「イタチを隊長としてサイ、ネジ、リー。そしてヤマトを隊長にナルト、サクラ、。 この二班には、神の系譜の調査を命じる。」 







 綱手は書類を渡しながら、神妙な顔つきで全員に言う。それはとイタチが五影の護衛から帰ってきてすぐのことだった。





「綱手のばっちゃん。神の系譜ってなんだってばよ?」





 ナルトはさっぱり分かりませんとでも言うようにきょとんと首を傾げる。

 あまりに当たり前のことを聞いたナルトに全員が呆れたような視線を向けた。ヤマトは書類を取り落とし、イタチはまさに今書類を受け取ろうとしていた手を止めると、同時に、びきっと綱手の額に怒りが浮かぶ。





「あんた、そんなことも知らないわけ!?」

「いやいや、がそうだってのは知ってっけど、いでででででで!!」





 綱手が突っ込む前にサクラに制裁として首を絞められながら、ナルトは叫び声を上げた。





「はぁ、イタチ、おまえが説明してやれ。」





 綱手は呆れたようにため息をついて、イタチを見る。イタチは苦笑して頷く。






「神の系譜って言うのは五大国に一つずつ存在している莫大なチャクラと特別な血継限界を持っている人間、もしくは一族のことを言う。」

「うん…うん?」

「例えば、火の国の神の系譜である炎一族の直系の血継限界は白炎だ。火に関する特別な血継限界と火に手を突っ込んでも大丈夫なほどの体を持っている。」

「それはを見ててしてるってばよ。ってことは風の国には風を操る血継限界を持つ奴らがいるってこと?」







 ナルトもやっと納得したのか、イタチに尋ねる。





「その通りだ。それが三年前に俺たちが保護した榊とこの間俺とが捕獲した樒だ。彼らは飃と呼ばれる風の国の神の系譜だ。」




 本人たちに聞いたところ、榊と樒は砂隠れの里に幼い頃から幽閉され、その力を利用され続けていたらしい。逃げ出した後、榊は大蛇丸に捕らえられた後、木の葉の里に保護された。樒は人間を恨み、暁に入っていたが、イタチとの戦いで保護されている。

 彼らは風の国の神の系譜であり、風を操る血継限界と腕を切られても生えてくるほどの再生能力を持っており、血にも傷を癒やす力があるという。





「ただ、そう言った特別な力を持つのは、一族の中でも直系の一系統だけ。全員が持っているわけじゃない。炎一族もそうだろ?」

「まぁ、確かにみたいにチャクラを焼く白炎持ったのが炎一族200人全員だったら、忍なんてやってられねーってばよ。」





 ナルトはイタチのわかりやすい説明にわかりやすい解答を付け加える。

 要するに神の系譜として特別な力や莫大なチャクラを持っているのは本当に直系の一系統だけであり、人数自体はそんなにたくさんいないというわけだ。





「火の国に炎、土の国に堰、水の国に翠、雷の国に麟、そして風の国の飃。そのうち炎と飃はもう調査はいらん。堰は…おそらく麟に襲われた。麟は暁に荷担しているらしい。」







 綱手はざっと神の系譜の今の状態を整理してナルトに伝える。

 雷影・エーにも確認したが、どうやら麟は2代目雷影の時代まで里を牛耳っていたが、3代目雷影に追い出され、その後の消息は分からないらしい。しかし3代目雷影を罠にはめて戦いに出向かせたのは麟の血筋だと言われている。

 エーの話と何度も襲われている堰の記録を探るに麟の今の直系は最低でも2人、性別は男で、しかも容姿がそっくりであるためおそらく双子だという噂だった。

 年齢は30前後だと思うが確証はない。





「え?じゃああと残ってるのって、」

「水の国の翠、だ。直系は死んでいるとされているが、実際のところ戦いの中にあったため、わからん。」





 水影のメイの話では、最後に確認されたのは15年ほど前。正直なところ戦乱の中で里を襲い、消息を絶ったが、少なくとも死体は確認していると言うことだった。唯一血筋だったはずの堰家の当主夫人・紅姫は先日襲われたまま瀕死の重傷で昏睡状態。事の顛末を詳しく聞くことは出来ない。





「ちょっと気になる点があるらしくてな。いないならいないで確認がとりたいと言うことだ。」





 神の系譜はそれでなくとも恐ろしいほどの力を持っている。それが暁に荷担するとなれば戦力の配置も換わってくるため、確認ははやければ早いほどよかった。

 また、水影であるメイ自身が神の系譜を恐れている節があった。

 彼女は幼い頃に、最期の翠の当主が操る龍と共に里を襲ったのを目の当たりにしたらしい。それ故に尾獣と同じくらい危険視していた。

 どちらにしても、不測の事態は少なければ少ないほどよい。

 綱手はメイから神の系譜のことを聞かれた際、同じ神の系譜であるたちを派遣することで、彼女の手助けをすることに決めた。メイにとっても他の神の系譜を見ることは、考えを変える一端となるだろう。






