すぐにカカシとナルトは戻ってきた。




「楽勝だってばよ!」




 うちは一族のイナビは完全にナルトの攻撃で昏倒している。

 は彼の処理を式紙で他の木の葉の隊に連絡して、イナビの保護を頼み、それから全員で我愛羅を追う任務へと戻った。




「・・・あいつは、なんだったんだ?」




 カカシはやサクラの微妙な雰囲気を感じてか、尋ねる。




「わかんないけど、多分うちはの?関係者?」





 は眉を寄せて言った。






「え?そうなの!?」




 同じように男の会話を聞いていたサクラはあまりに違う意見を持っていたため、とカカシの会話に割って入る。




「え?どうして?」




 の方がサクラの見解に驚きの声を上げた。




「だって、なんか炎一族のことを心配してるみたいだったじゃない。」




 男はうちは一族に関わることは炎一族のためにならないとを諫めていた。だからサクラはてっきり男は炎一族の動向に気をかけているのかと思っていた。





「違うよ。彼は最初に言ったでしょ?うちはに関わるなって。」





 はサクラに人差し指を振って、サクラの言葉を否定する。





「じゃあ何?うちは一族に手を出すな、炎一族なんて嫌いだってことなの?」





 離反したうちは一族を狩っているのは、おおまか炎一族である。そのことをあの仮面男は根に持っているのだろうか。





「そういう風には、まったく見えんかったのぉ。」





 チヨも会話を聞いていたが、仮面男から炎一族に対する敵意はまったく感じられず、むしろ里に利用されている現状に憤りを覚えているようだった。

 サクラはが言うとおり彼をうちは一族の関係者でうちはを庇っているとすると、うちは一族の離反者を現在狩っている炎一族に対する敵意があっても良いはずだ。

 しかし、言動から察するに、彼はどう考えても炎一族に敵意を持っているふうには思えなかった。




「それも違うよ。多分。」





 はむーと走りながらちょっとむくれて見せる。




「どういうことだってばよ?」




 ナルトは難しいことが嫌いなので、要領がつかめず、頭を悩ませる。





「んー、うまく説明できないけど、んっと。」

「ちょっと待って。何を感じたのか、ちょっと言ってみんさい。」





 カカシが足を止めて、状況をまとめるようにに促す。は犬神を止めて、うーんと腕を組む。カカシは人の感情の機微に関してが非常に鋭いのをよく知っている。そして何よりもそれが酷く重要なことのような気がした。




「彼はうちはが大事だと思ってるよ。っていうか、うちはじゃ、ないかなぁ・・・」

はあの男を見た記憶があるか?」





 数年前まで、うちは一族と炎一族は非常に仲が良く、お互いに色々出入りもしており顔見知りも多い。

 は体が弱かったため多くの場合外に出ていないが、彼女は記憶力が良く一度見た顔は忘れない。うちは一族にいる限りは一度くらい、一瞬は見かけているだろう。




「それは・・・見たことない。」




 の答えは、あの男がうちは一族だと仮定した場合、反乱の時に逃げたうちは一族ではないことを示している。




「だが、うちは一族で反乱以前に抜け忍になった奴はいないぞ?」





 カカシはに確認するように問う。だから、仮面男がうちは一族であるとは考えにくい。しかしにはその事実を知っていても、納得出来ないものがあるのだろう。





「根拠は?」

「見切り。彼はサクラとチヨばあさまの動きは完全に見きってた。でも、わたしのはそうじゃなかった。」




 一般の忍の動きは、写輪眼で簡単に見抜ける。

 しかしチャクラを色で見分ける写輪眼に、透明のチャクラを持つの動きは見きれない。仮面のせいで写輪眼は見えなかったが、あれは写輪眼での見きりではないかとは感じた。





「あとは、うーん、なんて言ったら良いかわからないけど・・・気持ち。」




 はぽんっと自分の胸を叩く。




「里は多分すごく嫌いだと思う。わかんないけど、すごく、嫌いで。わたしたちがうちは一族を狩っている“意味”を、知ってるから、わたしのことは嫌いじゃない。」

「里と、炎一族を別個と考えている、と言うことか?」

「うん。そうだと思う。」




 カカシの質問の意図は大きい。

 ほんの十数年前まで、里と炎一族は友好関係にあったが、それでも全く別個のものだった。忍界大戦時にも、炎一族が木の葉の里側として参戦したことはない。協力したこともない。

 炎一族が急速に里と融和し、里の忍として働くものが増えたのは、現在の炎一族宗主・蒼雪が家出をし、木の葉の里で忍として働き始め、忍であった斎と結婚してからだ。現在では里の名家として扱われることが多いが、ほんの十数年前までは里とは別物だったのである。

 仮面の男がその考え方を引きずっているとなると、年齢的にはカカシ達と同年代、もしくはそれ以上と言うことになるだろう。




「・・・・・・気をつけるに超したことは、ないな。」




 カカシは納得したようにの話をまとめる。

 うちは一族の写輪眼に対しては対策がいる上、それ程の年齢のものになると他の写輪眼を持ち合わせている可能性も高い。

 その男が暁に所属しており、里に敵対心を持っているならなおさらだ。





「行くってばよ!」





 ナルトが全員に叫ぶ。それを合図のように全員がまた、走り出す。も慌てて犬神にのった。だが、は何かが引っかかるのか、まだ何かを悩んでいる。





、まだ何かあるのか?」

「カカシさんさぁ・・・父上以外の蒼一族の人って、何人知ってる?」





 カカシが隣に並んで走ってくるので、は心の中の疑問を問う。

 実はは炎一族として育っていたため蒼一族のことを知らない。そもそも蒼一族は斎としかいない一族で、有名とは言え既に一族としての形式から瓦解してしまっている。

 予言という特殊な能力から有名なのであって、既に人数としては50年前の時点で15人を下回っていたと言う。要するにその能力から有名なのであって、50年前には一族と言うほどの人数がいなかったと言える。




「あの仮面男、わたしに父上は知らないけど、蒼一族の者は総じて甘い考え方をするものが多いみたいなことを、言ったの」

「総じてってことは、数人は知っているってことか。しかも斎さんの他に。」

「うん。」





 の言葉にカカシはと同じ懸念を持つ。

 の父・斎を知らない。そうなると斎の前の世代の蒼一族の者を知っていると言うことになる。斎の両親は、斎が12歳の時に亡くなっており、斎より3,4歳年下になるカカシは当時9歳。ちらりと彼の両親を見たことはあるが、性格を知るほどではなかった。

 またそもそも蒼一族の能力者は基本索敵、作成立案に携わることが多く、考え方まで知るほど彼らが外の任務に出向くことは少ないはずだ。

 仮に仮面男が斎と以外に二人以上蒼一族を知っているとなると、もっと昔と言うことになる。







「・・・戻ったらその話をイタチと斎さんに出来るか?」





 カカシが知る限り、ここ20年ほどうちは一族にこの間の反乱以外での抜け忍はいないはずで、いても殺されている。だが、一族という形式上、知られていないだけという可能性もある。

 代表者の息子であるイタチなら僅かなりとも知っているだろう。




「わかった。」





 カカシに言われて、も納得したように頷く。

 一族にはそれぞれの一族の者しか分からないことがあると言うことを、は誰よりも承知していた。



秘密 ( かくされていること )