里の中で忍界大戦に向けて忍五大国が正式に同盟を組んだため、用意は着々と進められていた。






「へぇ、父上、会議に真面目に出てるんだ。」

「あぁ。あの人の透先眼がないと正直全く話が進まないからな。それに、まぁ、先生は基本的に重要な時は逃げない。」






 イタチは大きなため息をついてに言う。

 いつもはサボり、遅刻の常習犯である斎だが、重要任務の時は大丈夫な程度にしか遅刻しないし、イタチや部下が怪我をした時はきちんと書類仕事もすべてやる。





「だから、むかつくんだがな。」




 斎は忍術だけでなく事務能力も非常に優秀で、仕事は早い。

 要するに出来るが面倒だからやらず、他人に頼って放り出すだけだ。出来ない他人には振らないし、サボり方もいい加減そうに見えてしっかり迷惑がかからなそうな時にやっている。だからこそ皆大目に見るのだ。




「なんで父上ってあんなに不真面目なんだろ。わたし、サボるなんて考えられない。」

「それを言うなら逆だ。娘のおまえがどうしてこんな真面目になったのか、謎だ。」

「イタチの育て方が良かったんじゃ無いの?」

「…」





 小さい頃、任務に忙しい父母に変わっての面倒を見ていたのはイタチだ。氏より育ちと言うし、幼い頃の情操教育が重要と言うことだろうか。





「大分再建が進んだね。」






 は穏やかに歩きながら辺りを見回す。

 ペインに襲われ、里の建物はほぼ半壊して、里の半分は再建せねばならぬようになった。最初に作られたのは仮設住宅だったが、徐々に再建は進み普通の建物も建てられるようになってきていた。怪我人に関しても徐々に減っており、来月には避難所も閉められる予定だ。

 とはいえ、買い物先もやはりまだ限られているため、今日は食料の買い出しに二人で遠出をしていた。

 サクラやナルト、サイも今回の一件で家をなくしてしまっており、壊れなかったとイタチの家で暮らしている。やはり5人となると食料の買い出しも大がかりで、一人では無理なので、イタチが休みの今日、買い出しに来たのだ。




「あぁ、とはいえ皆忙しいからな。」




 里の再建の指示に忍界大戦の準備。

 斎も綱手もそれに今は追われている。病み上がりではあるがもまたその透先眼故に情報収集の任務を多数課されている。特には今暁をイタチとともに倒したほどの手練れになり、斎、蒼雪、綱手は別格としても、イタチ、カカシとともに里では数えられる程の忍となった。

 今回の件でペインを単独で倒したナルトも同じで、今となっては片手の数に入るほどの戦力である。

 だからこそ綱手は斎とイタチという二つの戦力を里から離してでも取り戻そうとしたのだ。特に後々斎の後、透先眼の使い手としてがすべてを担っていくことになるのだ。





「イタチさん!」





 後ろから声をかけられたので振り向くと、そこにはサイがいた。その後ろにはナルトもいる。





「あれ、どうしたの?」






 は突然やってきたサイに首を傾げる。ましてや今回はイタチに用事らしい。





「綱手様が、今から任務だっておっしゃいまして。」

「…え?俺か?」

「はい。僕も一緒です。」





 サイは暗部の忍である。

 サスケによってダンゾウが暗部に殺されてから根はすべて斎率いる“樹”の元に統一された。よって今はイタチもサイも同じように斎の部下となっている。サイとイタチが呼ばれ、とナルトが呼ばれていないと言うことは、要するに暗部の任務と言うことだ。






