「二人一組の班を組んで、何でもありのトーナメントで戦術の成績をつけるぞー、本番は一週間後だ。」










 担任のイルカがそういうから、初めてのことにはびくりとする。



 アカデミーに来始めてからたった数ヶ月。

 この学年はすでに最終学年だが、は今まで病弱で学校に行っていなかったから、そんなことを言われたのは初
めてだった。









「ど、どうしようっ!相手の人に迷惑がっ・・!」









 は呆然として、誰と組もうか頭を悩ませた。



 一人のほうがむしろ気が楽だ。

 真っ青になるに後ろからサクラが笑う。









「そんな根を詰めて考えなくても大丈夫よ。」

「えっ・・・・でも・・・、」

「結構簡単な試験だから。」









 サクラは何でもないことのように言うが、は初めてだから心配でたまらない。

 おどおどと前を向くとイルカと目があった。











「どうしたー、。」

「あぅ・・・・え・・・」

「大丈夫だぞ、だがナルトとだけは組むなよー、」










 イルカの言葉にどっとみんなが笑う。

 でもクラスでどべの彼と組んだほうが、にとっては気楽な気もする。










「はぁ・・・・、」









 長い間病弱で外に出なかったため、は体力と腕力がない。




 手裏剣が的まで届かないなんて多々あるし、すぐ息切れする。

 チャクラが元々多いので、アカデミーに入る前にはイタチから忍術もたくさん教えてもらって、そちらのほうは
できる。

 だが、基本的ベースになる体術のほうはいまいちだし、年始めに行われる体力テストは当然、学年で最下位だっ
た。



 もしも失敗すればチームメイトに迷惑をかける。



 炎一族宗主の一人娘で、両親ともに里でも五本の指にはいるほどの技量を誇るのに、はただちょっと成績が良
いだけの、普通の女の子だ。

 病弱だったこともあり、自信もない。

 イタチはチャクラ量が多いし、勘も良いからアカデミーでは困らないと言ってくれたが、たぶん慰めだと思う。



 事実今困っている。 



 そもそも自分には忍など向いていないのかもしれない。

 担任のイルカに相談してみようか。


 気分がどんどん沈んでいった。

 は机の上に突っ伏す。








「はぁ、」









 長く息を吐くと魂まで抜けそうだ。






 ――――――――――らしく、ゆっくりがんばればいい。





 イタチはそういってくれた。



 でも決して、の成長は早いわけではない。

 イタチのように飛び級もしていない。

 このままではゆっくりも、がんばれていないではないか。









「おい、」








 隣から、声をかけられる。



 おずおずと顔を上げると、そこにはイタチとよく似た顔の男の子がいる。

 サスケ、イタチの弟だ。

 は彼とは仲も良くなく、イタチについてくる彼とたまに顔を合わせる程度だった。







「組んでやろうか?」

「?」

「話ひとっつも聞いてなかったのか?」









 意味を飲み込みかねていたは、やっと意図を察す。








「いいよ。サスケ学年トップだってイタチが言ってたよ。わたしと組んだらおちるよ。」








 ふるふると首を振る。



 そう、アカデミーを飛び級の上首席で卒業したイタチと同じく、サスケも成績が良い。

 名家の出で、たくさんの忍の中でもきらりと光る才能を持つ彼は、名家の出でも凡庸なとは違う。

 と組むことで成績を落とすなんて、やめておいた方が良い。









「おまえと組んだくらいでおちるかよ。」








 鼻で笑って、サスケは自信満々に言う。










「でもそれでどべになったらサスケも嫌でしょう?」

「ならないって。」

「なったらどうするの?」

「そのときはそのとき考える。」

「だめだよ!」

「オレの成績をおまえがだめだなんて言うな。」







 サスケはを睥睨する。


 負けじとむっとしてサスケを睨んだが、サスケはちっとも怖くないと偉そうに腕を組んだ。

 席での論争を見ていたイルカは良い機会だとでも思ったのか。








ー、サスケに組んでもらえ。」

「どうして?」

「おまえ初めてだろ。学年トップのサスケなら安心じゃないか。」

「でもでも先生!」

「良い。オレ、と組む。」

「おー、頼もしいな。頼むぞサスケ。」

「先生!」









 の反論は聞き入れられず、勝手に話がまとまってしまう。



 涙目で先生を睨んだが、何を考えているのか先生は大丈夫だぞーと軽く言った。

 何が大丈夫なのだ。









「いいなー、。」








 サクラが羨ましそうに言うが、かわれるものなら変わってほしい。

 のほうは真っ青である。








「どうしようサクラ、サスケがどべになっちゃうよ。」

、落ち着きなよ。大丈夫だって。」

「だってわたし、体力ないんだもん。手裏剣的に届かないし。」

「体術じゃないんだから。戦術の試験なんだし、いつものなら大丈夫よ。」

「大丈夫じゃないよー、」









 はえぐえぐと机の上に突っ伏して悲嘆に暮れる。

 どうしようどうしよう。





 頭がくるくる回っている。








、ねぇ。顔赤くない?」







 突然、サクラが言う。









「え?」

「でこかしなさい、でこ。」








 サクラが勝手にきょとんとするの額にふれる。

 どう考えても熱い。


 相変わらずは赤い顔で不思議そうにしている。








「大丈夫なのか?」








 サスケも心配そうに、をのぞき込む。

 サクラは一つ頷いた。







「先生ー、 保健室に連れて行きますー、」

 

 








( 身体や周囲の温度が日頃より高い状態にあること その状態自体  )