ナルトが仙術を使って中忍試験で失格になり、下忍のままとどまることが決定したのは、最終日の二日前のことだった。
「ナルトらしいけど馬鹿だよね。」
サイが歯に衣着せぬ物言いで落ち込んでいるナルトに言う。
「あーーーーーーうるせぇってばよ!!」
散々他里の忍からも含めて同じことを言われたナルトは叫んでサイに反論した。
「良いとこなしね。」
「うん。確かにね。」
サクラもまったく容赦なく腰に手を当ててナルトに言い捨て、もそれに賛同する。
せっかく五大国が一緒になって中忍試験を行ったというのに、ナルトは自分の馬鹿さ加減を表明するような形になってしまった。
「それにしてもとサクラの評価はうなぎ登りだね。木の葉の忍は皆、健闘したみたいだし。」
サイも二人組トーナメントでの結果は聞いている。
忍界大戦を前に班編制などを考える意味でも、ここで評価を上げておくのは良いことだし、何より5大国の中でのパワーバランスてきな意味合いもある。
木の葉はペインで壊滅的な被害に遭っており、国力が落ちていると見られることはマイナスだったため、優秀な人材がいることを示すことが出来、綱手もほっとした様子だった。
「確かにね、結局イタチも、一応父上も勝ったし?」
は頬に手を当てて昨日の試合結果を思い出した。
イタチと父である斎は模擬戦に出た。昨日は模擬戦の最終日と言うことで、雷影であるエーと風影である我愛羅、火影候補者である斎やうちは一族の末裔であるイタチが出たこともあり大盛り上がりだった。
まず朝は雷影の片腕であるダルイと戦ったイタチはダルイから鈴をとり、勝利を収めた。
同じく午前の部で雷影のエーから10分間逃げるというルールを設けて行われた斎との試合は、何とか斎が紙一重のところで得意の結界術や盾で雷影の攻撃を防ぎきり、時間切れになって斎の勝利と言うことになった。
午後の部は我愛羅と斎の鈴とりだったが、これはやはり斎の方が一枚上手で、砂に自分の水遁を紛れさせるという方法で我愛羅の盾を通り抜け、彼の鈴を手中に収めることに成功した。水をしみこませた砂を隠すために周囲の仏の砂に自分のチャクラを通して操るなど、恐ろしく緻密なチャクラコントロールに裏をかかれた形だった。
「まさか斎さん、逃げ切るとは思わなかったわ。」
サクラも模擬戦を見ていたが、雷影のエーはこちらが目で追うのがやっとだという程、早かった。また攻撃もあっさりと壁に穴が開くほどで、レベルが違う。
捕まえられて一発当てられれば死ねると思った。
斎も流石にスピードではエーには敵わないらしかったが、結界や盾などを使い、10分エーの攻撃を受け流して見せたのは圧巻だった。
「うん。逃げ足で父上に勝てる人なんていないよ−。」
は笑って言った。
サボり癖の酷い斎はが幼い頃からイタチや3代目火影に追い回されていたが、一度も彼らが斎を捕まえたことはない。要するにそれくらいに逃げ足は速いし、常にそんなことばかりやっているから、得意にもなるのだろう。
とはいえ、実力的に優れているのは間違いない。
「そういや元々斎さんって、チャクラコントロール得意らしいな。」
ナルトも斎が医療忍術が得意なくらいチャクラコントロールがうまいと言う話を、自来也から聞いたことがあった。チャクラが多いとそれだけコントロールが難しいのが基本で、ナルトももどちらかというと緻密なチャクラコントロールは苦手だ。
斎もそこそこチャクラが多いタイプなので難しいはずなのだが、彼は忍としての才能には非常に定評のある人物で、チャクラコントロールは得意中の得意だった。特に相当強い手練れの中で医療忍術も出来るのは斎だけである。
「もー師匠、上機嫌よね。」
「うん。なんかエー様の鼻っ柱を折りたかったらしいね。」
サクラとの師である火影・綱手と雷影のエーには因縁てきな関わりがあるらしく、何かと競っていた。元々国力としても火の国と雷の国は他の国よりも一回り大きいくらいなので、競う意味合いもあるのだろう。
そのためか、雲隠れの忍には負けてくれるなと言った雰囲気だった。
「でも結構楽しかったよ。わたし、雲隠れのダルイさんとか、オモイさんと仲良くなれたし、」
