?」
「あっちこっち、点々だってばよ。もう自分がどこにいるのか分からない時とかもあったしな。」
「へーすごいねぇ。」
は病弱であった上、なかなか任務でも希少能力者であるため、他国に貸し出されることも少ない。綱手も今は火影でを連れ歩く暇はない。そのため、他国に行く機会がほとんどなく、興味深そうに目を輝かせる。
薄暗い部屋の中に光るのはカーテン越しの月だけだ。
「木の葉では変わったことあったのか?」
ナルトは少し不安げに、に尋ねる。
は暗部の現在の親玉である斎の娘だけあって、里の細かい情勢には詳しい。上忍だけあって情報も入ってくる。
は少し考えて「そうだねぇ」と言葉を紡ぐ。
「相変わらず、上層部と暗部の古株がくっついて、綱手先生と父上と上忍会がくっついてそれぞれいがみ合ってるくらいかな。」
ご意見番と言われるじじばばの塊の上層部は、時には火影をしのぐ程の権力を振るう時があり、火影の決定に何かと文句を言う。
最近では火影である綱手、暗部の親玉のの父斎、そしてシカマルの父シカクを中心とする上忍会が手を組んで、上層部の勝手は随分と減っていたが、今度上層部は暗部の古株達と手をつなぎ、対抗しようとしている。
昔からこの闘争は根深く、四代目時代に斎が暗部を取り仕切り始めたのもこの闘争が由来で、一族同士の権力闘争とも深く関わっており、またうちは一族のことでは暗部の古株たちも疑われている。
上忍たちは暗部の古株にも疑いの目をずっと向け続けており、もちろん上層部と暗部の古株どもの結託に対して決して良い印象は受けていないようだった。
「父上、簡単には譲らないからな・・・でも・・・」
へらへらしていて、簡単に押せそうで、全く揺らがないのが斎である。そんな父をよく知っているは、父が理解している範囲の物事が、簡単に上層部の思い通りに働かないであろうことは目に見えていた。
ただ、彼とて万能ではない。見逃すことはある。
イタチの件に関しても、大方上層部や暗部のせいで見逃していた部分があったと、後から斎はとても怒っていた。木の葉とて、一本の考え方ではないのだ。
ちなみにも父に似て、上層部が大嫌いだったりする。
「なんだかんだ言っても斎先生は若いからな。」
イタチもの思案に苦笑する。
斎はまだ30代前半と、と同年代の両親よりも一回りほど年が下だ。忍びとして働き出すのが早かった上、結婚が早かったというのが、やはり年齢で侮るものもいる。
まだ十分若造がと罵られる年代なのだ。ただ、若いからこそ他の若い者がついてくると言うのも事実だ。人望は厚い。
「わたしたちもまだまだひよこなのですー。」
は笑いながら枕を抱きしめる。
「そうなのよねー。」
サクラもに同意して、枕を抱きしめるの上に乗っかって、下にいるナルト達をのぞき込んだ。
「ふぎゃー・・・」
が間の抜けた変な声を上げてつぶれたまねをする。
「ちょっと。大げさよ。私がすっごく重たいみたいじゃない。」
「まぁ、よりは重たいよな。」
とサクラではサクラの方が身長が大分高い。当然それに比例してサクラの方が体重が重いのは自然なことだと思ってナルトが言った言葉だったが、それは女性に対しては禁句だ。
サクラは思いっきりナルトにクッションを投げつけた。
それは手前にいるイタチに当たりそうになったが、持ち前の反射神経で避けたため、見事にナルトの顔に命中。ナルトが後ろ向きに倒れる。
イタチが前にいたため、予想外だったらしい。
「いって――!」
怪力のサクラの投げた枕はなかなかの威力だったらしく、中身が一部破れていた。
「サクラぁ・・・」
は自分のクッションが壊れたのに抗議の声を上げる。セミダブルのベッドにおいてあるクッションの半分以上はイタチのではなくのだ。それをサクラは枕代わりにしていた。
「・・・ごめん、新しいの今度買って来るわ。」
サクラはの頭をくしゃりと撫でて謝る。
「うん。今度は緑ぃのが良いな。」
サクラがクッションを壊したのは初めてではないらしく、随分の態度は慣れていた。
「次はビーズクッションではなくて、綿とか羽根とかの方が良いかも知れないな。」
中身が重たいため、投げたりした時にビーズクッションは破れやすい。イタチはわかりやすい助言を一応して、小さく嘆息した。痛む頭を押さえながらナルトがイタチを見ると、イタチは眉を寄せて唇の端を引きつらせていた。こちらはサクラの怪力に慣れていないらしい。
サクラは何度もここに来ているようだから、何度となくやりとりに巻き込まれたことがあるだろうため、助言の口調だけは慣れている。
「まぁナルト君の修行の成果は明日見せてもらおう。とサクラは、強くなったぞ。」
頻繁にふたりの修行を見ているイタチは笑いながら枕の上に肘をついて、ナルトを見る。
「特にサクラは根性と力が違うからな。」
「どういう意味ですか。イタチさん。」
「まぁ、そういう意味だ。」
根性はともかく力とは怪力のことを言っているのか、ひとまず絶妙な言い回しだ。
ナルトは少したじろぐ。確かにサクラとの様子は、前のように戦いにおどおどしたり、恐れたりする様子はみじんもなくなっている。だが、それはナルトだってそうだ。
「お、俺だって強くなったってばよ。」
ナルトは負けじと言う。
「そりゃそうだろうが。二人はなんと言っても今の木の葉ではびっくりするほどの成長株だ。俺の目から見ても、な。」
「もうナルトにも負けないよね。」
「もちろんよ。男なんかにまけてたまるもんですか。」
イタチからの太鼓判に、とサクラはにっと二人揃って笑う。
「ちなみに、二人はよく同じ班で任務に出るのだが、男性陣が出る幕がないことも多数らしい。何かいらないことを言って肋骨にひびを入れた人間もいるそうだ。ひびだけですんだのは稀な例だから気をつけた方が良い。軽く死ぬぞ。」
イタチがこそっとナルトに耳打ちをする。
先ほど枕を投げ連れられていたナルトは目をぱちくりさせて、サクラを見る。要するにイタチは先ほどのように軽口を叩いてサクラに殴られれば、死をさまようほどの怪我を負いかねないと警告しているのだ。
ナルトがサクラを青い顔で凝視していると、サクラはにこりと笑った。
「イタチさん。それどこから聞いたんですか?」
「情報源はその人の身の安全に関わるので、秘匿としておく。」
「え?それって、キバから聞いたんでしょ?中忍にひび入れた時、一緒にいたもん。それに、後からイタチに会ったってキバ言ってたし。」
イタチは報告者を庇ったが、それをがあっさりと打開する。だが、報告者がどのような目に遭うかまでは考えていないようだ。サクラはの頭を撫で撫でした。
「・・・・」
イタチは否定も肯定もしなかった。だが、それが答えだった。
気楽
( 気分が楽なこと )