「ついでに帰りに雷の国にも寄ってきて貰う。」






 忍界大戦が始まる前に、整えておきたいことは沢山ある。知っておきたい情報もある。特に過去を見ることの出来る眼を持つ斎とは、協力関係を結び始めたどの里にとっても重要な存在だ。

 またエーは透先眼でいくつか見て欲しい事柄があるらしい。






「じゃあは雲隠れに置いてくるって事ですか?」





 サクラは少し不安げに尋ねる。






「あぁ、イタチもだ。ついでにナルトも別任務がある。」






 綱手はサクラにオブラートに包んで伝えた。

 ナルトには後からガイなどと合流して、隠れ家となる八尾の住処に言って貰う予定だった。ナルトには忍界大戦になることは言っていない。ただ里と里が協力関係を結んだと言うことになっている。

 の派遣は忍界大戦において本陣を置く上でその設営、警備などを透先眼によって手伝わせるためだ。

 もちろん、よりも当然父親の斎の方が完璧に透先眼を使いこなすことが出来るが、木の葉にも雑事があり、彼が暗部の親玉である事からすぐに彼を派遣することは綱手も火影として出来ない。本人は乗り気でないにしろ、今や彼は正式な火影の後継者でもある。

 雷影ともめたが、結局とイタチを派遣すると言うことで落ち着いた。

 雷影も流石に同盟を組んでいる以上を襲おうなどとはしないだろうし、仮にしたとしても、イタチとの両方を簡単に押さえられる忍はこの世に存在しない。





「仮に麟が暁に荷担しているのなら、たちを襲うと言うことも十分に考えられる。は確かに神の系譜の直系だが、それだけでなく貴重な透先眼の保持者でもある。今失うわけにはいかないからな。」







 綱手は全員に念を押す。

 現在蒼一族はもう斎との2人のみだ。戦場において透先眼は千里眼の力を持つだけでなく、過去なども見抜くため非常に重要な血継限界だ。絶対に失うわけにはいかないからこそ、二つも班を組むことにしたのだ。

 その意味を忘れて貰っては困る。





「水の国、霧隠れの里かぁ。どんなところかな。」






 が少し不安そうに言うのは、かつては血霧の里と恐れられたほど血なまぐさい慣習や噂の絶えない国だからだ。





「大丈夫ですよ!僕がいれば百人力です!!」






 リーは明るく根拠のない自信をに向ける。





「まぁそれはどうかはわからんが、このメンバーならば早早やられることもあるまい。」








 ネジは対照的に冷静にを慰めた。







「確かに。イタチさんは強いですしね。」






 サイは清々しい表情で言った。

 なんだか全く違うタイプだと思っていたが、サイは結構イタチのことを素直に尊敬しているらしい。

 ダンゾウがサスケに殺されたことによって、かつての“根”は結局斎が率いる“樹”によって解体されることになった。もちろん斎の配慮から任務は無理をしない程度の編成で行われているが、サイは斎の直属の部下と言うことになった。

 要するにイタチの直接の後輩と言うことになる。

 まぁおかげで斎の書類やらなんやらをイタチと一緒に押しつけられることになったわけだが、その間にイタチとの間に友情を育んだらしい。最初は斎が大の苦手だったサイだが、本心があっさり斎に見抜かれるのを理解して色々隠すのが面倒になったらしく、逆に今は言いたいことが言えるので楽だと言っていた。

 この間も斎に向かって「そんなことばっかりだとイタチさんに反逆されますよ。」と本音を口から漏らし、斎を絶句させたとイタチが喜んでいた。


 なんだかんだで2人はうまくやっているらしい。






「そっか。そうと決まればこの目で翠の神の系譜とか言う奴を拝んでやるってばよ!」






 ナルトは話自体がよく分かっていないようだが、深く考えずにやる気だけを育んだようだ。





「ちょっとナルト、勝手な行動は慎んでよ。」







 サクラは疲れたようにため息をつく。





「おいおい、本当に勝手な行動は慎んでくれよ。」





 ヤマトもいろいろと疲れがたまっているのが手をひらひらさせてナルトを止めていた。いつも勝手に突っ走ったナルトの処理に追われているから、思う所が多いのだろう。




「…努力します。」

「頑張ってくれ。イタチ、おまえが頼りだ。お願いだから。」





 最後のイタチのコメントが酷く的確で、綱手はため息をついてひらひらと手を振った。






積載