「・・・見えないの・・・」
大きな岩の中を透視しようとして、は眉を寄せる。
透先眼は基本的にすべての現在の状況を見通せるが、結界がはられていたりすると中を視ることが出来なくなる。
だが、その情報だけで、カカシやナルト達にとっては十分だった。
要するにここに、見られたくないものが隠されている。そういうことだ。
大きな岩出入り口がふさがれており、中は洞窟のようになっているようだった。岩には札が貼られている。これが結界の要となっているようだ。
「、壊せるか?」
カカシはに尋ねる。は他人のチャクラを焼く白炎を持っているため、術を無効化することが出来る。
「うん。燃やせるよ。」
が指で札に触れれば、途端に札は端っこから黒ずみ、灰になっていく。そしてが岩から飛び退いたと同時に、サクラが叫んだ。
「行くわよ!!」
彼女は思いっきり岩を殴りつける。
大きな岩にひびが入ると同時にぼろぼろと土煙を上げて入り口が見える。カカシの合図と同時に中へと入り込めば、そこは天井こそあるが大きな空間になっていた。
中央から少し奥に行ったところに、3つの人影がある。
一つは横たわり、二人がその上に座る形だ。
一人は金髪の男で、一人は傀儡の中にいる。おそらくサソリだ。
「さて、人柱力はどいつかな・・・うん。」
金髪の男が、楽しそうに笑って、カカシ、チヨ、ナルト、サクラ、そしてを順に見回す。
「てめーら!!ぶっつぶす!!」
ナルトが高らかに叫べば、金髪の男と、サソリは納得したらしい。
「あいつか。」
「そうだな・・・うん。」
互いに頷きあい、ナルトを確認した。
は熱くなるナルトを横目で見ながら、カカシを窺う。彼は困ったような顔で同じくナルトを見ていたが、に目配せをしてきた。
「我愛羅!立てよ!!何そんなとこで寝てンだよ!!」
ナルトが大声で叫び、金髪の男の下で横たわる我愛羅を叱咤する。
だが、それは無意味だ。
やカカシ、チヨ、サクラも同じように表情を歪める。もしも生きているなら黙って横たわっているような忍はいない。
「・・・わかってんだろ。」
金髪の男が、ナルトをあざ笑うように言った。
「我愛羅を・・・我愛羅を返せ!!」
「やめろ!!」
ナルトが男達に突っ込もうとするが、カカシが慌ててそれを止める。
この二人の一人が赤砂のサソリで、もう一人も暁のものとなれば手練れだ。戦略もなく突っ込めば無駄死にすることになる。
「どうやら、あの人柱力はこいつを取り返したいらしいな。うん。」
「らしいな。」
敵の二人もナルトの単純な行動パターンが見てきたらしい。
「また少しでかくなったな、小姫。」
サソリは涼しげな、男性としては少し高い声音で言って、を見やる。
「サソリ・・・おまえ。」
チヨの低い声音が響き、何とも言えない傀儡のような容姿をした男を睨み付けた。だが、サソリと呼ばれた彼が別段驚く様子はない。
マイペースそのままに、くるりとやってきた面々を見回す。
「・・・いや、そうでもないか。」
サクラやナルトを見て、はあまり外見的には成長していないと気づいたらしい。サソリは言葉を訂正する。
しばらくを見ていなかったからサソリにとってはそんな気がしただけの話だ。
「・・・む。」
はサソリの言葉に眉を寄せる。
「あぁ、別に他意はねぇよ。気にすんな。身長があんま伸びなかったなって意味だ。雪も斎ものっぽだからな。」
サソリは面白そうに軽口を叩いて、傀儡の尻尾をひらひらさせてみせた。
の両親の蒼雪も斎も確かに長身だが、なんのフォローにもなっていない。実は背が伸びなかったことを結構気にしているだ。
だが、そんなくだらないことを言っている場合ではない。
「・・・サソリ、なんで。」
複雑な再会には目を伏せる。
「・・・、さぁな。意見の違いって奴じゃねぇの?」
サソリは相変わらず尻尾を振って、に素っ気なく答えた。
「意見って?」
「斎と俺とでは、全く意見が違うって話だ。」
サソリとの父母、斎と蒼雪は幼なじみだ。
昔はそれなりに行き来もしており、鬼ごっこをして蒼雪に炎であぶり出されて偉い目に遭ったとサソリから聞いたことがあるほどだ。幼い頃は仲も良かったのだろう。
だからこそ、サソリは斎と蒼雪が結婚し、が生まれてからも時々屋敷を訪れ、を遊んでくれたこともあるし、彼が大好きだった。
「・・・意見って、なんの?」
「未来の、考え方。かもな。」
「教えてよ。もう子供じゃないんだから。」
別に簡単な説明をしてもらわずとも、もう分かるはずだ。
は何とも言えない気持ちになって俯いていたが、慌てて顔を上げて目の色を変える。慌てて刀を抜こうとするが間に合わず、もう片方の手で防ごうとしたところを、男の手に掴まれた。
その次の瞬間、の姿はかき消える。
「!!」
カカシも驚いて叫んだ。先ほどの仮面の男の顔が一瞬見えた。
「・・・時空間忍術か?!」
の動きは正直同年代の中でも非常に速い。
もしも僅かでも時間があれば白炎が相手の術のチャクラを焼いて術を無効化しただろう。だがその暇すら全くないほどの一瞬だった。
仮面の男はに興味を持っていたと言うし、は希少な血継限界を持っていることから、すぐに殺すとは考えにくい。だが、どこに飛ばされてのか、見当もつかなかった。
「おまえら、に何を!?」
カカシはサソリともう一人の男に叫ぶ。
「トビ、あのちびっ子に興味があったのか?・・・うん?」
金髪の男が不思議そうにサソリに声をかける。
「・・・・多分な。」
サソリの口調は相変わらず素っ気ない。だが、彼は事情を知っているようだ。
「てめぇら・・・!」
ナルトはが攫われたこともあり、声を荒げてますますヒートアップする。
カカシは今の現状を顧みる。
ナルトを押さえるだけでも大変だというのに、能力的に頼りのまでいない。ちらりとサクラを窺うと、サクラも酷く不安そうな顔をしていた。チヨがどの程度の使い手なのかは知らないが、この暁の奴らを4人で相手にせねばならないということだ。
しかしナルトのこの状態では、チームワークもあったものではないだろう。
仮面の男は明らかに手練れだろうし、の援護をしてやりたいところだが、今の状態では正直どうしようもない。
カカシは前途多難さに頭痛がする思いだった。
難航
( 難しいこと )