1週間であっという間にトーナメント、模擬戦の申請は終わった。初日は中忍試験とは別に余興として、コンビのトーナメントが始まった。基本的には相手の鈴をすべてとれば終了とのルールだ。鈴は見えるところにつけるのが基本だが、一人が二つ持っていても問題はない。
「やっるわよー!」
高らかに声を上げたのはサクラだ。
「…やるのか。」
あまりやる気のないだったが、こればかりはサクラに頼まれれば仕方がない。2人一組でのトーナメント戦は見事に各国男ばかりの希望で、女二人というのはほとんどなかった。木の葉の面々はとサクラのコンビの恐ろしさをよく知っているので、それを見て出場を辞退したグループもあったそうだが、他里は知らないため、女二人に当たればラッキーだと笑っていた。
女を舐めてはいけないとは思う。
ちなみにトーナメントの優勝賞金は100万両、温泉旅行招待券付きで、言うことなしだった。
「結局、はどれだけ出るの?」
サクラはを振り返って尋ねる。
「えっと。結局テマリさんと、このトーナメントだけかな。」
は模擬戦もテマリと出ることになっており、投げられる丸いボールを風遁でどれだけ正確に打ち落とせるかを競うこととなった。非常に平和的な試合である。
コンビでのトーナメントはもちろんサクラに頼まれたというのもあるが、綱手からの申し出でもある。要するに綱手の弟子なので、他里へのメンツもあって出てくれと言うことだった。
「結局イタチさんはどうすんの?」
「ちょっと意外なんだけど、イタチはダルイさんとやるんだって。」
こちらも雷影であるエー、火影である綱手、それぞれのメンツ故にと言ったところらしい。とはいえダルイも一度有名なうちは一族と戦ってみたいという気持ちは本当だったらしく、直接頭を下げて頼みに来られればイタチも断れなかったようだ。
おそらく心得た大人同士のやり合いだし、模擬戦の性質上絶対的な勝敗はつけないだろうが、誰が聞いても面白そうな一戦で誰もがチェックをしている。
「そりゃ行かないとね。も行くでしょ?」
「うん。わたし審判だし。」
「え?そうなの?」
「うん。基本的に上忍以上の人の試合の審判はダルイさんかわたしだよ。」
今回は各国手練れの忍も模擬戦に出てくる。彼らの試合の審判はへたすれば巻き込まれてしまう可能性もあり、非常に危険だ。そのため、審判もそれ相応の手練れが必要だ。よって今回の中忍試験準備委員会の代表であるダルイか、副代表であるがそう言った手練れの試合の審判をすることになったのだ。
「ちなみに父上と雷影のエー様の試合の審判はダルイさんになったの」
雷影のエーはの父である斎との模擬戦を望んでいたが、ここ一週間斎はそれから逃げ回っていた。だが結局綱手の命令もあって模擬戦をする羽目になったらしい。ちなみに試合内容は、エーから10分逃げ延びるという内容になったそうだ。
その試合の審判もダルイかのどちらかという話だったが、は絶対に嫌だと断固拒否。ダルイも渋りに渋ったが、結局くじ引きでダルイに決まった。
ダルイがイタチからは非常に勘が良く、絶対にくじ引きには当選するし、お神籤も大吉ばかりだと聞いたのは、その後のことだったという。
「ふぅん。斎さんがね−。」
サクラは一週間エーから逃げ回っていた斎を見ているため、正直本当に来るのか半信半疑だ。面倒ごとが嫌いな斎のことだから、逃げてもおかしくはない。
「でも、父上、も一個、模擬戦だよ。」
「え?誰と?」
「我愛羅くんと。びっくりした。」
が我愛羅の護衛として迎えに行った時、彼が斎の状況を聞いていたのには不思議に思ったが、まさか父との模擬戦をしてみたかったとは思いもしなかった。
「なんか、ナルトに聞いてから一度手合わせしてみたかったんだって。」
「意外よね。」
