チヨの尽力で、我愛羅は何とか一命を取り留めた。




「・・・満足、だったのかな。サソリに会えて。」




 はチヨの墓を見て小さく呟く。

 彼女は孫に会いたがっていた。例え殺し合いを演じたとは言え、彼女にとって愛しい孫だったことに違いない。

 その孫は今も里を滅ぼすために暁に身を委ねているのだが。




、行くぞ?」




 ナルトがわざわざを呼びに墓の前にやってくる。




「うん。」




 は去ったサソリを思って、小さく息を吐いた。




「どうしたんだ?」




 ナルトの後ろから来たネジが、複雑な表情をしているに尋ねる。




「・・・世界って、何なのかなって思ったの。」




 サソリは言っていた。

 世界を変えたいと、戦いを無くしたいと言っていた。そしてそのための戦いであると彼は言う。

 それはどういうことなのだろう。

 戦いのない世界を作る戦いは、正しいのかも知れない。でも、それによって死にゆく人がいるのは、正しいのだろうか。

 そして世界が変われば、何か良くなるのだろうか。どうなるのだろうか。

 にはまだよく分からない。




「世界、か。どうだろうな。」




 ネジは少し考えるそぶりを見せたが、やはり答えが見つからなかったのだろう。曖昧な答えを返した。




「えー、俺その答え知ってるぜ!」




 ナルトは悩むネジとにあっさりと答える。




「木の葉と、友達!俺にとっての世界だってばよ!」



 あっさりとした、シンプルな答えがそこには存在する。

 彼が言い切るところを見れば間違いなく彼はそれを信じているのだと分かる。は軽く小首を傾げて彼を見て、「うん。」と一つ頷いた。




「じゃあ、わたしはイタチと家族と友達かな。」

「そんなシンプルな答えで良いのか?」




 ネジはあまりに単純明快な答えを出したナルトとに問うが、にはそれ以上の答えは見つからなかった。

 ネジも同じだろう。




「・・・サソリって、の父ちゃんの知り合いだったんだろう?」




 ナルトは思い出したかのように言う。

 カカシか、チヨ辺りに聞いたのだろう。の父である斎は、サソリと幼なじみだったという。斎の蒼一族は予言を司る一族で他里の忍達とも交流があった。

 サソリが幼かった頃チヨも現役だったというから、サソリは他の子ども達よりも他里の忍と触れあう機会が多かったはずだ。




「うん。たまにわたしの屋敷にも来てて。」




 優しかった、と言う言葉をは口に出すことは出来なかった。

 チヨに致命傷を負わせたのがサソリであるという話はもう聞いている。彼がにとって大切な人物であっても、その事実は変わらない。

 多分、とサソリはもう敵同士なのだ。




「斎さん。ショックかな。」




 ナルトは青色の瞳を曇らせる。




「・・・どうだろうね。」




 は父の心情を思ったが、いつも明るく笑っている父が落ち込んでいる姿など、到底想像が出来なかった。

 多分が尋ねても彼は笑うだろう。

 いつも通り屈託なく、人生に一点の曇りも無いとでも言うように。




「カカシ先生。大丈夫?」




 カカシは写輪眼の使いすぎで寝込んでいる。

 今から木の葉の里へと帰る予定だが、大丈夫なのだろうかと尋ねると、ナルトは「さぁ」と言うだけだった。




「ってか全く動けなくね?」

「だよね。」

「どうにかすると、言っていたがな。ガイ先生が。」





 ネジは酷く困ったような顔をして言っていた。

 ガイは熱血第一で、出来もしないようなことを無理矢理でもする時があるのだが、それでも限界というのはあるものだ。

 安請け合いは良くないのではといつもは思うのだが、まぁ彼が言うには策があるのだろう。

 そう思うしかもうあるまい。




「行こうか。」




 皆との待ち合わせは城壁の門の前だ。今から木の葉に帰還すると言うことになっている。

 チヨの墓からほど近い場所だ。

 ナルトと、ネジが行くと、既に皆が集合場所に着いていた。とはいえ、やはりガイとカカシの姿はない。




「やっぱり、無理だったんじゃ・・・」




 が言ったその時、カカシに肩を貸したガイがやってきた。

 やはり動きは遅いが、急いで帰るように指令も来ているし、サクラが持っている情報の件もあるので、木の葉に帰るのは早ければ早いほうが良い。

 と、思うのだがカカシはどう見ても走れそうではなかった。




「先生達おっそーい。」




 サクラは腰に手を当てて、怒る。

 ガイは早く行きたいのかカカシを既に引きずるようだが、サクラの言葉に苛立ちを増したようだ。

 そもそもガイはせっかちで、待てるような性格ではない。本来ならライバルに手を貸すのも嫌だと思う所だろう。




「犬神、のる?」




 は中型の犬神を口寄せで自分の足に使うべく既に呼び出していたが、この感じだとチャクラを使うが大型の犬神を呼んで、カカシも一緒に乗せた方が良さそうだ。




「大丈夫だ!俺が助けてやってるんだからな!」




 ガイは自信満々で言うが、やはり足取りは重い。

 似たような体格なのだから、肩を貸しても早く走れるわけじゃないし、カカシの躯からは完璧に力が抜けている。




「先生達、はやくー。とろとろしてたら日が暮れちゃう。」




 テンテンもガイとカカシに冷たく言う。




「やはりの犬神に乗せてもらうべきじゃないのか?」





 の提案は一番現実的だ、とネジは嫌そうな顔をした。

 すると苛立ちがたまったガイは、むっとした顔をしていたが、はっと目を丸くして、突然カカシを自分の背中に担いだ。

 その姿にナルト、、サクラ、そしてネジ、テンテンは沈黙する。

 そこそこ身長もある、それも30にもなりそうな男同士のおんぶは、何やらごついし、異様だ。悪い言い方をすれば、年甲斐もなくきもい。




「おっさんのおんぶか。予想以上にきついな。」




 サクラがぼそりとの方に呟く。




「・・・なんか、空気重たい。」




 日頃はあまり何も言わないも、思わずそう呟かずにはいられなかった。




「これで問題ない!みんな俺についてこられるかなーーー!?」




 ガイはその気合いのまま、カカシを背中に乗せて走っていく。

 確かにそのスピードは速いが、揺れる背中でカカシは既にぐったりだ。抵抗のしようがないだけに気の毒この上ない。




「トレーニングですね!先生!!」





 リーの羨望の眼差しを受けて、ガイとカカシの背は遠ざかっていく。

 それを見ながら、全員がため息をついた。


突飛 ( とつぜん とぶように )