「そうか。わざわざ呼びに来てもらって悪かったな。」





 おそらくサイはイタチの家に行っただろうが、今日はと買い物をしていたので不在だった。仕方なく、町中まで探しに来たのだろう。

 イタチがサイをねぎらうと、サイは「いえ、」と首を振った。




「斎様の直弟子であるイタチさんと一緒に任務が出来て、光栄です。」

「そんなたいしたことはできないがな。」






 イタチは腰に手を当ててサイに返してから、を見た。

 これからと一緒に帰ろうかと思っていたが、呼び出しをかけられれば仕方がない。イタチは持っていた荷物をどうしようかと考えたが、それをナルトが持った。





「俺がと一緒にいったん家に帰る。第一、泊めてもらってんのに買い出しまで頼りきりとかねぇってばよ。言ってくれれば良かったのに。」






 ナルトもどうやら別の理由でイタチとを探していたらしい。は元々重いものを持つのが苦手でどうしたものかと悩んでいたが、ナルトが持って帰ってくれるならありがたい。





「あぁ、ありがとう。じゃあ、俺は行く。」

「いってらっしゃーい。」

「飯作って待ってるってばよ−!」





 とナルトが手を振る。何やらその笑顔がそっくりな気がして、イタチとサイは思わず二人で笑ってしまった。





「せっかく休みだって言ってたのに、やっぱり大変だね。」





 は二人の背中を見送りながら言う。

 今日は一日休みだと聞いていたが、急な任務が入ったのだ。一緒に過ごせないのは残念だが、仕方ないことだと言えた。





「イタチ兄ちゃん、めちゃ優秀な暗部だってみんな言ってたってばよ。」






 ナルトも荷物を持ちながら、帰りの道を歩く。

 イタチは昔から天才の名をほしいままにする、優秀なうちは一族の中でも一際優秀な忍だった。今でも変わりなく、引っ張りだこである。暗部は裏方である事が多いためその功績は表沙汰にはされないが、ペインを倒したナルト以上の働きをしていることは間違いなかった。






「なんか、それにさ。サイの奴、イタチ兄ちゃんに優しくね?」

「え?」

「なんてかさ、んー、」

「憧れてる?」

「そう。それ!」





 ナルトはの言葉がぴったり来て、手を叩いた。





「まぁ、ダンゾウが殺されてから、同じ父上の直属の部下になっちゃったからね。」





 暗部を取り仕切っているのはの父である斎だ。ダンゾウの死で“根”もほぼ完全に斎の統制下にある。サイは珍しく特殊な能力を持っているとから聞いていた斎は、すぐにサイを取り立てて自分の下に置いたのだ。

 自動的にそれは斎の愛弟子であるイタチとサイとの関わりを産むことになった。

 イタチはかなり面倒見が良いので、斎の仕事の押しつけという慣れない業務に戸惑うサイを助けたと思う。





「なるほどだってばよ。要するに戦友かぁ。」

「対父上の?」





「そうだってばよ。斎さん、火影に推薦した時も逃げ回って大変だったんだから。」

 ダンゾウが火影になるという話が出て揉めた時、里の多くの忍が斎をと望んだというのに逃げ回ったのだ。皆で協力してまず彼を捕まえるのに時間がかかった。




「まぁ、仕事からもいつもは逃げ回ってるからね。」




 は昔から、イタチが父を屋敷まで起こしに来たり、任務に引っ張っていくのをよく見ていた。いくつになっても子どものような父を引っ張っていくイタチを見ていると、どちらが師なのか分からなくなる時がある。

 それでも今は逃げ回らず仕事をやっているから、それ程大変な時期にさしかかっているということなのだろう。




「帰ったらスタミナつきそうな飯作らないとな。」




 ナルトは明るく笑ってぶんぶんと袋を振り回す。

 ペインの一件で家が壊れてしまったナルト、サクラ、サイは未だにと一緒に住んでいるので、夕方にはサクラが、遅くなるだろうが夜にはサイとイタチが帰ってくるだろう。




「あんまり脂っこいのにしたら、サクラが怒るよ。」





 は小さく笑って言う。

 サクラは医療忍者らしく健康志向なので、たまに無茶でまずい兵糧丸を作ったりする。同居を始めてからもたびたび野菜を食べないナルトと喧嘩になっていた。




「わかったってばよ。」





 ナルトは小さくため息をついて、渋い顔で頷く。

 さすがのナルトもサクラの鉄拳は怖いらしかった。
平穏