「ね。父上もOKしたんだって。とは言っても、こっちも10分、しかも鈴取り?らしいけどね。」
手練れ同士本気になれば殺し合いになる可能性もあるため、長時間は厳禁。目的も相手を倒すことではなく、ただの鈴取りだ。要するに戦略を競えと言うことらしい。
とサクラは大きく二人揃って一つ伸びをして、会場へと続く廊下を見やる。
二人組でのトーナメントの初戦は誰だか知らないが、岩隠れの里の忍だったはずだ。上忍の男二人で、女二人が相手なのを見てガッツポーズをしていた。
「準備は良いですか?」
雲隠れの忍で、キャンディーをくわえているオモイが、に問う。どうやら係員に当たってしまったらしい。
「お疲れ様です。」
はにこやかに笑って頭を下げる。
噂では八尾の弟子で、ダルイ曰くなかなか見所のある人物らしい。とも年齢は近く、剣術が得意だそうだ。
オモイは礼儀正しいに戸惑った様子で手をわたわたさせたが、「頑張ってください」と一言言って、二人に試合用の糸のついた鈴を渡す。だがサクラはそれを受け取らず、が二つとも受け取った。
「すぐ終わるわよ。」
サクラはにっと笑う。
「多分ね。」
もサクラに同意して、オモイに手を振って会場へと出た。
会場は円形の闘技場になっており、周囲の客席からは揺れそうな程の歓声が聞こえる。おのおのの里の選手が出るため、観客もいろいろな里から来ている。すべての試合を見るわけではないが、中央には五影用の席が設けられており、そこには雷影であるエー、風影である我愛羅、土影のオオノキ、そして火影である綱手の姿もあった。
「ひとまず真ん中に集まれ。」
審判のテマリが集まった4人を見て言う。
「はーい。」
「あんた、本当に緊張感ないわね。」
手を上げて返事をしたに、サクラは呆れてため息をついたが、二人とも中央へと言われるままに集まる。テマリも気楽なの様子に少し呆れているようだった。
「降参もありらしいぜ。嬢ちゃんたち。」
「まったくだ。」
強面で大きな体躯の屈強な岩隠れの忍は、これ見よがしに腕を鳴らしてみせる。どうやらとサクラのことを知らないらしい。
確かにとサクラは細いし、お世辞にも見た目は強そうではない。
特には同年代の中でも一番背が小さく、垂れ目で容姿も子供っぽいため、おそらく相手もが上忍なんて想像もしていないだろう。
「降参すんのはそっちでしょ?」
サクラはにこっとわざとしとやかに笑って見せる。
「サクラ、一応審判が止めたら終わりだからね。」
は苦笑しながらも一応サクラを諫める。
ルールでは勝利は相手が降参するか、鈴をとるかのどちらかだ。その後の攻撃は禁止されているし、やれば即失格と言うことになっている。
あくまでこの試合は友好関係を示すためであり、殺し合いは禁止だ。
「ルールはわかってるな。では、始める。」
テマリは厳かに手を横に振る。
それと同時には後ろに飛んで間合いをとり、逆にサクラは岩隠れの忍に殴りかかりに行った。そのスピードに男たちは目を丸くしたが、間合いをとることも出来ず、ひとまず手でガードする。女の腕力などたかが知れていると思ったのだろう。
だが、サクラはそんなに甘くない。
「しゃーんなろー!」
そう言ってサクラが放った右ストレートが一人の男を捕らえ、まっすぐに男は壁へと吹っ飛んだ。轟音と共に壁にめり込んだ男の隣で、無事だった方の男が呆然とした面持ちでサクラを見つめる。
「こりゃだめだわい。」
土影のオオノキはため息をついて、哀れみの目で自里の忍を見やる。
「…恐ろしい怪力だな。おまえの弟子か。綱手。」
雷影のエーは隣に座っている綱手をちらりと見た。
彼女の怪力についてはエーもよく知るところで、エーと腕相撲で互角に張り合うほどのチャクラコントロールと怪力を持っている。
「どっちもな。良い弟子だろ」
綱手はこのために二人を試合に出したのだと、豪快に笑って自慢した。
愛子