カカシとの模擬戦が行われたのは、お互いの能力を確認し合った翌日のことだった。
「え?手加減なし?良いの?」
ちょっとはしゃいだ声で、がカカシに言う。
「・・・うんそうだけど、お願いだから、俺の頭をぶち抜くのだけはやめてね。あくまで体術とその延長の術だけね。」
カカシはが敵の要塞をぶち抜いた任務の時、違う班だったがその光景を見ている。
ほんの半年前の話だ。
「、一応これは鈴をとる演習だからね。」
「わかってるよー。」
サクラに釘を刺され、は少しむっとして頷く。
「・・・なんか、がいじられてるってばよ。」
ナルトはここ数年里から離れていたため、がどういう術が得意なのかを知らない。そのため、不思議そうに首を傾げる。
「の術はでかいのよ。また威力がごついのばかりで、その辺のチャクラコントロールがまだね・・・。」
サクラは目を細めて事情を説明する。
身長の方はいまいち伸びなかっただったが、ここ数年で確かに能力的には異常なほどの成長を遂げた。暴走しがちだった自分の白炎をコントロールするようになり、めざましい発展を遂げたとサクラも言い切れる。
が、小さな体に寄らず、チャクラが大きいため術のサイズがばかでかい。
挙げ句大きな術を繰り出すのは得意だが、威力を小さく絞るのが難しいらしく、チャクラも多く、ふんだんに使えるため、気にしない。
結果的に、岩で出来た要塞を一瞬でぶち破る大技を会得したくせに、演習の時に忍の後ろの森ごと全部燃やした、なんてこともあった。
当然、そんなこと里にいなかったナルトが知るはずもないが。
「さて、説明が終わったところで、始めますか。」
カカシは本を閉じた。
かつては本を持ったまま演習をやっていたが、それも達の成長を見越してと言うことだろう。写輪眼も開いて、本気の臨戦態勢だ。
「じゃあ、いくってばよ!」
ナルトが開始の合図も聞かずに手裏剣をカカシに投げつける。当然カカシもそんなものは予想済みで、手裏剣を巧みに避け、投げ返す。
「ちっ、影分身の術!」
ナルトは空中で影分身をし、自分の本体を手裏剣から逃がした。
ナルトは次の瞬間、カカシに後ろをとられたが、その後ろをナルトの影分身がとり、カカシにクナイを突きつけていた。
「ま、せっかちなのは変わってないけどな。」
カカシはにこりとナルトの成長に笑って、言った。
「じゃ、スタートだ。」
言葉と共に、彼の姿がかき消える。
「なるほどね。」
も納得し、ちらりとサクラを窺う。サクラもに目配せをしてが目で地面を見たのを確認して、にやりと笑った。
「下ね!!」
かけ声と共に、思いっきり地面に拳を突き立てる。途端辺り一面が陥没し、ナルトは呆然とした。
チャクラはそれ程多くはないが、一点集中、緻密なチャクラコントロールを身につけているサクラの攻撃は、恐ろしい。
おそらく近距離では無敵ではないだろうか。
地面が陥没するほどの衝撃だ。生身であれば一発でKOどころの怪我ではすまないだろう。軽死ねる。
「わっ!」
ナルトの驚きの声を無視し、はサクラが作ったがれきの中に隠れるカカシを既に見つけていた。
「白隼」
白炎の球体から、一直線にビーム状の物体が射出させる。
「ちっ、」
カカシは珍しく舌打ちをして、それを術で防御するのではなく、完璧に体術で回避して見せた。流石に動きが速い。
「でも、」
は余裕綽々でへらっと笑う。
「・・っ、」
「てりゃぁ!」
サクラのかけ声と共に、思いっきり鋭い蹴りが繰り出される。カカシの背後だ。カカシは何とか紙一重で回避したが、その崩れた体制を狙うように、白隼のビームが襲いかかる。
「もう一発!」
サクラが叫んだため、カカシは距離をとるために白隼がの位置から絶対に飛んでこない、の死角を狙って距離をとろうとしたが、甘かった。
ちりん、と音がしてカカシの腰につけてあった鈴の紐を白隼の一閃が切る。
「機動力があるのかっ、」
いつのまにか白炎の球体はカカシの背後にあった。
今までの経験上あの球体はの周囲を移動しないと思い込んでいたが、そうではないらしい。サクラが落ちた三つの鈴をとろうとする。
だがカカシの行動も速かった。
その鈴を思い切り蹴り上げたのだ。
「えっ!!」
予想外の行動にサクラは目を丸くする。
鈴はそれぞれの方向に飛んだがカカシがうまく回収する。彼が取り損ねた1つを何とかサクラは捉えた。
「1個げっとおおお!」
サクラが歓喜の雄叫びを上げる。
カカシは複雑な顔をするしかない。近距離戦闘が得意のサクラをおとりにした、の遠距離攻撃は、正直響くものがある。ましてやサクラが盾になってへの攻撃が届かないのだ。
「・・・なるほどってばよ。」
ナルトもとサクラの戦略を理解したらしい。
「、指示頼むってばよ。」
元々ナルトも近距離が得意だ。二人の戦術にあわせるのは非常に容易なことだ。ナルトもの前に立って、戦術にあわせることを二人に意図する。
1人でだめでも、三人なら出来る。
それに二人で鈴を一つとれたのなら、三人でなら全部の鈴をとることが簡単にできるはずだ。
「えへへ、今度は負けないよ。」
が楽しそうに、笑って見せる。彼女はこの演習が始まってから、全くと言って良いほど動いていない。
その上は血継限界・透先眼を持っている。
この目は基本的に千里眼の能力を担うため、彼女には前方包囲の視界があるし、この辺り一帯を基本的にすべて見渡すことが出来ている。
カカシが隠れたとしても簡単に見つけ出すことが出来るのだ。
彼女は常識を知らないし、日頃は穏やかでぼんやりしているように見えるが、頭の回転は速いし、賢い。
彼女が司令塔に立つというのは、考えの少し足りないところのあるナルトを補うものであり、同時にの近距離戦闘に対する弱点をナルトが補う。
「・・・こりゃ、俺、やばい?」
カカシは唇の端を引きつらせる。
「そう簡単に負けないわよ。さすがに。」
サクラがにやっと人の悪い笑みを見せて、拳を楽しそうに握りしめている。はと言うと、相変わらずとても嬉しそうで、楽しそうだ。
いつも無邪気なのその笑顔が悪魔のように見えたのは、後にも先にもそれが最後だった。
成長
( より上にステップアップすること )