は中忍試験では準備委員会の副代表だったため、色々と他国の忍と関わることが多かった。
特に代表だったダルイやその部下として働いていたオモイとは話す機会も多く、特にオモイの方とはトーナメントで戦ったこともあって、連絡先を交換したほどだ。
ダルイもたるそうな雰囲気とは裏腹に真面目で、仕事は本当にしっかりしてくれた。気遣いもうまい人物で、彼の下で本当に働きやすかった。
「確かにね。僕も暗部で警備の任務だったけど、いろいろ話してみると楽しかったよ。」
サイは暗部として警護の任務に就いていたが、当然他国の暗部とも共同での警備だったので、暇なときに話す時間もあった。
「同盟結んだんだから、楽しくやらねぇとな。」
忍界大戦になるであろう事を知らされていないナルトは、笑って明るく言った。
これから確かに五大国間での人の行き来が激しくなり、マダラに布告された忍界大戦に備えていくのだろう。それを思えばそれぞれ気が重い部分はあったが、それでも今は戦争のことは見ないことにしていた。
「イタチさん、やっぱり強かったわね。」
ダルイと戦ったイタチを客席から見たが、サクラでも思うほど、彼の技術はすばらしかった。特に死角であっても的に当てる見事な手裏剣術は圧巻で、彼が写輪眼だけでなく忍として非常にすばらしい才能があることを示していた。
サクラにとって彼は親友の彼氏であり、いつもと一緒に修行を見て貰っていたためあまりに身近で忘れかけていたが、やはり他人と戦っているところを見るとすごい忍なのだと感じる。
「うん。格好良かったよ。」
はにこにこと笑って恋人の雄志を思う。
その試合においては審判で間近で見ると同時に、やはり心配もしたが、存外危なげなく勝利したことに驚いたし、やはり自分の恋人であるため誇らしかった。
「そんなのろけられてもねぇ。」
サクラは腰に手を当ててをつつく。
「の、のろけじゃないよ!」
「のろけでしょ。しかも毎日夕方一緒にデートしてたらしいじゃない。」
「え、な、なんで知ってるの?」
とイタチは毎日夕方の休憩の時間になると、甘味を食べに行っていた。それをサクラに言ったことはなかったはずなのだが、ばれていたらしい。
「だって、噂になってたもの。カルイさんも見たって言ってたし。イタチさん、他国の忍にももてるのよ。」
「え!?そ、そうなの!?」
「そうなの。」
うちは一族のエリート、しかも容姿端麗なイタチは模擬戦に出たこともあり、いつの間にか他国の女の忍からも注目されていた。
木の葉の中ではイタチとが婚約していることも、イタチが炎一族の婿になるであろう事も有名な話で、誰もイタチに告白するような人間はいないし、気も引けるが、そんな事を知らない他国の忍から見ればただのあこがれと言えるだろう。
同時にその彼が年頃の少女と一緒に歩いていれば噂にもなる。
「見せつけてくれるわよね。」
「そ、そういうわけじゃないよっ、ただ甘味が、」
「知ってるわよ。でも無意識にまき散らしてるの。」
は恥ずかしくなって必死で反論するが、サクラはさらりと言っておちょくるようにの頬を指でつついた。
「イタチの兄ちゃん、にぞっこんだもんな。」
「そんなこと言ったら、姫もイタチさんにぞっこんじゃないか。」
ナルトが言うと、サイが苦笑した。
相思相愛を絵に描いたような二人は、本当に喧嘩もしないし、良く一緒に出かけている。は恥ずかしがり屋で、イタチも社会的なことをきちんとわきまえているが、二人で同じ空間にいるとやはり花が浮いているような柔らかい空気を纏っており、すぐに分かる。
「そうだ、ナルト!我愛羅君にもわたしとイタチのこと言ったんでしょ!」
はそれで思い出して、ナルトに文句を言う。
先日我愛羅に会った時、ナルトからとイタチがラブラブだと聞いたと茶化されたのだ。どうやらナルトはぺらぺらと二人の内情を話しているらしい。
「だって事実だってばよ。」
「は、恥ずかしいよ!」
「良いじゃ無い。仲良しって事でしょ。触れ回ったらイタチさんにくっつく悪い虫も減るわよ。」
今回ばかりはサクラもの味方ではなく、ナルトの行動を援護した。
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