一日目に3試合をしたとサクラだったが、サクラの突撃と怪力だけで大方試合は幕を閉じ、が出る幕はほとんどなく一日目が終了した。





「眠い。」





 は待合室に戻ると一言そう言った。結局一度も忍術を使うことなく終了したため、待合室と会場を往復しただけである。ただの気疲れだ。






「大丈夫か?」





 様子を見にやってきたイタチが尋ねるが、正直何もしていないので大丈夫もくそもない。

 今日は試合が3試合もある予定なので、夜は我愛羅の護衛を外れる事になっており、イタチと一緒の部屋でのんびり出来る予定だった。とはいえ、3試合何もしていないわけだが。

 ちなみにサクラはシズネに結果の報告をするために医務室へと行っている。





「それにしても、サクラは強いな。」

「うん。おかげでみんなあっという間に遠巻きだよ。」




 待合室にはまだ次の試合を待っている人がいるが、最初は「俺たちもおまえらと当たりたいよ。」など冗談で声をかけてきていた他里の忍たちも、今となっては全員を避けていた。は何もやっていないが、コンビをしていたサクラが怖くてたまらないのだろう。

 まぁ、あの怪力で殴られ、壁にめり込んだ忍を見たら、トラウマにもなるのかも知れない。

 はサクラと3年姉妹弟子でいるため、既にあの光景を見慣れているので気にしていなかったが、この感覚が普通ではないのかも知れないと思った。

 幸いは待合室にてオモイと一緒に喧嘩を始めないように見張り役兼、呼び出し役だ。突っかかってこないのはありがたい限りだった。





「模擬戦ではの方が強いんだがな。」





 イタチはここ3年二人の修行を見てきたため、苦笑する。

 サクラはまだ中忍だが、は上忍。しかも実力的にはの方が上だ。しかし先ほどの試合内容を見ればに全く出る幕はなく、サクラが相手の忍を殴り飛ばすだけで終わった。は攻撃すら放っていない。というか忍術一つ使わず傍観していただけだった。






「可哀想にね。殴られた人、医務室かな。」

「多分な。これでサクラと鉢合わせていたら極めつけだな。」





 殴られた忍も医務室にいるだろうが、おそらくサクラもシズネに会うために医務室に向かったわけでそれが面白いところだ。サクラno

 怪力で殴られたら大怪我を負うわけだが、同時にサクラはそれを治す術も持っていると言うことになる。

 殴られた忍はサクラを見て気絶するかも知れないが。





「サクラって格好良いよね。イタチいなかったら、惚れちゃうかも。」

「立つ瀬がないな」





 が無邪気に言うと、イタチが肩を竦めて笑った。ぞろぞろと試合の終わった人が帰ってくる。次の試合が差し迫っているらしい。





「次、誰っすか?」






 一緒に係員をしているオモイが神妙な顔つきでの元にやってきて、尋ねる。






「砂隠れの5番さんと雲隠れの2番。」

「あ、はい。」





 は資料を丸暗記しているため、さらさらっと言うと、オモイがぱたぱたと走っていって呼び出しに行った。




「なんか試合が三試合あったから、気にしてくれてるみたいなの。」






 本当ならも呼びに行き、会場に選手を送り出さねばならないのだが、オモイがその役を買って出てくれている。三試合もした後だからと、心配してくれているのだろうが、サクラが戦ったので行って帰ってきただけだ。

 オモイも女性で同じく八尾の教え子であるカルイと共にこの二人組トーナメントに出ているので、2試合をこなした後だ。





「もうすぐ終わりますね。」





 会場に選手を出した後、戻ってきたオモイは言う。





「そうだな。まぁこれで大分落ちただろうが。」




 イタチは頷いてを見下ろす。

 三回戦まで終わって次が四回戦となれば、もうそろそろ実力のない忍や、試しにやってみた忍はほとんど落ちている。サクラととは言え、次の試合はサクラ一人というわけにはいかないだろう。





「サクラもカルイさんも怖いからなぁ。」




 は思わず小さく息を吐いて言う。




「そりゃそうっすよ…俺なんもやってない…」





 オモイはどんよりとした空気を纏ってため息をついた。

 オモイもと同じでカルイに引きずられるようにしてこのトーナメントに出ることになったらしい。おかげでとオモイは心境がよく分かって意気投合してしまった。ほとんど戦っていたのはカルイだったため、オモイも完全に試合中は空気だったそうだ。




「本当にわたしたち、なんで出たんだか。」




 試合中ずっとサクラの戦いぶりを見ていただけである。

 もしも言うならば、鈴をサクラの分も持っていた、それくらいだ。そもそもサクラを超えての持つ鈴を取りに来るほどの実力者はいなかったので、鈴をちりちり鳴らして立っていただけだった。





「この感じのまま行けばカルイVSサクラか?」



 イタチは顎に手を当てて二人を思い浮かべる。順当に行けば実力から言っても、強いのは何人かいるが、そんな感じだろう。




「いや、もうひとり怖い人がいるから。」





 は手をひらひらさせてイタチの言葉を訂正した。






「もうひとり?」

「次あたるんっすよ…、黄ツチさん。土影の孫娘の…」







 土影の孫娘である黄ツチも乱暴で相当恐ろしいという話だ。オモイは試合を見たことがあるのか、震えるようなそぶりを見せて、酷く哀れだった。



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