懇親会だと言うことで、サイまで家に呼んでお泊まり会をしたのはだった。




「流石に狭いってばよ。」




 とイタチが同棲している家は火影岩から近く立地は良いが、決して広いとは言えない。リビングに残り二部屋というこじんまりした作りで、寝室は小さくてセミダブルのベッドが一つ、そして下に一枚か二枚布団がしける程度しかない。




「男は下で雑魚寝だな。」




 イタチは布団の敷き方を考えてもみたが、どう見ても隙間が布団一枚半くらいしかない。後はサイの寝相が良いことを願うしかなさそうだった。ちなみにナルトは既にあまり寝相が良くないことをイタチは知っていた

 里に帰ってきてから一度、泊まりに来たことがあるからだ。

 流石に自分の家とはいえど、女性を布団で寝かせる気にはならないので、いつもとイタチが寝ているセミダブルのベッドは、今日はとサクラのものである。




「良いんですか?」




 サイは初めてらしく、謎なことに大きな花束を持って来た。

 それは狭いこの部屋には不釣り合いな程立派な花束だったが、ひとまず台所に置いてある。台所ではとサクラがご飯の準備をしていた。とはいえ簡単に出来る上大人数が一度に食べられるため、すき焼きである。





「良いも何もが言い出したんだから、良いに決まっているだろう。」





 イタチは軽く答えて、腰に手を当てる。

 誘ったのはだ。元々そういうつもりだとも言われていたし、が友人を呼ぶのに、同居のイタチが反対する理由は全くない。





「でも、貴方と僕は。」





 サイは俯いて、言った。その後ろに続く言葉をもちろんイタチは知っている。

 イタチは今では暗部の主流派である斎率いる“樹”の所属である。対してサイは暗部の古株ながら現在では少数派のダンゾウ率いる“根”の出身だ。この二つの派閥はかなり仲が悪く、現在は斎派がほとんどだが、それでも“根”も、その名の通り根強く残っている。


 本来ならいがみ合っていてもおかしくはない。

 特に“根”の忍は、“樹”の忍を毛嫌いしている傾向にあった。ダンゾウもまた斎を理想主義者、楽天家と相当嫌っている。




「おまえはの友達だろう?」





 イタチは苦笑してサイに言った。





「それに俺たち“樹”は平等がモットーだ。もしおまえを“根”だからって理由で俺が追い出したら、俺は斎先生に怒られるだろうな。」




 統率機関“樹”の元にいる暗部の忍達は、サイが思っているほど“根”の忍を毛嫌いしているわけではない。もし仮にイタチがサイが“根”だと言うだけで嫌ったり、のけ者にしたら、そう言ったいじめが嫌いな斎に怒られるだろう。弟子であれ倫理に触れるならば、当然斎はかなり厳しく怒る。

 確かにダンゾウから見れば斎は甘く、理想主義者で楽天家なのだろうが、人道的な見地に触れるならば甘いわけではないとイタチはよく知っていた。





「…斎様、ですか。」

「おまえ、斎先生が苦手か?」




 サイの反応から見て取ったイタチは、サイに問う。




「えっと。」

「別に隠さなくて良い。俺も昔、あの人が嫌いだった。」

「え?」




 驚きの告白にサイの方が戸惑う。だがイタチの横顔は嘘をついているようには見えない。




「本当だ。弟子につく前、俺はへらへらしていて、そのくせに本心だけ見抜いてくる、あの人が大嫌いだった。」




 斎の弟子になる前の幼いイタチは、炎一族の婿で、上層部にも出入りしていて、実力もあってすごい権力を持っているくせに奔放でふらふらしていて、へらへら笑っている斎を軽率で、しかしその奔放さが羨ましくて、嫉妬も混じって嫌な人だと思っていた。

