は炎の大鎌を大きく振りかざし、真上から薄緑色の髪をした若い男へと襲いかかる。その次の瞬間イタチが火遁・豪火球の術でごと仮面の男とデイダラを吹き飛ばした。




「な、」




 仲間ごと、となんとか後ろに飛んだデイダラは驚きに目を丸くする。比較的木の葉隠れの忍は仲間を庇い、戦う傾向にあるからだ。




「ぐっ、」

「飃!腕とれてんぞ?!うん!」




 デイダラは思わず叫ぶ。




「外したぁ…。」




 炎と煙の中から無傷で出てきたはイタチの隣へと飛んで戻ると、小さくぼやく。

 飃と呼ばれている男に襲いかかったはその大鎌で致命傷を狙って振り下ろしたが、寸前のところで避けられ、失敗して左手を切り落としただけで終わったらしい。しかも白炎を付随させた炎は一度燃えうつると相手のチャクラを燃やし尽くせるはずだったが、どうやら男はあえて、白炎ごと残っていた部分の腕も切り落としたようだ。

 あの一瞬で賢い判断である。




「外したのは俺の方だ。」





 イタチは心中で舌打ちをし、息を吐いた。

 仮面男はデイダラの隣に着地する。どうやらイタチの方は男にかすり傷一つ負わせることが出来なかったらしい。




「火遁を避けたふうは、なかったんだがな。」




 ぼろぼろになっているデイダラ、飃と違い、仮面男は無傷だ。コートに煤一つついていない。炎に強いでも、流石に着物が煤で汚れているというのに。攻撃の手応えもなかった所を見ると、何かすり抜ける能力があるのかも知れない。ならば捕らえるのが難しい上、自分の身の危険を考えれば近接で戦うのは得策ではなかった。




「やってくれんじゃねぇか!」




 デイダラが大声で叫び、イタチを指さす。




「えー、あれって、写輪眼のうちはイタチと、炎のお姫様じゃないっすかーー!!」

「うっせぇトビ!」





 仮面男はトビという名前らしい。デイダラが大声で怒鳴って、明るく緊張感のないトビの言葉を止める。






「素性はばれてるね。」

「見たらわかるからな。」





 とイタチは顔を見合わせて小さく息を吐く。

 写輪眼を持っている者も、白炎を持っている者もそれ程多くはない。ましてやそれがセットで出てくるとなると、予想はつくというものだ。警戒してくるに違いない。




「俺達に気づき、迎撃に出てきたか。」




 飃は完全に切れた腕の所を止血し、冷静にそう言った。




「あれ?おまえ再生するんじゃなかったのか・・うん。」

「燃やされれば流石に無理だ。」




 飃は短く素っ気なく答え、腕は既に白炎に燃やされ跡形もない。

 飃の一族の治癒能力はすばらしく、チャクラが無くならない限り一瞬で体を治癒することも可能で、腕をくっつけることも出来る。しかし流石に白炎のように高温の炎をふせぐことは出来ないし、燃やされたものを再生することはできるが、流石に跡形もなく燃やされれば時間がかかる。




「俺の芸術って奴を見せつけてやるぜ!」




 デイダラがイタチとを指さして高らかに宣言する。





「芸術って、なに?絵とか?サイにしか見せてもらったことないんだけどな…」





 も戦いの中で芸術を感じることが全くなく、首を傾げる。

 正直色々任務はあったし、修羅場も超えてきたつもりだが、それでもそんなことを求められたことはなかった。イタチとは名門の出身で芸事も仕込まれてきているが、戦いの場で言われても温厚なでも戸惑う。




「知るか、くだらん。」




 イタチはデイダラに一言で素っ気なく返した。




「なんだとぉおお!」




 デイダラは芸術を馬鹿にされたと感じたのだろう。怒りにまかせて叫ぶ。




「ひとまずおまえらが木の葉に向かっている以上、俺たちはおまえらを通すわけにはいかなくてな。」




 イタチとの任務は木の葉に向かい、ナルトを捕縛しようとしている暁を抹殺することだ。当然ここで逃げるわけにはいかないし、戦闘は免れない。正直イタチにとってもにとっても、相手の芸術なんて極めてどうでも良いことだった。




「やるぞ、。」

「うん。」





 も気を引き締め、男達を睨み付ける。

 無傷なのは仮面の男とデイダラ。腕が一本なくなった飃の男だ。飃は確か風の国の神の系譜だった。で、あれば風のなんらかの血継限界を持っている可能性が高い。は幸い同じ神の系譜でも火の国の神の系譜、火に特殊な血継限界を持っており、火は風に強いという当たり前の性質変化の理念からいけば、非常に有利だ。





「なんか、目が片方ずつで違いますよ。先輩!あれってやばいんじゃないですか!?」





 トビがデイダラと飃にばたばたと手を振りながら言ってみせる。




「…お互いに片方ずつ。連携になれてるな。」




 飃は薄水色の瞳で冷静にとイタチを見て、うむと頷く。

 透先眼と写輪眼はどちらも付け焼き刃では役に立たないし、こんな場で使ってこないだろう。要するに二人は連携になれているとみて間違いなかった。実際それは正解である。




「来ないなら、こちらから行かせてもらうぞ。」





 イタチが自分の持ってみた水色の刀身を持つチャクラ刀を逆手に構え、手負いの飃に襲いかかる。




「速っ、」




 飃は後ろに飛んだが、イタチが間合いに入る方が一歩速かった。





「させるか!」






 デイダラがイタチに向けて小さな鳥の形をした爆弾をいくつか投げようとするが、それは横からによって放たれた閃光がすべて打ち落とし、先に爆発させる。飃が近くにいるため、元々爆発の威力などたかが知れており、イタチに爆発は届かない。




「くっ、」




 飃は何とかイタチの刃を紙一重で避ける。次の瞬間、イタチに気をとられていたデイダラの背後をとったのは、だった。




「やっ!」




 の白炎の大鎌がデイダラの首すれすれの場所を切り裂いてくる。爆発物を扱うデイダラが近接戦闘に弱いことを知っているのだ。




「ちっ、喝!」




 デイダラは自分へのダメージを覚悟して、体の傍で爆弾を爆発させ、から間合いをとろうとした。





「甘い。」





 は爆風や熱などものともせず、デイダラの腹を浅く切り裂いたが、後ろからの攻撃に体を反らす。トビだ。トビの後ろからの蹴りを透先眼お得意の全方包囲の視界で捕らえたは背中を反らしてそれから避け、トビの足に手をついて後ろに飛ぶ。

 続けざまにはトビを切りつけたが、トビは軽やかに避け、もこれ以上の深追いは危険と理解してすぐに後ろに飛んで間合いをとった。




!」





 飃を捕らえようとしていたイタチが叫んだと同時に飃から離れ、は持っていた大鎌を地面に刺し、印を結ぶ。




「火遁・鳳仙火の術!!」




 いくつもの火の玉を口腔から吐き出し、相手を狙う。そしてその上からの白炎の蝶が作り出していた球体が放つビームが襲いかかる。




「ちくしょう!!」




 防戦一方であるためデイダラが怒鳴り、自分の起爆粘土をに投げつける。しかしそれはイタチの手裏剣によっての元へとたどり着く前に打ち落とされ、爆発した。

 土煙と爆音が辺りを支配した後、一瞬の静寂が訪れる。





「いけそう、だね。」





 はもう一度大鎌を構えなおし、一度振ってみせる。




「だが油断はするな。」




 慎重にイタチはに言って、三人の男達を睨み付ける。

 まだ戦いは始まったばかりだった。





交戦