我愛羅たちと作られた特設宿泊所に入ると、人でごった返していた。

 五影とその護衛たち、彼らへの連絡のために集まる手練れたち。一挙に五影が会する上に、中忍試験、中忍以上の余興も行われると言うこともあり、忍だらけで、は我愛羅たちを案内しながら逆に人混みにどぎまぎすることになった。

 おかげで最上階である与えられた部屋につくまで、随分と時間がかかった。




「俺たちが一番最後だったのか?」

「多分。」





 我愛羅の問いには頷く。

 最初についたのは土影のオオノキたちだったと聞いている。その後に護衛であるの父、斎、イタチを連れた火影の綱手が、そして水影のメイ、雷影エーがやってきて、我愛羅たちが一番最後だった。おかげでごった返す人をかき分けるのが大変だったわけだ。

 ついでに模擬戦の申請所も同じ場所にあったため、テマリとは一緒に申請しに行こうとしたが、あまりの人の多さに挫折した。明日でも大丈夫だろう。

 今は与えられた部屋でカンクロウ、テマリ、、我愛羅の4人でだらだらしている。基本的に今回はこのフォーマンセルの状態で我愛羅の護衛を兼ねると言うことになっていた。

 とはいえ、お互いによく知っている相手なので気楽なものだ。





「疲れたー」





 はぐったりとベッドにへばりつく。肩までに切り揃えられた紺色の髪が無造作にべたっと広がっている。





「おまえ、本当に緊張感ないな。」






 そんなを見てテマリは呆れたように息を吐いた。




「だって、みんな知ってる人ですから、緊張ないですよ。」

「まぁ確かに。おまえが俺の護衛として迎えに来るとは思わなかった。」






 我愛羅もの言い訳に同意する。

 今回は5大国全部で中忍試験を行うことになったため、用意の係にはそれぞれの里から人員が供出されている。テマリもいくつか審判はつとめる予定だが、は今回の中忍試験においては綱手の名代として副代表の立場にある。ちなみに中忍試験準備の委員会代表に任じられたのは雲隠れのダルイという男だった。

 面倒臭そうでやる気のないタイプかと思いや、彼はかなり真面目にてきぱきと動くタイプで、皆が驚いていたのを覚えている。

 会場などがわかりにくく、国を跨ぐこともあるため、今回五影には一人ずつすべてを把握している人間がつくことになっていた。で、今回風影である我愛羅の担当になったのがである。





「うん。護衛につくかもって言われた時に、我愛羅君が良いって言ったんだ。」

「良いだけでなれたのか。」

「うん。ダルイさんが、知り合いの方が良いかって。」





 はにこにこと笑って足をぱたぱたさせながら資料を見返していたが、はっと気がついて口を開いた。






「明日から一週間、トーナメントを含めて、模擬戦に出たい人は登録が必要だよ。希望も提出できるけど、お早めに。」

「希望ねぇ、俺は決まってんじゃん。」






 カンクロウはすでにシノとの再戦と決めているため、他の選択はないらしい。とはいえ、出る回数も決められてはいないので、複数出る予定の人もいた。





「わたしは模擬戦はテマリさんとで、他はどうしようかなぁ…」





 は資料をぱらぱらとめくりながら、日程を確認していく。一応皆が複数出ても問題無いようなトーナメント日程になっていた。

「俺も見て構わないか?」





 我愛羅がの資料を見て、尋ねる。のベッドは我愛羅とテマリに挟まれている。は寝そべった体勢のまま、我愛羅に自分の資料を渡した。担当者用の詳しい資料なので、今回の中忍試験の予定のすべてがその一冊にすべて入っている。

 五影には改めて話がある予定なので、我愛羅には資料はまだ渡されていないが、興味があるのは当然だろうし、が持っているものほど明日渡されるものも詳しくは書かれていないだろう。





「10ページ目からが模擬戦とトーナメントの要項だよ。興味があるなら、それあげる。わたし、覚えちゃったし。」

「覚えたってその冊子をか?」






 本一冊分は軽くある。テマリは驚いてを見たが、は小さく頷いた。は元々記憶力が良く、一度見たら忘れないので、全部目を通したのでもう資料はいらない。





「悪いな。だが興味深い。」





 我愛羅は一つずつ順番に確認していく。全員でのんびりしていると、ドアがノックされた。は咄嗟に紺色の瞳を水色の透先眼に変えてドアの向こうを見て、弾かれたように立ち上がる。





「イタチ!」






 が言うと、ドアが躊躇いがちに開いた。突然飛びついてきたに驚いたようだが、なんとか受け止め、困ったような顔をする。

 テマリやカンクロウ、我愛羅はの大胆な行動に目をぱちくりさせる。

 噂でがうちはイタチと婚約したとは聞いていたが、どの程度の仲が良いのか直接見たことはないし、政略的な意味合いも強いことは承知していたので、本当に恋仲なのかすらも知らなかった。

 イタチはぽんぽんとの背中を叩くと、持っていた書類をに渡す。





「これが追加の、今決まっている分だ。」

「ふうん。」





 は別段興味なさげに書類を受け取る。

 追加の書類にはぱっと見、名前が書かれており、今日の朝からに申請された人員の表らしい。先にに持って来たのは、おそらくダルイがそう言ったからだ。の記憶力の良さはダルイもよく知っており、覚えて貰ってからトーナメントを重ならないように組んだ方が良いと判断したのだろう。






「わかった。ある分だけで組んでおくね。」





 はあっさりと言って、もう一度イタチに抱きついた。






「父上は仕事してる?」

「…まぁ一応。おまえは大丈夫か?」

「うん。みんな元気だよ。」

「…」





 イタチはの応えに何かもの言いたげだったが、の肩までの紺色の髪をくしゃくしゃと撫でてから、離れる。





「しっかりやれよ。」

「はーい。大丈夫だよ。我愛羅くん強いし。」

「…おまえが護衛だと聞いたんだが。」

「うん。でも護衛兼案内役。」






 案内役の方が自分の役目だと言いたいらしい。イタチは小さく息を吐いて、ぽんぽんとの頭を二回叩いた。





「おやすみ。」

「おやすみなさい。」




 も手を振って、にこにこ笑ってイタチを見送った。どうやらイタチは資料を渡すために来ただけだったらしい。

 はぽんっとベッドに飛び乗り、新しい資料に目を通す。

 だがふと顔を上げると、相変わらず他の3人はを見て固まっていた。





「どうしたの?」

「いや、噂は本当だったんだなと思って。」





 テマリはまだ戸惑いで硬直した状態のまま、に言う。





「噂?」

「ナルトがとイタチはラブラブだと言ってた。」

「え?!」





 はあまりの話に頬を染めて驚きの声を上げた。






「な、なんでナルトが?!」

「この間会った時に婚約の話と共に、ナルトが話していたぞ。」






 我愛羅もナルトから聞いたのか、少し困ったようにに言う。

 先日正式な婚約をしているという話をナルトから聞いた時に、彼がとイタチがどれほどに仲が良いかを高らかに、そして事細かに語っていたのだ。だからイメージは出来ないが噂には聞いていたので、正直納得だ。





「噂は本当ってわけじゃん。」





 カンクロウは肩を竦めて見せた。

 は頬を染めた状態のまま、枕に顔を押しつける。ナルトに後で口止めをきちんとしておかないと恥ずかしくてたまらないと思った。

羞恥