 しかし、イタチは弟子についてから、本当に自分が彼を嫌いだった理由を理解した。





「隠したい感情がある人間にとって、あの人はいつもで嫌な人だ。そうだろ?」

「…その通りです。」




 サイはイタチの見解に頷かざるを得なかった。あまりにその通りだったからだ。

 この間までサイには隠したい感情があり、隠したい目的があった。それを斎は平気な顔で、あの無垢な紺色の瞳で見抜いてくる。だから、サイはどうしても斎が好きになれなかったのだ。しかも嘘の笑顔を綺麗に見抜かれた。

 強がりも何もかも、あの男はすべてを見抜く。





「ま、直に慣れて隠すのが馬鹿らしくなったら、もう大丈夫だ。」

「馬鹿らしくなったんですか。」

「なった。全部見抜いてくるなら、猫を被る労力が馬鹿らしくなるだろう。」





 確かにイタチの言うとおりである。

 気にするだけあほらしいのかも知れないが、サイにとってなかなか今まで隠してきた感情を素直に表に出すのは難しいことだった。





「ま、直になれるさ。」




 イタチは軽い調子で言って、ちゃぶ台に用意されている鍋を見るべく、台所へと入る。





「どうだ?その鍋で出来るか?」

「うん。大丈夫そうだよ。」





 は笑って答えて、まだ戸惑いのあまりに立ち尽くしているサイを見た。





「サイも早くおいでよ。座って座って。」

「あ、うん。」





 サイは言われて、ちゃぶ台の側へと座る。

 正直こんな風に人と食事をするなど一体どれくらいぶりのことなのだろうか。イタチの隣に座ると、彼はサイにも皿を回した。





「ありがとうございます。」

「どういたしまして、あ、、箸が足りない。」

「ちょっと待って−。あ、あった。」





 はイタチに言われて箸を奥の棚から出してきて、サイの前に置いた。





「それにしても、イタチさん。手術終わったんですよね。良かったですね。」

「あぁ。ただまだ半年はリハビリだとか言われたぞ。」






 万華鏡写輪眼などは体にもなかなか負担がかかるために、禁止されている。激しい任務も禁止など、規定は非常に厳しかった。綱手もかなり心配してくれているのだとは分かるが、あまり規制をつけられるのはイタチとしても少し不満だった。

 とはいえ、綱手は怖いので守らなければならない。




「そっか。イタチが治ったら、リベンジして良い?」





 は箸を持ってじぃっとイタチを見る。






「おまえ、半年前のをまだ根に持っているのか?」





 半年前、とイタチは模擬戦をした。それも火影の許可をもらって本気のだ。

 イタチは不公平だと思って、イタチに封じられている白炎を使うことが出来るが、使わなかった。要するにイタチは万華鏡写輪眼を含め自分自身の実力で、も白炎と透先眼をフルに使ってと言う、希少血継限界の争いになった。





「別に構わないが、俺は負ける気はないし、おまえしつこいぞ。」




 イタチはに少し困ったように答える。





「良く言うってばよ。イタチの兄ちゃんも斎さんとの根に持ってるくせに。」





 ナルトがぼそりと言った。実はイタチも同じように半年前、また斎に負けたことをかなり根に持っており、病気で再戦できないことをぶつくさ言っていた。





「それはだな。」





 イタチはごほんと言い訳の代わりに咳払いをする。

 2年半前も言っていたことだが、今回もイタチは、斎に今回こそは勝てると思ったらしい。しかも今回はかなり本気だったそうで、須佐能乎まで使ったそうだが、今回も負けたそうだ。





「前回は何が原因だったんでしたっけ」





 サクラは軽い調子で肉の焼け具合を見て酒を足す。





「天石盾、蒼一族の透先眼の持つ瞳術の一つだ。」

「前も似たようなこと言ってませんでした。」

「その時は八咫鏡だったんだ。」





 イタチはため息をついて、項垂れる。結局どこも同じの気がして、サクラとナルトはイタチに冷たい目を向けた。






同類 ( 同じこと )