「あ、あそこだ。結構大きい二番目の所だ。アスマ班が一番近いな。」




 は犬神の背中に乗った状態のままで透先眼を開き、五つの換金所の場所と状態を確認する。

 水色の瞳が捕らえたところに寄ると、五つの換金所のうちアスマ班に一番近いところに敵が二人いるようだった。




「大鎌を持った男と、口元をマスクで隠した男。能力は不明だけど、どちらも暁の服を着てる。」

「アスマ班にすぐ連絡を!」




 ライドウが言うと、アオバがすぐに連絡用の鳥を放つ。

 はそれを確認してから、自分の頭の中に地図を思い描いた。アスマ班の距離を考えると、換金所までに五分。敵を見つけて戦いが始まるまでにおそらく七,八分。ここからその換金所まではおそらく三十分はかかる。

 他の班は他の換金所に直接派遣されていたため、遠い。




「アスマ班の戦闘時間は、10分から15分。それを持ちこたえてくれれば、わたしたちが援護にいける。だから、逃げられる可能性が少ないのなら、わたしたちの到着を待つのが得策だと思うよ。」




 は計算の答えを出して、アオバを見る。




「伝えました。すぐに、向かうとのことです。」

「援護が来るまで待った方が良いんじゃ無いかな。」

「アスマさんは、援護は後で来てくれれば良いと、逃がしても困るからと言うことでした。」




 確かに長い間手練れである暁を追跡するというのは難しい。ましてや換金所から出たところであれば油断をして襲うことも出来るかも知れない。それならば奇襲を仕掛けて確保してしまおうとすることは、十分に理解できる。





「確かに、アスマ先生強いしね。」





 チョウジは緊張していたため、口を差し挟むことは出来なかったが、独り言のように呟いた。

 彼は10班で、確かアスマの元について忍術を長らく勉強したはずだ。がカカシに対して敬愛の念を抱くように、当然彼らもアスマに対して特別な思いがあることだろう。今もシカマルは教え子としてアスマの班に配備されている。

 教え子や友人同士の方が、連携がスムーズだからだ。





「そういえば、のところ、カカシ先生はどうしたの?」





 いのは首を傾げる。

 はその希少な能力からどうしても任務に引っ張りだこになるので仕方がないが、今回の親切の20小隊にカカシの姿はなかった。彼ほどの手練れならば十分小隊長に任命されるのが然るべきだし、何故なのだろうといのは疑問に思っていた。





「実はナルトの新術の開発があってね。」 





 は犬神の上からいのに答えた。

 カカシは今ヤマトと共にナルトの新術の開発につきあっていた。も見に行ったがなかなか過酷なもので、斎が張った多重結界の中で行われていると言うのに、たまに衝撃が外に伝わってくるほど過酷な修行で、影分身のいくつかは九尾化したりと大変そうだった。






「奪還任務の失敗で思うところがあったらしくてね。んー、」

「そっか、サスケ君には、会えたの?」

「うん。元気そうだったよ。」

「…」




 まるで友人に再会してきたような軽い感想だった。

 里を抜けた男の奪還任務に失敗したというのに、そのの感想はどうなのだろうか。まだ失敗して落ち込むナルトの気持ちの方が分かるというものだ。ましてやと彼女の恋人のイタチはサスケの憎しみの大きな対象である。

 その憎しみを目の当たりにしただろうに、はけろりとした顔だった。それがいのの心を酷く不安にさせる。

 は素直で、可愛くて、純粋で、何も知らない。病弱だったから学校に来て、初めて外の世界を知ったから、頼りなくて、どこか守ってあげたくなるような、いつもそんな子だった。その彼女がどんどん変わっていく。鋭いはずの彼女が、サスケの向ける憎しみに気づかないはずなんてない。

 わかっていて、傷ついていないふりをしている。






は、」





 いのは口を開こうとしたが、それはすぐに遮られた。





「始まった。」





 は悲しそうな声音で、水色の目を細め、小さく息を吐く。





「良い?わたしがアスマさん達の戦いでわかる相手の能力を言うから、たたき込んでね。」





 透先眼は今起こっていることをリアルタイムでその目に映すことが出来る。今から始まるであろう戦いでわかる相手の能力を把握すれば、ついた時にすぐアスマ達を援護できるはずだし、作戦のたて方も今から考えることが出来る。





「あぁ。頼むぞ。」





 ライドウはの言葉に深く頷く。それは他の三人も同じだ。

 しかしまだ五人ともがアスマ達ならば大丈夫だと信じていた。心から彼らならばこの戦いに勝利できるはずだと、自分たちが援護するまで簡単に持ちこたえられるとそう思っていた。

 おそらくそれを疑っていなかったのは、アスマもだった。





勝利